ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

別れ道

○和紙工房/工房内(昼)
職人が和紙をすいている。
小橋啓太(32歳)が工房の片隅で工具の手入れをしている。
啓太が時計を見る。
時計は12時前。
啓太が親方に話しかける。
啓太「すみません、抜けさせてもらってもいいですか?」
親方が時計を見る。
親方「しゃーねぇな、今日は忙しいから、早く戻って来いよ」
啓太「はい」

○車内(昼)
走行中の軽自動車の車内。
啓太が運転をしている。
助手席には小橋富江(68歳)が座っている。
啓太と富江が話をしている。
啓太「もう夏だし」
富江「先生も涼しくするようにって」
啓太「早くクーラー修理しないと」
啓太がブレーキを踏む。

○路上(昼)
啓太の前の車が3台ほど止まっている。
一番前には選挙カーが停車しており、選挙スタッフが後続の車を止めている。

○車内(昼)
啓太の車の車内。
富江「和田くんだ」

○路上(昼)
停車している選挙カーには和田孝の名前。
道路脇の建物から和田孝(32歳)が和田弘幸(65歳)と共に出てくる。
孝が選挙カーの後ろに止まっている車に挨拶している。
啓太の車にも挨拶に来る。
啓太が窓を開ける。
孝「どうも、すみません、お待たせして」
啓太「和田!」
孝が啓太の顔を、しばらく見る。
孝「小橋?」
啓太「ああ、久しぶり」
孝「なにやってんの?」
啓太「病院の送り迎えでね」
孝が富江の方を見る。
孝「お母さんの?」
啓太「ああ」
孝「こっち戻ってきてんの?」
啓太「まぁね」
選挙カーの方から弘幸の声がする。
弘幸「孝、行くぞ」
孝「(啓太に)今度、同窓会開くからさ、酒でも飲もうよ」
啓太「ああ」
孝が走って選挙カーに戻る。

○車内(昼)
走行中の車内。
啓太がガソリンメーターを見る。
ガソリンは残量わずか。
啓太「ガソリン入れるわ」
車がガソリンスタンドに入り、車を止める。
啓太が財布の中をじっと見た後、窓を開ける。
財布には1000円札と小銭。
店員「いらっしゃいませ」
啓太「ガソリン、1000円分」
富江が啓太のやりとりを見ている。

○車内(昼)
啓太が車を運転している。
富江が鼻をすする声。
啓太が富江を見る。
富江が目元をハンカチで押さえている。
富江「ごめんね」
啓太「どうした?」
富江「東京から呼び戻したりして」
啓太「別に母さんのために・・・、いや、そりゃ母さんの世話ってのあるけどさ、もともと向こうの生活が性に合わなかったし」
富江「だからって、田舎に。あっちで仕事してれば、苦労は・・・」
啓太「金のことを考えてUターンしてんだよ。会社で定年まで勤めたところで年金もらない世代なんだから、手に職つけて、ずっと働ける方がいいって、そういうことで戻ってきたんだし」

選挙カー/車内
走行中の選挙カーの車内。
弘幸と孝がタバコを吸いながら後部座席に座っている。
弘幸「さっき話してたの、あれ誰だ?」
孝「軽の?」
弘幸「ああ」
孝「中学の時の同級、東京行ってた奴」
弘幸「戻ってきてるのか?」
孝「学年イチ頭が良かったから、東京の大学出て、どっかデカい会社に入ったって聞いてたけど・・・親の世話してるっつってたから、戻ってきてんのかな?」
弘幸「話さなかったのか?」
孝「詳しくは・・・、こっちも「和田」って呼ばれたから気づいただけだし」
弘幸「「和田」?」
孝「よくアイツにノート写させてもらってたんだよ」
弘幸「東京の大学出て、頭は良いのかもしれんが、なんで町の議員様が、昼間から親の世話してるような奴に呼び捨てなんかされなきゃいかんのだ」
孝が「ふっ」と鼻で笑う。
弘幸「学はないかもしれんが、出世しとるのはお前なんだから、”和田先生”だろ、なぁ。今度、人前で呼び捨てされたら無視してやれ」
孝「ああ」
孝が満更でもない笑顔を浮かべる。

○和紙工房/工房内(昼)
啓太が戻ってくる。
啓太「遅くなりました」
親方「問屋が荷受けに来るから、車庫の荷物まとめといて」
啓太「はい」