ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

特別な一日

○大通り(昼)

店舗が並ぶ通り。

人の姿はない。

1台のベンツが走ってくる。

コンビニの前でベンツが停まる。

ベンツからTシャツにジーンズ姿の庄司尚樹(29歳)が出てくる。

 

○コンビニ(昼)

コンビニのドア・ガラスが破壊されている。

ガラスに注意しながら庄司が店内に入る。

店内に店員の姿はない。

店内に灯りは点いておらず、店内放送も流れていない。

商品棚の菓子、食品、飲料は何も残っていない。

入口でガサッと音がする。

庄司が入口の方を見る。

スエット姿の水野沙織(22歳)が立っている。

庄司「誰?」

沙織「え?」

 

○通り(昼)

庄司と沙織がコンビニから出てくる。

庄司「何が起きたか知ってる?」

沙織が首を横に振る。

庄司「何やってた?」

沙織「え?」

庄司「何やってた、この3日」

沙織「何も」

庄司「俺がベットでぶっ倒れてた3日前まで、何も起きてなかった、何が起きたんだ、この3日で」

沙織「分からない」

庄司「この辺に住んでるの?何で知らないの?」

沙織「テレビも、ネットもやらないし」

庄司「誰かから情報は入ってくるだろ、こんなことになってて」

沙織が首を横に振る。

庄司「家族は?一人?」

沙織がうなずく。

庄司「ひきこもりか?」

沙織がうなずく。

庄司「携帯は?」

沙織がポケットから携帯を取り出す。

沙織「繋がらない」

庄司が沙織の携帯を見る。

庄司「auもダメか。携帯会社の問題じゃないんだな」

沙織「停電?」

庄司「docomoもダメ、基地局に電源が来てないんじゃないのか。ったく、パソコンのネットも繋がらないし、参ったな」

沙織「お腹すいた」

庄司「俺だって空いてるよ」

庄司が車の方に向かう。

 

○車内(昼)

走行中の車内。

庄司が車を運転している。

助手席に沙織が座っている。

 

○商店街(昼)

住宅街の小さな商店街。

人の姿はない。

大半の店先が破壊され、通りに商品が散乱している中、シャッターが降ろされ無事の「食品・生活雑貨 加藤商店」という店がある。

店の前にベンツが停まる。

沙織が加藤商店の前に立つ。

ベンツがシャッターに向かって、ゆっくりと前進する。

シャッターが曲がり、隙間ができる。

沙織が中に入る。

 

○河原(昼)

大きな橋のかかっている河川。

河原に車が停まっている。

庄司がドアを開けたまま菓子を食べている。

木陰から沙織が出てくる。

沙織の手にはティッシュペーパー。

庄司「済んだ?」

沙織「うん」

沙織が助手席に座り、菓子を食べ始める。

庄司「食べたり、出したり、忙しいな」

沙織が無視して菓子を食べる。

庄司「ようやく休みが取れたと思ったら…」

沙織「何やってる人?」

庄司「銀行、本社で国際金融の担当でさ」

沙織「国際?」。

庄司「為替、わかる?為替」

沙織が首を傾げる。

庄司「まぁ、いいや。それが、この1ヶ月、ムチャクチャ忙しくてさ、ベットの上で寝れたの5日だよ、1ヶ月で、たったの5日」

沙織「それ以外は?」

庄司「ほぼ徹夜、寝れたとしても会社のソファで仮眠とか」

沙織「無理!」

庄司「引きこもって、何してんの?」

沙織「寝てる」

庄司「ずっと?」

沙織「ずっと」

庄司「こっちは一週間休みを取るのに半年前からネゴってたんだぜ」

沙織「予定はあったの?」

庄司「とにかく寝る、携帯切って、枕元にミネラルウォーターとカロリーメイトとサプリを置いて、ひたすら寝貯めする」

沙織「3日前から」

庄司「ああ、ようやく起きようと思ったら…」

庄司が立ち上がって周りを見渡す。

町から風と川の音、鳥の鳴き声しか聞こえてこない。

庄司「家族は?」

沙織「え?」

庄司「こうなる前に実家から連絡無かった?」

沙織「着拒してるし」

庄司「そうか」

沙織「そっちは?」

庄司「留守電とかメールも相当残ってるんだけどさ、電池がさ」

沙織「見るのはできるんじゃないの?」

庄司「着信で電池減ってたのに、停電で繋がらないの知らなくてさ、発信やらネットやら試してたら、アッという間になくなったよ」

沙織「停電」

庄司「マンション、住んでるの?」

沙織「うん」

庄司「エレベーター止まってなかった?」

沙織「ついてないから」

庄司「管理人がオートロックと駐車場を開けてくれてたみたいで助かったけど、エレベーターはまいったね、17階だぜ」

沙織がペットボトルの飲料を飲みきり、ボトルを捨てる。

庄司「食った?」

 

○大通り(昼)

庄司と沙織を乗るベンツが走っている。

 

○車内(昼)

走行中の車内。

沙織「あ!」

庄司「ん?」

沙織「人」

庄司が車を停める。

シャッターの降りたビルの前に浮浪者数名が座っている。

庄司「窓開けて」

沙織が沙織側(歩道側)の窓を開ける。

庄司が運転席に座ったまま、浮浪者に大きな声で話しかける。

庄司「すいませーん!」

浮浪者が庄司の声に反応する。

庄司「なにが起きたか知ってますかー?」

浮浪者たちが話をしている。

庄司「なにがあったんですかー?」

浮浪者の一人が手にしたラジオを指差しながら答える。

浮浪者「地震だってよ」

庄司「地震があったんですかー」

浮浪者「起きるんだってよ」

沙織がつぶやく。

沙織「起きる?」

庄司が浮浪者に話しかける。

庄司「警報ですかー?」

浮浪者「ああー、(ラジオを指差しながら)今は聴けないぞ」

庄司「いつですかー?」

浮浪者「もう、そろそろだ」

庄司「ありがとうございました-!」

庄司がアクセルを吹かして車を発進させる。

沙織「乗せないの?」

庄司「臭いの嫌なんだよね」

 

○高速道路(夕方)

高速道路の入口。

ゲートが破壊されている。

庄司のベンツが高速道に乗り入れる。

 

○車内(夕方)

走行中の車内。

庄司「ベットで爆睡してる間に警報が出てたのか」

沙織「外がザワザワしてたかも」

庄司「はぁ・・・そうか、そういうことか」

沙織「なに?」

庄司「この1ヶ月、忙しかったのは為替が異常な動きだったからなんだけど、裏で、地震が来るっていう情報が巡ってたのかもしれない」

沙織「ふぅん」

庄司が車を停める。

 

○高速道路・ジャンクション(夕方)

ベンツが停車している。

 

○車内(夕方)

停車中の車内。

庄司「どっちに行く?」

沙織「さぁ」

庄司「東、西、北」

沙織「任せます」

庄司「よし」

庄司がアクセルを吹かす。

 

○高速道路(夕方)

ベンツが走行している。

 

○車内(夕方)

走行中の車内。

庄司がメーターに目をやる。

庄司「持って100km」

沙織「ガソリン?スタンドは?」

庄司「停電だろ、あっても動かないよ」

沙織「どうするの?」

庄司「さぁね」

庄司がアクセルを踏み込む。

 

○高速道路(夕方)

道路を走行しているのは庄司と沙織の乗るベンツのみ。

ベンツがスピードを上げる。

車内の庄司と沙織の表情が微笑んでいるかのように見える。