ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

ハラハラ時計は、まだ動いているか?

○森川邸/外観(夜)

高級住宅地の邸宅。

森川邸の周辺に数台の車が駐車している。

 

○同/リビングルーム(夜)

森川信治(65歳)がソファに座っている。

周囲には刑事たちの姿。

ソファの前のテーブルには警察の機材とコードで繋がった電話が置かれている。

電話が鳴る。

刑事たちが体制を整え、信治に合図を送る。

信治が電話に出る。

信治「はい」

電話から男性の声。

電話の声「要望を言う」

信治が声を荒げる。

信治「唯は?唯と未来は、大丈夫なんだろうな?」

電話の声「身代金は100億」

信治「100億」

電話の声「革命実現のために必要な金だ」

電話が切れる。

刑事たちが小声で「100億・・・」、「ふざけてる」などと呟く。

刑事の一人、川島清彦(56歳)が信治を見ている。

信治はうなだれたまま動かない。

刑事たちが各所に連絡をしている。

信治が立ち上がる。

刑事A「森川さん」

信治「すみません、少し休ませてもらえますか?」

刑事A「そうですか、では、我々はこちらで待機していますので、落ち着いたら次の動きについて説明をいたします」

信治「はい」

信治が部屋から出ていく。

 

○同/書斎(夜)

信治が入ってくる。

信治が座り込む。

本棚下段に置かれた金庫。

信治が金庫の扉を開け、中を見ている。

 

○倉庫内(夜)

コンクリートで囲まれた古びた倉庫の中。

大野隆信(66歳)が椅子に座り、貧乏ゆすりをしている。

倉庫の扉が開く音。

大野が立ち上がり、扉の方へ向かう。

外から高木均(67歳)が入ってくる。

大野と高木が小声で話を始める。

大野「どうだ?」

高木「伝えた」

大野「確約したか?」

高木「いや、伝えただけだ」

大野「応じやしないぜ」

高木「俺は信じてる」

大野が倉庫奥のコンテナを見る。

大野「バカ野郎、娘たちをバラすハメになるぜ」

高木「いや、奴は約束を守る」

大野「守るもんか、奴はもう資本家に魂を売った抜け殻だぜ」

高木「心を金で売るような奴じゃないだろ」

大野「じゃ、どうして、まだ生きてる、いくらでもチャンスがあったハズだ」

高木「最大のチャンスを待ってるだけだ、信念を貫くと約束したろ」

大野「金に目がくらんでるんじゃねぇのか」

高木「奴が裏切ったら、俺たちの40年間は何になる!奴が使命を果たすことを信じて潜伏を続けてきたんだろ、人間は金儲けの道具ではない信念を持った生き物だ、俺たちのスローガンを忘れるな」

大野が目を伏せる。

 

○車内(夜)

走行中の車内。

運手席には斉藤義則(32歳)、助手席に川島が座っている。

斉藤「被害者の森川が怪しいっていうんですか?」

川島「なんか、おかしい」

斉藤「でも、極東革命戦線の名前で犯行声明が来てますし、五井グループの社長を狙った組織的な・・・」

川島「その犯人との電話のやりとりが妙にひっかるんだよな、何かお互いしか知らないような意味をもった・・・」

斉藤「個人的な恨みとかですか?まぁ、あのグループで社長にまでノシ上がろうと思ったら、人に言えない過去の一つや二つはあるかもしれませんけど」

川島「活動家グループの捜査は他の班に任せて、俺たちは森川の周辺を洗ってみよう」

斉藤「じゃデータベース調べてみます」

川島「頼むよ」

 

○倉庫内(朝)

高木が椅子に座りイヤホンをしてテレビを見ている。

倉庫の扉が開く。

扉の外から朝日が差し込む。

大野が入ってくる。

高木と大野が小声で話をする。

大野が手にしたリュックから新聞を数紙、取り出す。

大野「まだ報道はされてねぇな」

高木「テレビも、まだだ」

高木と大野が奥のコンテナに向かって歩く。

高木がコンテナの扉を開くと、中には目隠しと手足を縛られた森川の娘の荒田唯(35歳)と荒田未来(8歳)が横になっている。

大野「飯だぞ、起きな」

大野がリュックから食べ物を取り出す。

大野が唯の体を起こす。

大野「ほら、口を開けて」

大野が唯の口に食べ物を入れようとする。

唯「いつまで、こんな目に」

大野「父親に祈るんだな」

唯「父に連絡を?」

大野「したよ」

未来が口を開く。

未来「ママ・・・」

唯「大丈夫、おじいちゃんが助けてくれるから」

未来「おじいちゃん」

唯「おじいちゃん、いつも約束を守ってくれるでしょ、安心して」

未来「うん・・・」

高木が現れる。

高木「どうした?」

大野「森川は約束を守る男だってよ」

高木が少し沈黙する。

高木「ああ、俺たちも、そういう奴だって信じてるよ」

唯「何を要求したんですか?」

高木「解放された時のお楽しみだ」

唯「お金?身代金?」

大野「金じゃ買えないものかもな」

唯「父は信念を貫く人です、父が譲れないと決めたことを要求した場合は・・・」

高木「分かってる。その信念を貫く時が来たってことだ」

唯「え?」

 

