ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

野良犬

○ワンボックスカー/車内(昼)
走行中の車内。
運転席に鈴木淳也(38歳)、助手席に佐藤真一(38歳)、後部席に近藤直樹(37歳)、望月弘(38歳)が座っている。
真一「なかなか、おらんもんやなぁ」
直樹「こないだ、見たような気がするんやけどなぁ」

○車道(昼)
ワンボックスカーが町中を走っている。

○ワンボックスカー/車内(昼)
淳也「うわ、ここ、マンション建っとる、この辺、金井のウチあったところやろ?」
直樹「立ち退きで、だいぶ金もらったらしいよ」
淳也「掘ったて小屋みたいな家やったよな」
真一「(直樹に)ほんとに、この辺で見た?こないだって、いつや?」
直樹「忘れたわ、半年くらい前?」
弘「頼むよ、地元に住んどるん、お前しかおらんのやから」
弘が胸元のポケットからタバコを取り出す。
淳也がルームミラーで弘を見る。
淳也「おい、タバコ」
弘「ええやん、タバコくらい」
淳也「ん〜吸うんやったら、窓開けて、窓の外で吸って。夕方、これ乗って親戚んトコ行くんやから、カミさんからガタガタ言われるの嫌や、もう」
弘「弱いなぁ」
真一が助手席の前に並べられた、子供用アニメのぬいぐるみを手にとる。
真一「パパのお願い聞いてくだちゃい、飼い犬パパのお願いでちゅ〜」

***回想***

○居酒屋/店頭(夜)
「本日のご予約」というプレートに「市ノ瀬高校 平成7年度卒業生同窓会」の文字。

○同/座敷席(夜)
淳也、真一、直樹、弘が飲んでいる。
直樹「ええやん、遊び放題やろ」
弘「ダメ、最近は景気悪いし、金が続かん」
真一「もう行ってないん?」
弘「そりゃ、行くときは行くどさ」
直樹「月に何回くらい?」
弘「週イチ?」
真一「行きまくっとるやん!」
淳也「ええなぁ」
弘「(淳也に)最近は?」
淳也「家のローンもあるし、子供もまだ小さいし、金がかかるんよ」
真一が淳也の肩を叩く。
真一「自由になれ、俺みたいに」
淳也「慰謝料と養育費でスッカラカンになるのだけは勘弁や」
淳也が笑う。
真一「修羅場を味わってみぃ、金払ってでも別れようと思うって!」
淳也「直樹、お前も結婚しろ」
直樹「無理や」
弘「彼女おるんやろ?」
直樹「でも、親がおるし、足腰不自由やろ、面倒見てくれっていったら逃げ出すわ」
真一「(弘に)する気ないやろ?」
弘「遊び人に家庭は似合わん」
弘が笑う。
淳也「久々やけど、みんな、変わってないね、安心したわ」
直樹「チーム”ノライヌ”」
真一「うわ、懐かしい!忘れとった」
弘「市ノ瀬の風」
淳也「自分たちで名乗っただけやん」
真一「俺と直樹なんか、スクーターやったし」
直樹「親を病院連れてく時にさ、蒲谷峠通って行きよったんやけど、あそこ通る度に思い出しよったよ」
真一「病院って、大貫の?」
直樹「総合病院、あ、そうや、そこのナースに吉岡おってさ」
弘「吉岡って、四中の?ヤリマン吉岡?」
淳也は話に加わらず、何かを考えている様子。
直樹「そう、吉岡陽子」
真一「患者とヤリまくりよるんやないん?」
弘「ベッド、そこら中にあるし」
真一「性病になっても医者が治してくれるやろ」
直樹「それがさぁ」
淳也が口を開く。
淳也「明日、暇?」
直樹「ん?」
真一「どしたん?」
弘「吉岡とやりに行く?」
淳也「違うわ、ドライブ行かん?」
真一「病院まで?」
淳也「違うって、チーム”ノライヌ”で走らんかって話」
真一「バイクないし」
弘「俺、電車で帰ってきたもん」
淳也「俺の車で」
直樹「男四人で?」
弘「むさ苦しいわ」
淳也「車、ワンボックスやし広いよ」
真一「ファミリーカーやん」
直樹「家族で帰ってきたん?」
淳也「ああ」
弘「でも、どこ行くん?面白くないやろ、この辺、走っても」
直樹「あ、俺、ダメや、3時にヘルパー来るし」
淳也「俺だって、夕方に親戚のトコに行かんといけん」
真一「どうする?昼間?」
弘「なんか見に行く?」
直樹「見たいトコある?」
淳也「なんかテーマない?」
真一「宝探しするとか」
淳也「なんそれ」
弘「ならナンパしようぜ」
真一「お前だけはノライヌ時代から全然変わってないな」
直樹「野良犬は」
淳也「野良犬?」
真一「今もおるか?野良犬」
直樹「この間、見たんよ、千間川の辺で」
弘「なんで、おっさん四人で野良犬探さないかんの」
淳也「面白いやん」
真一「チーム”ノライヌ”やろ」
直樹「(弘に)お前は車の中から女見とけ」
真一「メス犬でも」
淳也「決まり、野良犬探そ」

