いいとも・ザ・ムービー
○喫茶店/店内(夜)
ホール型の喫茶店。
喫煙男性の目立つ店内。
中沢要(53歳)が西田久志(45歳)と近藤真一(47歳)と向かい合って座っている。
中沢は堅気ではない雰囲気をした強面の男。
西田と近藤は地味なオタク風。
西田「まぁ書かせてもらえるなら・・・」
近藤「ええ、自分も」
中沢「よし、じゃ、お前らに決めた。これ誰にもいうんじゃねぇぞ」
西田、近藤「はい」
中沢「”いいとも”で1本、撮れねぇかなって」
近藤「いいとも?」
中沢「知り合いにネットビジネスだかでスゲェ儲けてるおっさんがいてさ、映画にカネ出してくれって頼みにいったわけ」
西田「”いいとも”って”笑っていいとも”ですか?」
中沢「(西田に)話を最後まで聞け。でな、Vシネの企画を見せても全然ノってこないワケ、そんな時、おっさんがチラッとテレビ見たら、ちょうど”いいとも”やってたワケ、最終回。盛り上がってただろ、そしたら、おっさんが「これが映画になるならカネ出す」って」
近藤「”笑っていいとも”の映画?」
中沢「笑っていいとも・ザ・ムービー?」
近藤「フジテレビがやりませんかね?」
中沢「バカ、おっさんからカネ引っ張って、企画ごとフジに持ち込めばいいんだろ」
西田「そんなことできるんすか?」
中沢が頭を指さしながら言う。
中沢「できる、できないじゃないの、こういう発想がプロデューサー脳ってこと。フジの仕事やってる制作の知り合いいるし、アイデアと人脈よ」
西田「シナリオを、俺たちに?」
中沢「ああ、頼むよ」
近藤「大丈夫ですか、俺たちVシネしか書いたことないし」
西田「コメディも」
中沢「”いいとも”でコメディとか当たり前すぎだろ、パパッと考えてよ、西田ちゃん」
西田「だったら、例えば、タモリを組長にして、仁義なき戦いみたいな・・・」
中沢が首を振る。
中沢「それ、俺も提案した。なら「そういうの、よくあるよ」だって」
西田「意外に見てる人ですね」
中沢「カネ引っ張りたいから、パァーと派手な企画が欲しいんだよね」
近藤「じゃ、テロリストはどうですか?アルタでダイハード」
西田「うん、放送中の”いいとも”にテロリストが乱入、撃退する様子を生中継!」
近藤「そうそう」
中沢が思案する様子。
中沢「中継って、全部ステージの上?」
近藤「リアリティを考えると、最後まで中継のテイでやった方が映画史に残る・・・」
中沢「スケール小さくないか?それ、タモリンピックだろ」
近藤と西田が黙る。
中沢「なんかねぇの」
西田「あの・・・ホラーはどうですかね」
中沢「ん?」
西田「南極の昭和基地に寄生虫型のエイリアンが忍び込むんです」
近藤「人間と同化するんだな」
中沢「それと”いいとも”が、どう結びつく?」
西田「エイリアンは火に弱い、火に当たると正体を現すんです」
近藤「正体っていうか、別の生き物とかに形を変えるんだろ」
西田「そう、主人公がエイリアンに寄生された男を追いつめて火を当てる。すると男はタモリに変化する!」
近藤「周りの職員たちの様子がおかしい、主人公が職員たちに火を当てると、鶴瓶、中居、香取、次々と”いいとも”レギュラー陣に変化・・・」
西田「♪お昼休みは、ウキウキウォッチング」
近藤「”いいとも”が始まる!」
中沢「う〜ん、60点。あと1つ決定打が欲しいな。この後、事務所でビデオ見ながらネタ出しやんね?」
西田「は、はい」
中沢たちが立ち上がる。
中沢「リキさんかオザワさんの出方も考えないとな」
近藤「は?」
中沢「本編の最後はリキさんかオザワさんにバシッとシメてもらわないと」
近藤「”いいとも”の映画で、ですか?」
中沢「”いいとも”だろうが、”よかとも”だろうが、関係ねぇよ、中沢の映画だよ、男の映画でしょ」
近藤「は、はぁ」
中沢たちが席を後にする。
隣のテーブルに座っていた男A(32歳)が向かいに座る男B (33歳)に話しかける。
男A「どう作ってもコメディだろ、あれ」