ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

怨魂師(1)

○ゴミ屋敷/外観(昼)
軒先までゴミが溢れる一軒家。
スーツ姿の阿部晴久(34歳)、橘澄果(28歳)がゴミ屋敷の玄関前に立っている。

○同/玄関前(昼)
橘がハンカチで鼻を押さえている。
橘「出てきますかね?」
阿部「ハンカチ」
橘がハンカチを外して、バックにしまう。
阿部が玄関をノックして声を出す。
阿部「すみませーん!片野さん、片野さーん」
阿部が玄関のドアを開け、奥に向かって問いかける。
阿部「片野さーん、市の職員の者です、ご在宅ですかー?」
阿部と橘が奥を見ている。
奥に積まれたゴミが動き、屋内から人の声がする。
屋内からの声「誰!」
阿部「ちょっとお時間いいですか」

○同/屋内(昼)
ゴミに囲まれた中で、阿部と橘が住民の片野茂(61歳)と立ち話をしている。
片野が二人からもらった名刺を見ている。
二人の名刺の肩書きは「白城市 保健局 嘱託民生員」。

○路上(昼)
阿部と橘が歩いている。
阿部「あれは、ただのキチガイだな」
橘「ダメですか?」
阿部「世間に対する怨みがない、人への憎しみとかさ、そういうのがない。イカれてるだけじゃ使えない」

○加藤家/外観(昼)
阿部と橘が玄関前に立っている。

○加藤家/玄関前(昼)
阿部と橘が立っている。
玄関のドアが内側から開き、加藤君枝(59歳)が顔を出す。
君枝「本当にわざわざ、すみません、どうぞ」
君枝が二人を中に招き入れる。

○同/居間(昼)
阿部、橘と君枝がテーブルを挟んで座っている。
阿部「もう、どれくらいになりますか?
君枝「会社を辞めて戻ってきてからです、4年位前から・・・」
阿部「それから、ずっと?」
君枝「ええ、こうしてケアの方に来てもらうのは初めてで」
君枝の前には二人の名刺が置かれている。
名刺の肩書きは「NPO法人 心のケアセンター ボランティアスタッフ」。
橘「辞めた会社のことは?」
君枝「あの子も詳しく話したがらないんですけど、ブラックっていうんですか?そんな話を・・・。私も、社会人の経験がある訳じゃないもんですから、なんて声をかけたらいいのか」
阿部が時計を見る。
時計は12時過ぎ。
阿部「息子さん、食事やトイレは、どうしてます?」
君枝「食事は部屋の前に。トイレの時だけは部屋から出てきます」
橘「今日は?」
君枝「トイレは、お二人が、お見えになる前に降りてきてました。食事は、朝昼一緒で、だいたい1時頃に」
阿部「それ、我々が持っていきますよ、話ができるかもしれない」
橘「用意、お願いできますか?」
君枝「はい。じゃぁ、少し待っていてもらえますか?」
君枝が立ち上がり、居間から出ていく。
橘「どうですか?」
阿部が首を傾げる。
阿部「まだ分からんね」

○同/玄関前(昼)
阿部と橘が出てくる。
奥で君枝が頭を下げている。
阿部「では、また」

○道路(昼)
阿部と橘が歩いている。
橘「ダメですか?」
阿部「甘えてるだけ、怨みじゃない」
橘「そうですか・・・」
阿部「そりゃ、少しくらいは怨みは持ってるだろうけど、あれじゃ弱い、使えない」
橘「見つかりますかね」
阿部「見つけるのが仕事」
二人が歩いていく。

(続く)