ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

再現検証の成功をご報告いたします

○記者会見会場(昼)
大きな会議室に百名以上の報道陣が詰めかけている。
会場には何台ものテレビカメラ、スチールカメラ、壇上には多数のマイクが並んでいる。
前方のドアが開き、会見者が現れる。
一斉に光るストロボ、記者たちが取材体制になる。
会見者は研究着(白衣)姿の殿方春子(30歳)。
春子の表情は明るく微笑んでいるように見える。
春子が会見席に着く。
記者たちが質問を始める。
記者1「今日はどうして記者を集めたんですか!」
記者2「なぜ、このタイミングに!」
記者たちから罵声に近い質問が続く。
春子「皆さん、どうか、お静かにお願いします」
記者3「だから、何の発表か教えてくれよ!」
春子がクスっと微笑む。
記者4「研究の指導官が自殺した後に、よく笑えるよ!」
記者5「殺したのはあんただよ!不謹慎だって自覚はないんですか!」
春子「本日は私の研究の成果に関して、皆さまに知っていただきたいことがあり、お声がけをさせていただきました」
記者6「研究発表してる場合じゃないだろ、人が自殺してるんだよ!あんたのウソで!」
記者7「そんなことしてる場合か!」
春子「私、殿方春子は、先日より指導官・枝井良樹博士と共にステップ細胞の再検証を続けてまいりました。その成果について、ご報告をさせていただきます」
記者8「あんたが、今頃、報告したって自殺した枝井博士は戻ってこないんでしょ!」
記者9「今さら失敗を認めても遅いよ!」
春子「ステップ細胞はあります!」
記者10「だったら証明しろ!」
記者たちの「証明しろ」「嘘をつくな」の怒号が飛ぶ。
怒号を浴びても春子の表情は変わらず明るい。
前方のドアが開き、枝井良樹(59歳)博士が現れる。
記者たちがドヨめき、ストロボが一斉に光る。
枝井が春子の隣に立ち、春子も立ち上がり、二人が並ぶ。
枝井がマイクを取り、挨拶をする。
枝井「どうも研究長の枝井良樹です」
記者たちから「あなたは誰ですか!」の声が飛ぶ。
枝井「ですから、まぎれもなく研究長の枝井です」
枝井の隣で春子が微笑んでいる。
春子「自殺されたと報道されている枝井博士は、枝井博士と全く同じ遺伝子を持つクローンなのです」
記者11「どういうことですか?」
春子「ステップ細胞の再現検証は成功しました」
枝井「ステップ細胞でクローンを作ったのです」
記者12「嘘でしょう!」
記者13「そんなこと無理だよ!」
記者たちの疑いの罵声が飛ぶ。
枝井が微笑みながら記者を見回す。
枝井が胸元のポケットからナイフを取り出し、喉元を大きく切り咲く。
枝井の首から吹き散る血。
会見席は血に染まり、殿方も血を浴びる。
枝井は倒れ込み、絶命する。
枝井に駆け寄る記者、携帯で病院や警察に電話をする記者、吐いている記者、場内は騒然とする。
血を浴びた殿方は、明るい表情を浮かべたまま、様子を見ている。
記者たちが殿方に詰め寄る。
記者14「あんた、こんな時に、なにヘラヘラしてんだよ」
記者15「気でも狂ったのか!」
殿方がマイクを手にする。
殿方「皆様、ステップ細胞の再現に成功しました」
前方のドアが開き、枝井が記者たちをかき分けて、入ってくる。
殿方「ご安心ください、先ほどの枝井博士もステップ細胞によって作られた博士のクローンですから」
殿方と枝井が並んで立つ。
二人は微笑んでいる。

画面フェイドアウト。
テロップ「偉大なる研究の成功を祈る」