○警視庁/外観(朝)

 

○同/会議室(朝)

刑事たちが席につき資料に目を通している。

黒板には「五井ケミカル/森川信治氏 娘・孫誘拐事件 捜査状況」の文字。

前方の本部長が刑事Bに質問をする。

本部長「犯行声明を出している極東革命戦線は、40年前に声明を発表してからの活動が把握できないというのかね?」

質問に刑事Bが答える。

刑事B「はい。ですので、同じグループ名を名乗ってはいますが、当時のグループの流れを汲んだグループであると判断することはできないかと」

本部長「40年前の声明文に関連した犯行が起きているのかね?」

刑事B「声明文の内容は「我々は最高の爆弾を開発することに成功した。この爆弾によって我々は資本家たちを一掃する」、これに該当する事件は未遂も含めて無いと思われます」

本部長「そうか。では、今日の予定について説明する」

本部長の隣の副長が説明を始める。

副長「午後、森川信治は五井グループ企業の社長が集まる経営者会議に出席する」

刑事Cが手を挙げて質問をする。

刑事C「それ止めてもらうことはお願いできませんか、周辺警備の人員を捜査に回してもらいたいんですが・・・」

副長「相談はしたんだが、森川本人も定年間近の最後の会議だそうで、どうしても出席したいといってね、意思が強いんだよ」

本部長「それに一部のマスコミに革命戦線からの声明文が届いて、問い合わせが来てるが、まだシラをきってる。森川が、普段と変わらない態度をとってくれると、こちらも助かる」

副長「では、各班の動きを確認する。若林班は(以下、捜査指示が続く)」

資料に目を通す刑事の中に川島と斉藤の姿がある。

 

○大崎家/外観(昼)

大崎幸造(77歳)の声「なにか事件でも起きたのかね?」

 

○同/居間(昼)

大崎と川島、斉藤が向かい合ってソファに座っている。

川島「そこは、まだ勘弁してください」

大崎が微笑む。

大崎「ふっ、わかったよ、覚えていることだったらいいけど」

斉藤「この件で、なにか覚えてることがあれば」

斉藤が資料を大崎に手渡す。

川島「もう40年位前の調書になりますが」

大崎「懐かしいな、40年前、公安にいた頃だ」

斉藤「その頃に大崎さんが取った調書なんですが、この森川という男」

大崎「森川、自転車泥棒・・・、ああ、森川」

川島「何か?」

大崎「森川の父親は警官でね、学生運動のアジトで信治を捕まえたんだが、父親が絶対に更正させるから見逃してくれっていうんで、別の罪状をつけて出してやったんだ」

川島「学生運動?」

大崎「ああ、でも、その後は更正して大手の企業に入ったって聞いてるよ」

斉藤「父親に?」

大崎「父親は真面目で義理堅い男でね、亡くなる前まで毎年、中元と歳暮を贈ってきてくれてた」

斉藤「森川の関わっていたグループについて覚えている点があれば教えてもらえますか?」

大崎「ああ、確か・・・」

 

○五井グループ本社ビル/外観(昼)

 

○同/最上階廊下(昼)

森川が歩いている。

すれ違う社員たちが森川に会釈をする。

森川が黒い鞄を手にしている。

鞄の中から時計の秒針が進む音がする。

 

○同/大会議室(昼)

円卓を囲んでグループ会社の社長たちが座っている。

森川が入ってくる。

皆が会釈する。

森川が席に座り、鞄を足下に置く。

鞄から秒針の音。

 

○車内(昼)

走行する車内。

斉藤が車を運転し、助手席の川島が携帯電話で通話をしている。

川島「ですから、部長、森川が極東革命戦線のメンバーだった疑いがあるんです(通話相手の話を聞く)いや、確かに元メンバー同士の恨みだったら、まだ良いと思うんですよ、でも、今回は声明文がでてるんですよね?(通話相手の話を聞く)単なる誘拐で終われば良いですけど、大がかりなテロ行為に繋がるっていう線も・・・」

 

○倉庫内(昼)

高木と大野が椅子に座ってテレビを見ている。

大野「資本主義に魂を売ってなければ、そろそろ五井の経営陣をぶっとばす時間だな」

高木「忘れるな、これは五井の経営陣をふっとばすのが目的じゃない、金、金、金の資本主義の中枢にも信念を貫く革命家が目を光らせてることを証明する闘いなんだ」

大野「成功すれば、財閥の奴ら、ビビって金儲けどころじゃなくなる」

高木「我々、革命家が人生をかけて作り上げた爆弾が、遂に」

 

○タイトルバック

ハラハラ時計は、まだ動いているか?