ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

怨魂師(2)

<加藤家からの帰り道の続き>

○駅前(昼)
阿部と橘が歩いている。
阿部が足を止める。
阿部が家電量販店に目を向けている。
橘「どうしました?」
阿部「あれ」
家電店の店頭に置かれたテレビにはニュースが流れている。
暴走した車が母娘をひき殺したというニュース。
事故現場で泣き崩れる早川功(33歳)の姿。
ニュースの内容から、亡くなったのは早川の妻と娘であることが分かる。
阿部がジッとニュース映像を見ている。
橘が阿部の顔を見る。

○マンション/外観(昼)
郊外型マンション。
早川宅がある。

○早川宅/玄関(昼)
中から早川がドアを開ける。
阿部「この度は、すみません」
橘「ありがとうございます」
阿部と橘はコートを着ており、季節が変わったことが分かる。

○同/リビング(昼)
テーブルを挟んで早川と阿部、橘が座っている。
早川が阿部、橘の名刺を持っている。
名刺の肩書きは「特別財団法人 交通遺児協会 ケアスタッフ」。
阿部「もちろん我々としても早川さんの心情は理解しております。無理にとは申しません」
橘「心の準備が整った時で構いません。協会が主催する講演会は定期的に行われていますので」
早川「講演・・・ですか」
阿部「被害に逢われた方の言葉で伝えることが、第二、第三の事故を防ぐことに繋がると我々は考えています」
阿部と橘が早川を見つめている。
早川「ボランティアなんですね」
橘「ええ、無料講演ですし、謝礼が出るようなモノではありません。もちろん移動などの交通費は協会で負担をしますが」
早川が無言で考え込む。
早川「本当を言うと、誰にも会いたくなかったんです」
阿部「あれから」
早川「ええ、あの事故から、訪ねてくるのは、野次馬みたいなマスコミと、本を出しましょうという」
橘「出版プロデューサー?」
早川「そうです、胡散臭い人が大勢来ました。あとは創価学会とかヘンな新興宗教とか。すっかり嫌になって、外の世界とは接触を断ってたんです」
阿部「話を聞いていただいて感謝します」
早川「いえ、そんな」
橘「心の傷が癒えてからで構いません、ご検討ください」
早川「講演は、どういった所で」
阿部「交通刑務所です」
早川の表情が険しくなる。
阿部と橘が早川をじっと見る。
早川「本気ですか・・・」
阿部「あれから、怒りがおさまったりは」
早川「怒り?(語気を荒げて)当たり前でしょう。妻と娘のことは、いつだって忘れたことありませんよ」
阿部「この後も?」
早川「もし、アイツに会う機会があれば、今すぐ、この手で・・・」
思い詰めた表情を浮かべる早川を阿部が見ている。
阿部「自分を責めたことはありませんか?」
早川「もちろんです、アイツに復讐ができないなら、自分が二人の所に行ければって・・・何度も、何度も、でも、その度に、妻と娘の声が聞こえるんです、「止めて」って」
阿部がうなずく。
阿部「もし、あなたに覚悟があれば、怨みや憎しみを、人の役に立てることができます」
早川が阿部の顔を見る。

○同/玄関(夕方)
中から阿部と橘が出てくる。
阿部が中にいる早川に話しかける。
阿部「では、また」

○道路(夕方)
阿部と橘が歩いている。
橘「覚悟しますかね」
阿部「ああ、間違いない。いつでも対応できるよう準備を頼む」
橘「はい」
阿部「あれは使える」

(続く)