ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

山鳴り

○坂田家/ベランダ(昼)
二階建て住宅の二階にあるベランダ。
坂田紀子(16歳)が遠くを見ている。
紀子が見ている先に山々が連なっている。
ゴーという山鳴りの音。
山鳴りの音が次第に大きくなる。
女性の声「紀子」
紀子が我に返る。
山鳴りの音が消える。
紀子が振り向くと、部屋の中から坂田敏江(43歳)が話しかけている。
敏江「なにしてるの?」
紀子「ん、とくに・・・」
紀子が部屋に入る。

○坂田家/外観(夜)

○同/紀子の部屋(夜)
紀子がパソコンに向かっている。
紀子はブログを書いている。
ブログには「大竹山から変な音」というタイトルで、紀子の部屋から見える山の写真と「山の方からゴーという音が聞こえる。この写真には写っていない、ずっと奥にある山、大竹山から聞こえてくるようだ」という内容のテキスト。
画面フェイドアウト。

○同/居間(昼)
画面フェイドイン。
居間には坂田弘幸(45歳)と、山中伸也(32歳)と加藤健一(38歳)が向き合って座り、弘幸の後ろに隠れるように紀子が座っている。
山中「(弘幸に)おじさん、ネットの世界じゃ、凄い話題になってるんだから、神だ、天才だって。これビックチャンスだよ、利用しない手はないよ」
弘幸「しかし」
山中「紀子ちゃんにしかできない能力なんだから、正しく使うべきだって。人助けにもなるんだよ、(紀子に)ね」
紀子が弘幸の後ろに隠れる。
山中「無理言って来てもらった加藤さんはね、東北の地震を予言したっていう占い師をプロデュースしてる実績があって、その占い師なんて、今じゃ月額1000円のウェブ会員を1万人確保してるんだよ、それだけで月1000万円。紀子ちゃんなら、もっとイケるよ、テレビとか本とか色々出ればさ」
加藤「霊能家、スピリチュアル・カウンセラー、プロデュース実績があります、信頼して下さい」
山中「ほら、ね」
弘幸が振り向いて紀子の方を見る。
紀子が首を横に振る。
弘幸「紀子が、イヤだと言ってる以上はねぇ」
加藤「紀子ちゃん、今度、私がプロデュースしている心霊家の先生に会いませんか?」
紀子が弘幸の後ろに隠れたまま答える。
紀子「あれ、私じゃないんです、学校で噂になってた話で・・・」
山中「え?」
紀子「本当です」
山中と加藤が顔を合わせる。
加藤「いや、もう誰が言い出したかなんて関係ないんだ、今、ネットの世界で求められているのは、あのブログの作者なんだから。紀子ちゃんという存在を求めているんだよ」
紀子「すみません!もう帰って下さい!」
弘幸「伸也君、紀子も、こう言ってるんだから、もう引き取ってもらえないかな」
山中が不服そうな顔をして、加藤に返ろうという合図をする。

○同/外観(夜)
山中と加藤が小声でやりとりをしならが足早に去っていく。
揉めているようである。

○同/居間(夜)
紀子と弘幸と敏江がお茶を飲んでいる。
紀子「今の人、どういう人?」
弘幸「(敏江に)紀子は、柿沢のおばさんの葬式の時、いなかったっけ?」
敏江「いたかもしれないけど、覚えてないわよ、もうだいぶ前の話でしょ」
紀子が首をかしげる。
弘幸「そうか・・・。婆ちゃんの妹の子供、(敏江に)それ以来かな?」
敏江「東京かどっかにいるっていって、集まりにも顔出してなかったし」
紀子「ふーん」
敏江「驚いたよね、突然やってきたと思ったら、急にあんな話し始めて」
紀子「あの人からも変な音がした」
敏江「よしなさい、そんなこと言うのは」
弘幸「また、戻ってくるぞ」
敏江「あんた子供の頃から、たまに変なこと言う子だったけど」
紀子「冗談よ、冗談」
弘幸「悩み事とかあるんだったら、ちゃんと言えよ、ストレスで変な音が聞こえるとかっていうぞ」
紀子が笑う。
紀子「もう、変な風に言うのやめてよ。なにも聞こえません、なにも見えません」
弘幸「うちの会社でも、鬱で休んでる新人いるんだよな」
紀子「違うって!」
紀子、弘幸、敏江が笑っている。
画面フェイドアウト。

○同/台所(朝)
画面フェイドイン。
紀子(21歳)がリクルートスーツ姿で食パンを食べている。
廊下から敏江が電話で通話している音声が聞こえている。
敏江の会話は深刻な雰囲気。
敏江が通話を終えて、台所へ入ってくる。
紀子「なにかあったの?」
敏江「いや、うん」
紀子「なに?」
敏江「後でいいでしょ。今日の面接、頑張りなさい」
紀子「教えてよ。教えてくれないと、気になって面接に身が入らないから」
敏江が一息つく。
敏江「何年か前にウチに来た、柿沢のおばさんの息子って覚えてる?」
紀子「突然、人を連れて来た人?」
敏江「そう、昨日、警察から連絡があって、山の中で見つかった白骨死体が、その人なんだって」
紀子「え?」
敏江「もう何年も連絡とれなかったんだって」
紀子「ウチに来たのって、いつだっけ」
敏江「ウチに来た後くらいから、行方不明だったみたい」

○同/玄関(朝)
紀子が靴を履いている。
敏江が廊下を歩いてくる。
敏江「さっきのことは忘れて、面接頑張って」
紀子「うん、今日はうまくいきそう」
紀子が玄関を開ける。
玄関の外は明るい光。
紀子が空を見あげる。
外は快晴である。
紀子が何かに気づいた表情。
紀子が振り向く。
紀子「折りたたみ取って」
敏江「いらないでしょ」
紀子「用心した方がいいかなって」
敏江が折りたたみ傘を紀子に渡す。
敏江「予報も0%よ」
紀子「持っていきたいのよ。(傘をしまって)いってきまーす」
紀子が出ていく。