ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

怨魂師(5)

○地獄
マグマがたぎる世界。
鬼の形相をした早川と鬼婆の形相をした小牧(20代女性)が壮絶な死闘を繰り広げている。
早川が小牧を羽交い締めにして捕まえる。
小牧が暴れる。
炎が舞う。

○地獄
赤土が広がる砂漠。
阿部が一人で立っている。
阿部の前に炎が舞う。
炎の中から早川と羽交い締めにされたままの小牧が現れる。
早川「連れてきたぜ」
小牧「お前たちは、なんだ、離せ!」
阿部「(早川に)ありがとう」
阿部が小牧を見る。
阿部「(小牧に)なぜ祟る?」
暴れていた小牧の動きが止まり、阿部を睨む。
阿部「岩崎家、一族への怨みか?土地に憑いている悪霊か?」
小牧「へっ、あの家の奴ら、末代まで祟ってやる」
阿部「岩崎家への怨み・・・若奥さんが急死したのも、お前の仕業だな?」
小牧「ああ」
阿部「今回の事件も?」
小牧「娘に憑意してやったんだよ」
阿部「殺された同級生は、お前には関係ないだろう」
小牧「関係ないさ、でも、事件で、岩崎の一族が滅びてしまえばいいのさ、殺した娘みたいに、ちりじりバラバラになぁ!」
阿部「それで苦しみは晴れると思うのか?」
小牧が阿部を睨む。
阿部「もう何年、祟り続けてる?どれだけの悪事を働いた?それで苦しみは、おさまったのか?」
小牧「ぅう」
阿部「一家が滅んで、呪う相手がいなくなった後も、怨みがおさまらなかったら・・・」
小牧「黙れ!」
阿部「お前は怨みを抱いたまま、無限の地獄へ堕ちる」
小牧「私が、どんな仕打ちを受けたか、貴様はわかってるのか!」
阿部の前が光り、鏡が現れる。
小牧は、鏡に映る鬼婆となった自分の姿を見て、驚く。
阿部「お前は死んだんだ、そして地獄に堕ちた。なにをやっても人間の頃には戻れない」
小牧の表情が驚きから、悲しみへと変わる。
小牧「あぁー」
小牧が崩れ落ち、泣き叫ぶ。
早川が小牧を見ている。
阿部が小牧の肩を叩く。
小牧が顔を上げる。
阿部「安らぎを取り戻してみる気は?」
小牧「安らぎ・・・」
阿部「人を呪っているのも、怨みをはらせば気が静まると思ってるからだろう?でも実際は違う、だから、また呪い、永遠に祟り続ける、心の安定を求めて」
小牧「だったら、どうすればいい!」
阿部「怨みははらすんじゃない、捨てるんだ。正しい気持ちの鎮め方を知れば、人を呪う苦しみから抜け出すことができる」
小牧「今からでも・・・」
阿部「大丈夫だよ」
小牧がゆっくりと立ち上がる。
阿部が指さす方向に家が出現する。
阿部「あれが新しい君の住み家だ」
小牧「住み家?」
阿部「供養のための家だ」
小牧「私の?」
阿部「ああ」
小牧がゆっくりと歩き始める。
小牧が時折、振り向いて阿部に会釈をする。
小牧が家に入る。
阿部が隣に立っている早川に話しかける。
阿部「君も良い行いをした」
早川「これで天国に連れてってもらえるんだろ?」
阿部「君の魂を浄化するには時間がかかる」
早川「なんだと!」
阿部「まだ何度か手伝ってもらうよ」
早川「この野郎!」
早川が阿部に掴みかかろうとすると、阿部が消える。

○岩崎家/大居間(夜)
岩崎、橘が瞑想状態の阿部を見守っている。
阿部が、ゆっくりと目を覚ます。
阿部が岩崎を見て、うなづく。
岩崎「無事に?」
阿部「(橘に)人型を」
橘が祭壇から人型を2体持ってくる。
阿部が人型の1体を手に取る。
阿部「岩崎さんの家に憑いていた悪霊は、こちらの人型に納めました」
岩崎が、こわごわと人型を見つめる。
阿部「こちらで供養をなさいますか?それとも私どもで?」
岩崎が言葉に詰まる。
阿部「供養は私たちの方で」
岩崎「お願いします」

○同/玄関(夜)
阿部と橘を岩崎が送る。
岩崎「ありがとうございました」
阿部「礼には及びません」
出ていこうとする阿部と橘に岩崎が話しかける。
岩崎「あの・・・」
阿部と橘が振り返る。
橘「なんでしょう?」
岩崎「うちに憑いていた怨霊は、どういう供養を」
阿部「徳を積んでもらうのです」
岩崎「徳?」
阿部「人助けを手伝ってもらう」
橘「良い行いすることで魂が穏やかになります」
阿部「心が静まれば、怨みや憎しみも自然と消えていきます」
岩崎が腑に落ちない表情をする。
岩崎「あぁ、そうですか」
阿部「では」
阿部と橘が出て行く。

○街中(夜)
繁華街を阿部と橘が歩いている。
阿部「どうだった?あの世の様子を感じることはできたかな?」
橘「ボンヤリと」
阿部「あと何回か立ち会えば、徐々に掴めて来る」
橘「あの」
阿部「なんだ?」
橘「あの人型は、どうするんでしょう?」
阿部「どの?」
橘「家に憑いていた」
阿部「ああ、小牧さん。我々の怨霊退治を手伝ってもらう、強力な助っ人になる」
橘「そういうことって・・・」
阿部「仕事をしながら、次の仕事で使う道具が手に入る。元手ゼロ、良い仕事だろ」
橘が微笑む。
阿部も微笑む。