ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

父兄参観

○小学校/外観(昼)

教師の声「みんな作文を書いてきてくれたかな?」

 

○小学校/教室内(昼)

小学3年生の教室。

父兄参観日、教室後方には父兄が並んでいる。

生徒たち「はーい」

教師・村瀬拓也(26歳)が生徒たちに話しかける。

村瀬「今日は、皆の作文を教室で読んでもらいます。では、発表したいという人!」

数名の元気の良い生徒が手を挙げる。

生徒たち「はーい!」

手を挙げた中には後ろの父兄の方をチラリと見る生徒もいる。

村瀬「じゃぁ、一番声の大きかった小西、読んでみようか」

小西光留(9歳)が作文を手に立ち上がる。

小西「はい!読みます。「僕のお父さん、小西光留、僕のお父さんは、いつもゴロゴロしています、動物園のライオンみたいです。文句をいうと仕事が忙しいと言います。仕事は警察官です。刑事ドラマのような仕事ではないと言います、でも・・・」

 

×××時間経過×××

 

女生徒・川岸が作文を読んでいる。

川岸「・・・そんなところは嫌いですけど、やっぱり大好きです。大人になったら、私が美容師さんになって、お父さんの床屋さんの隣で一緒に美容室をやりたいと思います。いつまでも元気でいて下さい」

父兄の中には、目尻をハンカチで押さえている者がいる。

川岸が座る。

生徒や父兄が拍手をする。

村瀬「川岸、ありがとう。さぁ、あと1人、誰に読んでもらうかな」

生徒たちから手が挙がる。

生徒たち「はーい」

村瀬が教室を見回す。

村瀬「次は、今まで手を挙げてなかった人を選ぼう」

田畑真綾(9歳)がうつむいて座っている。

村瀬が真綾を見る。

村瀬「田畑、作文は書いてきてるよな?」

真綾がうつむいたまま答える。

真綾「はい」

村瀬「じゃ、田畑に発表してもらおう」

真綾がうつむいたまま立ち上がり、小声で早口で作文を読み始める。

真綾「私のお父さん。私のお父さんは、人に見られながらウンチをする仕事です。小さい頃、そんな仕事は辞めてと言ったら、お父さんは急に怒りだして・・・」

生徒や父兄がザワザワし始め、真綾の声がかき消される。

村瀬が状況が飲み込めない呆気にとられた表情。

村瀬「ごめん、田畑、聞こえなかった。もう少し大きな声で、もう一度、最初から読んでもらえる?(生徒に)みんな静かに」

真綾が小声の早口で読み直す。

真綾「私のお父さんは、人に見られながらウンチをする仕事です。小さい頃・・・」

生徒たちが爆笑し、真綾の声がかき消される。

父兄たちも笑いをこらえている。

村瀬「ちょっと待って、みんな静かに!」

村瀬が真綾の席に行き、作文を手に取り目を通す。

生徒たちが真綾に向かって、(声に出さずに)「うんこ」、「うんち野郎」とバカにする。

真綾がバカにする生徒を睨み返している。

村瀬「よし、田畑の作文は、ここまで。誰か発表したい人いるかな?」

笑いを堪えていた父兄たちの間から笑い声が漏れる。

教室中が生徒と父兄の笑いに包まれる。

真綾が村瀬から体を離して、声をあげる。

真綾「何がおかしい!父さんが人前でウンチして、うちの家族は生きてるんだ、鉛筆だって、給食だって、着てる服だって、全部、父ちゃんのウンチで稼いでくれてるんだ!笑うな!」

教室内の笑いが止まらない。

村瀬が真綾を抱きしめ、なだめる。

生徒たちが「うんち」、「うんこ」と声に出して、真綾をバカにする。

真綾「私の父さんだって、みんなと同じだ、バカにするな!」

村瀬が教室をなだめるような手振りをするが、教室の笑いは止まない。

 

○室内

暗い室内にスポットライトの一筋の光。

スポットライトを浴びているのは田畑昭宏(39歳)。

昭宏はお尻を出して、しゃがみ込んでいる。

昭宏は手術台のような場所にしゃがんでおり、その周囲をマスクと白衣のスタッフが取り囲んでいることが分かる。

 

○研究所/廊下(昼)

昭宏が研究者Aと歩いている。

研究者A「田畑さん、タバックスF型、完治90%以上だそうです。夢の制ガン剤、完成に近づきつつあります」

昭宏「良かった。でも、そろそろ、次の候補を見つけくれないかな、私もねぇ・・・」

研究者A「我々も次の提供者を探して、調査は1万人を越えたんですけど、大腸内に、あの酵素を培養しているのは、田畑さん以外に見つからないんですよ」

昭宏「そうなんだ・・・」

 

○小学校/職員室(昼)

村瀬が先輩の志村有(31歳)に話をしている。

村瀬「ま、その後、教室で真綾のことを笑っていた生徒の父親がガンになって、タバックスを分けて欲しいと土下座したりするんですけど、それはいいとして、父兄参観の作文発表で、こういうことが起きた場合、教師として、どう振る舞えば正解なんですかね?」

志村「俺もそれはわからんけど、まぁ、一つだけ確実にわかる」

村瀬「お、何ですか?」

志村「お前、教師に向いてないと思うよ」

村瀬が納得するように何度も頷く。