ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

敬老の日

○渡辺家/玄関前(昼)
築50年以上はありそうな木造家屋。
手提げ袋を持った加藤佐江子(29歳)が玄関前で立ち止まる。
佐江子が表札を確かめる。
表札には「渡辺トシ」の名前。
佐江子が玄関のブザーを押そうとするが、ためらう。
佐江子は、少し考えて、立ち去っていく。

○山田家/外観(昼)
鉄筋二階建ての住宅。

○山田家/玄関内(昼)
佐江子が手提げ袋から紙袋を取り出す。
紙袋には「百歳記念品 小松川市役所」の文字。
佐江子「おめでとうございます」
佐江子の紙袋を山田洋子(68歳)が受け取り、山田ウメ(100歳)に手渡す。
洋子「良かったねぇ、おばあちゃん、市役所から記念品だって」
ウメ「あぁ?」
佐江子が洋子とウメのやりとりを見ながら微笑んでいる。

○中田家/居間(昼)
佐江子が景品を渡している。

○広石家/玄関内(昼)
佐江子が景品を渡している。

○渡辺家/玄関前(夕方)
空は薄暗くなっている。
佐江子が立ち止まっている。
佐江子が少し動いて家の中の明かりを確かめるが、点灯していない。

***回想***

○路上(朝)
住宅街の路上。
佐江子がスマホで地図を見ている。
佐江子が首を傾げている。
自宅の前を掃除している中年女性に声をかける。
佐江子「あの、すみません」
中年女性「はい」
佐江子「市役所の者なんですけど、西町の4の13というのは、この辺りで・・・」
中年女性「13は、一本向こうの道になると思いますけど、ちょっと待ってね」
中年女性が玄関を開けて、家の中に話しかける。
中年女性「お父さん、西町の4の13って高塚さんの家の方だよね」
佐江子「あ、いえいえ、結構です。そこまで分かれば」
中年女性「あ、そう」
中年女性が手提げ袋を見る。
佐江子「敬老の日の記念品なんです、100歳以上のお年寄りの方に」
中年女性「100歳」
佐江子「ええ、渡辺さん、トシさんが100歳で」
中年女性「渡辺さん?今も、いるの?」
佐江子「どこかに移られました?」
中年女性「いや、ここ2、3年、見かけてないから、前も町内で噂になったのよ」
佐江子「ご家族は?」
中年女性「お子さんも先に亡くなって、一人暮らしだったからね」
佐江子「ヘルパーさんとか、お世話をする方は?」
中年女性「なんか、前に、出入りしてる親戚みたいな人がいたみたいだけど、ご近所さんが、おばあちゃんお元気ですかって、声をかけたら、怒鳴られたとかって」
佐江子「本当ですか?」
中年女性「今、多いじゃない、お年寄りの年金が欲しいからって、家の中で、役所に知らせずに」
佐江子「はい・・・」
中年女性「イヤ、渡辺さんは無事かもしれないけどね」
佐江子が怪訝な表情を浮かべる。

***回想終わり***

○渡辺家/玄関前(夕方)
佐江子が玄関ブザーを押そうとする。

○イメージ映像
布団の中にミイラ化した女性の死体。

○渡辺家/玄関前(夕方)
佐江子が玄関ブザーを押すのをためらう。

○路上(夕方)
佐江子が歩いている。

○河川(夕方)
河川が歩いている。
手提げ袋の中身は空になっている。

○市役所/オフィス内(朝)
佐江子が座っている。
上司が出勤してくる。
上司「昨日は、お疲れさん。どうだった、そっちは?」
佐江子「問題なく」
上司「そう、良かった」
佐江子が何とも言えない微笑みを浮かべる。