ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

フランスのおじさん

◯港(昼)

海外の貨物港。

コンテナを積み込む船舶。

副島孝彦(37歳)と西野実(33歳)が貨物船のタラップを上がっている。

 

◯貨物船/食堂(昼)

10数名の船員が集まっている。

船員は全員、日本人である。

船長の遠山健太(46歳)が船員に副島と西野を紹介する。

遠山「ダボワからルシャの航路に同行する航海士、副島くんと西野くん」

副島「副島です」

西野「西野です」

年輩の機関士が声を出す。

機関士「外人じゃないんですか?外人だって聞いてたけど」

遠山が微笑んで答える。

遠山「あぁ、確かに二人は日本人じゃなくて」

副島「ええ、こんな顔してますが、二人ともフランス国籍です」

西野「ボンジュール(フランス語で少し眺めの自己紹介を挨拶をする)」

副島「すみません、金髪の二枚目じゃなくて」

副島と西山が微笑む。

船員たちも微笑む。

船員たちの中に藤堂道彦(17歳)の姿。

 

◯貨物船/船内(昼)

航行中、作業をする船員たち。

 

◯航行中の貨物船

航行が数日に渡っていることがわかる朝、昼、夜のイメージカット。

 

◯貨物船/甲板上(昼)

藤堂が水平線の彼方を眺め、タバコを吸っている。

副島の声がする。

副島「いくつ?」

藤堂が横を向くと副島の姿

副島も彼方を眺めている。

藤堂も彼方を向きなおす。

藤堂「17です」

副島「まだ17か」

二人は遠くを見ている。

副島「親は?心配してるだろ」

藤堂「そんなことないです」

副島「子供を心配しない親なんているもんか」

藤堂「いえ、ウチは、そういう家ですから」

副島「ふっ(微笑)、そうか」

藤堂「フランス人なんですか?」

副島「出身は高崎だよ、群馬の高崎」

藤堂「群馬?」

副島「国籍を変えたんだ」

藤堂「できるんですか?」

副島「手続きを踏めば、難しくはない」

藤堂「そっちこそ、親は、どうしたんですか?心配するでしょ」

副島「いないんだ、中学で母親を亡くしてから、一人だ」

藤堂「そうですか」

藤堂の吸っていたタバコが短くなり、吸い殻を捨てる。

藤堂は、胸元からタバコを1本取りだす。

副島「どこのタバコ?」

藤堂が副島にタバコを箱ごと手渡す。

副島がタバコの箱を眺める。

副島「インドか?」

藤堂「なんて書いてるか分かる?」

副島「さぁ。1本?」

藤堂「ええ」

副島がタバコを1本取り出す。

副島がタバコに火をつける。

副島と藤堂がタバコを吹かす。

 

◯海(夜)

真っ暗な海に貨物船の灯り。

立て続けに銃声が響く。

 

◯貨物船/甲板上(夜)

副島と男がもみ合っている。

副島が馬乗りになり、首を絞める。

副島が、素早くナイフを抜き、男を刺す。

副島が返り血を浴びる。

 

◯同/食堂(朝)

船員たちが集まっている。

船員たちは緊張の表情、息を殺して、無言のまま動かない。

閉められたドアのハッチの向こうからノック音。

船員たちがビクッと動く。

ドアの向こうから副島の声。

副島の声「大丈夫か」

船員たちが船長・遠山の顔を見る。

遠山がハッチを開ける。

ドアの向こうには血塗れの副島と西野が立っている。

副島「安心して下さい」

遠山「本当かね?」

西野「乗り込んできた奴らは全員処分しましたから」

副島「海賊の死体は片づけましたが、船内に血痕が残ってます。港につくまで洗浄をしておかないと」

 

◯同・甲板上(昼)

遠くに陸地の見える海上。

副島が彼方を見ている。

藤堂の声がする。

藤堂「軍人だったんですか?」

副島の横に藤堂が来る。

藤堂「教えてくれれば良かったのに」

副島「海賊に情報を流す船員もいるからね、正体は隠しておかないと」

副島が胸元からタバコの箱を取り出し、藤堂に渡す。

藤堂がタバコを1本取り、タバコの箱を副島に戻す。

副島もタバコを1本取る。

二人でタバコを吹かす。

副島「自衛隊を除隊して、フランスで傭兵をやってたんだ」

藤堂「戦争にも?」

副島「行ったよ」

副島が遠くを見ている。

副島「自分の勝手で国を出たんだが、いざ離れると、日本のために働きたくなってな」

藤堂「それで海賊退治?」

副島「日本船の警備」

藤堂「かっこいいね」

副島「帰るんだぞ」

藤堂「ん?」

副島「戻る場所があるんだろ。ちゃんと帰るんだ」

藤堂が苦笑を浮かべる。

副島「故郷があるっていうのは、素晴らしいことだぜ」

 

◯海(昼)

遠くに陸地が見える海。

貨物船が海を進んでいる。