ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

こころ

○港町(夜)
海に面した町並み。
暴風雨。
ところどころで道路は冠水し、木々が折れそうなほど風が吹いている。

○竹村家/外観(夜)
二階建ての家屋。

○同/室内(夜)
二階の部屋。
窓から暴風雨の町の様子が見える。
竹村亮(24歳)がパソコンの前に座ってスマートフォンからツイッターに投稿している。
パソコンのモニタには(主観型)戦争ゲーム。
ツイッターには「×季節ハズレ ○期待ハズレの台風だったな」という書き込み。
亮がゲームを再開する。
モニタ内では殺戮が繰り広げられる。
突然、バリバリという爆音が響き、部屋が揺れる。
パソコンやテレビなどの電気が止まり、街全体が真っ暗になる。
亮が驚き、床を転げる。
亮が部屋のドアを開ける。
雨風が吹きさらしになっている。
亮がポケットからスマホを取り出し、画面を周りに向ける。
家に何かが直撃したことがわかる。
隣の家から懐中電灯の光。
男Aの声「大丈夫か!」
亮が呆然としている。
家がきしむ音。
亮が我に返る。
亮「助けて!」
男Aの声「どこだ!」
亮「二階!」
懐中電灯の光が亮に当たる。
男Aの声「他には?」
亮「一階に」
男Aの声「降りれるか?」
亮「なんも見えない」

○同/一階
暴風雨の中、男性数名が梯子を押さえている。
半壊した家の二階から、亮が降りてくる。
男たちが亮を引き寄せ、家から離す。
男B「警察も消防も遅いな」
男C「来たら、あんちゃんが判断しな」
亮「判断?」
男たちが家を見る。
男A「壊すんだったら、壊しちまわないと、風で飛ばされると被害が出る」
亮「父さんに」
男たちが顔を合わせる。
男B「寝室直撃だ」
亮「うそ」
男A「あんた、一人息子?」
亮「はい」
男C「なら、もう、あんちゃんが家の主だ、決めろ」
パトカー、消防車のサイレンの音。
パトカーのスピーカーから避難命令を告げる音声。
パトカーの音声「地域一帯に避難命令が通達されました。これは勧告ではなく、命令です。皆さん、速やかに山上小学校の体育館へ避難お願いします」
パトカー、消防車が到着する。
警官、消防士が亮の家の前に集まる。
男A「遅いよ、お巡りさん」
警官A「東京から指示が来てたもんで」
警官B「この家の住民は?」
亮「はい」
警官A「他には?」
男Bが懐中電灯の明かりを損壊していう方に向ける。
明かりの先で消防士が作業をしている。
警官B「生存者は?」
消防士Aが×のサインを出す。
警官A「避難所までパトカーで連れていく。そこで話を聞こう」
男C「俺たちは、これでいいかい、気を落とすなよ」
男たちが去っていく。
警官B「待って下さい、家に戻るんじゃなくて、避難を」
男B「大丈夫だよ、ウチは」
警官A「命令です、家族を連れて、避難を」
男たちが振り向かず去っていく。

○山上小学校/体育館内(朝)
数世帯の家族が避難している。
窓からは朝日が差し込んでいる。

亮が窓際に座り、外を見ている。
雨は上がり、雲のない空。

自衛隊のヘリコプターが行き交っている。

男性の声「疲れたかい?」
亮が振り向くと警官Cが立っている。
警官C「ごめんな、朝まで。どうしても確認しなきゃいけない手続きがあるんで」
亮「はぁ・・・」

亮が外を見ると、帰ろうとする避難者を自衛隊員が止めている光景。

亮「うち以外にも被害あったんですか?」
警官C「ん?」
亮「こんなに自衛隊来て」
警官C「そうだなぁ」

町中で火柱と噴煙が上がる。
遅れてドカーンという爆発音。

避難者たちが一斉に立ち上がり、窓に駆け寄る。

自衛隊員たちが号令を掛け合う。

亮「なんだ?」
警官C「ガス爆発?」

窓を見ていた避難者Aが声を上げる。
避難者A「海、戦艦がおるぞ!」

沖合に軍艦2艘が巡航している。
軍艦からは複数の上陸艇が降ろされ、陸に向かって進んでいる。

軍艦から発射されたミサイルが自衛隊のヘリコプターに命中し、ヘリコプターが撃墜される。

警官C「なんだ、こりゃ・・・」

避難者B「戦争だ」
避難者たちが「戦争」「戦争が始まった」と騒ぎだす。

自衛隊員たちが体育館に入ってくる。
自衛隊員A「皆さん、ここは安全です、落ち着いて下さい」
警官C「あれは何ですか?」
自衛隊員B「我々が責任を持って阻止します」
避難者たちが自衛隊員に駆け寄る。
避難者C「まだ避難してない者が町に、たくさんおるぞ」
自衛隊員A「大丈夫です」
避難者D「うちとこの町内からは、うちの家族しか避難してねぇ」

亮が皆のやりとりを見つめている。
彼方から銃声が聞こえる。
体育館の皆が息を止め、館内が静かになる。
亮が窓から外を見る。
彼方からの銃声音。
亮が徐々に後ずさりする。

○町並み(夕方)
夕焼け空の町並み。

○山上小学校/教室内(夕方)
子供や女性たちが片隅に息を潜めて座っている。
遠くで銃声が聞こえる。

○同/体育館内(夕方)
漁師包丁を手にした男たちが車座になって話をしている。
男たちの中には服や包丁に血がついている者もいる。
亮が少し離れた場所に、体育座りをして一人で座っている。
話をしている男の一人が、包丁を持って、亮の前に歩いてくる。
男1「暗くなったら、行くぞ」
亮が顔をあげる。
亮は不安そうな表情。
男1「男手が足りないんだよ、こんだけしか残ってねぇんだから」
亮「僕、そんなこと・・・」
男1「やるんだよ、町山の親父の仇をとるんだよ」
亮「仇って・・・」
男1が亮の目の前に包丁を置いて去って行く。
突然、地面が揺れ始める。
亮や男たちが周囲を見回す。
地震が起き、体育館がきしむ。
揺れが大き過ぎて、亮たちは立ち上がることすらできない。
揺れがおさまる。
男2「子供たちは」
男たちが立ち上がり、教室の方へ向かう。
亮が一人残される。
亮が立ち上がり、扉へ向かい、外を見る。

夕焼けが水平線に沈もうとしている。
水平線が大きく盛り上がっているのがわかる。
津波が来ている。

亮は、外に向かって、ゆっくりと歩き出す。

水平線の津波が近づいて来る。

亮は海岸へ向かって、下って行く。