ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

人間、売ります(8)

○マンション/室内(昼)
ワンルームマンションの室内。
若い男2人が無言で座っている。
ドアをチャイムが鳴る。
男1が玄関に向かう。
男2はテーブルの上のパソコンを操作し始める。
男1が若い男3と共に部屋に戻ってくる。
男2「ブツは?」
男3がポケットの中からUSBメモリースティックを取り出し、男2に見せる。
男1が3Dプリンタをセットする。
男3「ネットワークを完全に切ってるか、それだけは注意してくれって」
男1が周辺機器の確認をする。
男2がパソコンの設定を確認する。
男3「大丈夫?」
男1「WiFiの電源、切れてる」
男2「ネットワーク接続、切れてる」
男3「よし」
男3がパソコンにUSBメモリーを差し込む。
男2がパソコンを操作する。
男2「これか」
3Dプリンターが動き始める。
男1「来た!」

×××時間経過×××

男1が3Dプリンターがプリントアウトした人面マスクを取り出す。
男2「これ大量にプリントアウトしたら?」
男3「衣装の用意が面倒だよ」

×××時間経過×××

靴を履いている足下のアップ。
3人が同じ形の黒い靴を履いている。
各々の靴底に高さの違うラバーの靴底を装着している。
男3の声「よし」
足下からゆっくりと上半身へ、3人の様子が分かる。
揃いの靴、揃いのジーンズ、揃いのシャツ、同じ顔、同じ身長。
3人が同じ髪型のカツラを被り、顔を合わせてうなづく。

○電車/車両内(朝)
山間部を走る電車の車両内。
登山姿の男1が乗っている。
男3の声「別ルートで山に向かう」
男1の声「監視から逃げる?」

○バス/車内(朝)
山間部を走るバス内。
登山姿の男2が乗っている。
男3の声「そうだ、一旦、監視カメラの届かないところに出るんだ」

○山道(朝)
男3が歩いている。
男3の声「そして、集まる」

○山林(夕方)
木々に覆われた森林の中。
100名近くの男たちが集まっている。
男3が合流する。
男3は、先に着いていた男1、男2を見つけ、手で合図する。
男2「遅かったな」
男3「串山駅からは遠かったよ」
男1が森の向こうを指さす。
男1「JRの無人駅、そこから下ればすぐだって」

○山(朝)
夜が明け始めている空。

○山林(朝)
男たちが、同じ方向へ向けて、歩き始める。
男たちは、全て同じ顔、同じ髪型、同じ服装(シャツ、ジーンズ、靴)、同じ身長をしている。
扮装をしていない男が数名残り、去っていく男たちの登山用具を片づけている。
片づけている男1「頑張れよ!」
同じ顔をしている男たちが、手をあげて応える。

○無人駅周辺(朝)
徐々に明るさを増す空。
無人駅に向かって同じ顔の男たちが集まってくる。

○無人駅ホーム(朝)
車両が止まっている。

○車両内(朝)
走行中の車両内。
座席に座っている中学生女子がキョロキョロしている。
周囲の座席に座っている人、吊革に掴まっている人、全て同じ顔の男。

○ターミナル駅/構内(朝)
通勤・通学客が行き交う構内。

○同/プラットホーム1(朝)
ところどころに同じ顔の男たちの姿がある。

○同/プラットホーム2(朝)
ところどころに同じ顔の男たちの姿がある。

○同/プラットホーム3(朝)
ところどころに同じ顔の男たちの姿がある。

○渋谷/街頭(昼)
同じ顔の男たちが歩いている。

○新宿/街頭(昼)
同じ顔の男たちが歩いている。

○池袋/街頭(昼)
同じ顔の男たちが歩いている。

○警視庁/外観(朝)

○同/会議室(朝)
スーツ姿の捜査員10名が厚い資料を読んでいる。
資料には街頭を歩く同じ顔の男たちの写真が掲載されている。
前方のドアが開き、捜査員たちと向かい合う形で指揮官が前方に座る。
指揮官「資料には目を通したか?」
捜査員たち「はい」
指揮官「同じ顔をした男たち全員の身元を割る、それが任務だ」
捜査員1「全員というのは?」
指揮官「写真に映っている全ての人間だ」
捜査員2「全部で何人になるのかも・・・」
指揮官「それも含めて全てを調べるんだよ」
捜査員3「身元が割れたら、どうすればいいんですか?」
指揮官「どうすれば?」
指揮官4「何か罪状を出して拘束するとか?」
捜査員3「泳がせておけばいいんですか?」
指揮官がうつむいて考える。
指揮官「罪状は未定だ、身元を割ること以上の指示は、まだ出ていない、まずは当たる筋道だけつけて欲しい」
指揮官が立ち上がる。
指揮官「説明は以上、次回会議は4日後、進捗を各々レポート、その後、あらためてチームを振り分けて捜査を進める」
捜査員5「罪状が未定ということは、捜査協力を依頼する時の手順は・・・」
指揮官「破防法で構わん、Aクラスで申請すればいい」
捜査員5「Aクラス・・・」
指揮官「他に質問は?」
捜査員からの質問はない。
指揮官「じゃ、頼む、頑張ってくれ」
指揮官がドアから出ていく。
捜査員たちが一つの机に集まって話をする。
捜査員6「こりゃ無理じゃないか?」
捜査員1「最初に監視カメラに映ったのが三鷹の駅だから、そこから遡って、なんとかならないかな」
捜査員6「でも、その前の映像がないんだから。監視カメラのないような田舎の駅から乗り込まれてたら、調べようがないよ」
捜査員7「町中だったら、防犯カメラの映像を集めて、どっから現れたのか、だいたいの目星がつくのに」
捜査員6「どこかで扮装してるとしても、周辺のデータがあれば分かるし」
捜査員7「最後も、扮装のまま、カメラのない場所に移動してるんだろ、データがない」
捜査員たちが資料を見ている。
捜査員2「っていうか、これ何なんだろうな?」
捜査員8「確かに、何の事件だろう」
捜査員3「単なるいたずらにしか思えないけどな」
捜査員9「でお破防法を使えるくらいの扱いだぜ」
後ろの机から拍手の音。
鏑木真次郎(30歳)が拍手をしている。
捜査員4「どうした?」
鏑木「そういうことか」
捜査員5「なにがだ?」
鏑木が捜査員たちに近寄る。
鏑木「これウチの中で決めた捜査じゃなくて、上から降ってきた案件だぜ、絶対」
捜査員6「どうして?」
鏑木「あんまり飲み込めてなかったじゃない、捜査の指示。指示する側も、深く知らされてないんだよ」
捜査員7「知らされてないって」
鏑木「同じ姿形をした集団がいて困るの誰だ?」
捜査員9「え?」
鏑木「いるだろう?監視カメラの映像から、電話の通信、メールの内容、世界中のありとあらゆる情報を集めて管理している組織が」
捜査員たちが無言になる。
捜査員8「なるほど」
捜査員5「そういうこと?」
捜査員4が資料を見ながら言う。
捜査員4「確かに駅から降りた後は監視カメラに映りそうな場所ばかり歩いてる」
捜査員1「識別システムにエラーが出たんじゃないのかな?」
鏑木「いや、エラーを出したんだよ、こいつらが」
捜査員6「まさか」
鏑木「いいねぇ、CIAを相手に勝負を挑んだ奴らがいる・・・って、なかなか面白い話になってきましたよ」

(続く)