***回想終わり***

○ワンボックスカー/車内(昼)
真一「チームで旗作ったの、覚えとる?」
淳也「そんなん、あった?」
直樹「うっすら、覚えとるわ」
弘が窓の外に顔を出しタバコを吸っている。
真一「最後、誰か持って帰った?」
淳也「あったか、旗って?」
直樹「あったよ」
真一「ノライヌって、弘のウチで辞書見ながら、全部漢字でさぁ」
淳也「漢字?どんな?」
真一「ノラは野球のヤと良い悪いのラ」
淳也「ホントに?」
直樹が携帯(ガラケー)を取り出し、漢字を確認する。
直樹「もっかい言って、野球のヤと」
淳也「お前、まだガラケー?」
真一がスマホを取り出す。
真一「あ、充電忘れた」
車が信号で止まる。
淳也がスマホを取り出し、操作する。
信号が青に変わる。
淳也が真一にスマホを渡す。
淳也「ググって」
真一がスマホを見ると、家族写真が待ち受けになっている。
真一「なんや、マイホームパパぶって」
真一がスマホを操作する。
真一がスマホの画面を淳也に見せる。
真一「ほら」
淳也が画面を見る。
画面には「野良」の文字。
直樹も覗き込む。
直樹「イヌは、犬猫のイヌ?」
真一「どうやったっけ?違うやろ」
直樹が弘の肩を叩く。
弘がタバコを口にしたまま振り向く。
淳也「窓の外で吸えって!」
弘「いいやん、これくらい」
淳也「頼む、後で俺が怒られるんやから」
真一「完全に尻に敷かれとるな」
直樹「ノライヌの旗って覚えとる?」
弘がタバコを外に捨てる。
弘「なんか作った記憶あるな」
直樹「どんな漢字やった?」
弘「ヌは抜くのヌやなかった?」
真一がスマホを操作する。
淳也「おった!」

○川原(昼)
横たわっている野良犬。
淳也、真一、弘、直樹が、ゆっくりと野良犬に近づく。
直樹は手にスナック菓子を持っている。
淳也「ほら、こっち来い、エサやるぞ」
野良犬が立ち上がる。
真一「動いた」
弘「(直樹の耳元で大声で驚かすように)ワン!」
直樹「(驚いて)うわ!」
野良犬「(威嚇するように)ワン!」
野良犬が吠えながら四人の方へ走ってくる。
四人が逃げる。
淳也「(直樹に)投げろ!」
直樹がスナック菓子を投げ捨てる。
野良犬が菓子に気を取られ、進路を変える。

○川原の上(昼)
川原を見下ろせる場所。
淳也、真一、弘、直樹が川原をみている。
川原で野良犬がスナック菓子を食べている。
直樹「怖かったぁ」
真一「腹減っとたんかな」
淳也「ハングリーやな」
弘「よう見とけ、あれが、あの頃の俺たちや」
淳也「なにカッコつけとんの」
四人は微笑みながら野良犬を見ている。