ハニーハニー
○港(夜)
近代的な設備の港。
○ベイエリア(夜)
高層建築が並ぶベイエリア。
通りの看板から中国であることが分かる。
○ホテル/寝室(夜)
高級ホテルのスィートルーム。
山崎貴之(51歳)と三島慶子(32歳)が全裸で交わっている。
山崎が激しく腰を振り、慶子を突く。
慶子が絶頂の声を上げる。
山崎が果てる。
山崎と慶子が体を離し、互いに息を整える。
山崎「良かった?」
慶子が頷く。
慶子がおでこを触る。
慶子「汗」
山崎「シャワー浴びよう」
慶子「先に入ってて、すぐに行くから」
山崎が立ち上がってバスルームへ向かう。
山崎がバスルームに入った後、慶子が立ち上がり、ベッド脇に置いたバックの中に手を入れる。
○同/バスルーム(夜)
山崎と慶子が抱き合ってキスをする。
○同/寝室(夜)
山崎がバスローブ姿で入ってくる。
ベッドに二等書記官のチョウ(36歳)が座っている。
山崎「チョウさん?」
チョウ「お楽しみのところ、すみません」
チョウがニヤリと笑う。
山崎「勝手になんですか!」
チョウ「政府高官、企業経営者、日本の男性の弱点は、女です」
山崎「・・・罠?」
バスローブ姿の慶子が入ってくる。
慶子「ごめんなさいね、政務次官」
慶子がニヤリと笑う。
慶子がチョウの隣に腰を下ろす。
山崎がソファに座る。
チョウ「この部屋にはカメラとマイクを仕掛けてます、もちろんホテルに入る前の行動も全て記録しています」
山崎「朝陽新聞の記者が、どうして?」
慶子「悪いこと?」
山崎「旦那さんは知ってるのか?」
慶子「仕事と旦那は関係ないわ」
チョウ「橋本さんの時代は、中国人女性が工作員でもうまくいったんですがね、最近は警戒心が強くて、日本人女性で工作をしているんですよ」
山崎「橋本というのは首相?」
チョウ「もちろん」
慶子「この仕事、楽しいわよ。地位も名誉もある立派な大人が、子供みたいに震えて言いなりになるの」
山崎「そうか・・・」
チョウ「政務次官は、なかなか度胸がある、取り乱さない」
山崎「実は、そのケースにはカメラ5つとマイク3つを仕掛けてるんだよ」
山崎がソファ脇に置かれたトランクケースを指さす。
山崎「今、映像は全世界に中継されている、日本の政務次官が体を張ったハニートラップ生中継、英語字幕を入れたバージョンも2、3分遅れで配信しているハズだ」
慶子が立ち上がる。
チョウが慶子の腕をつかむ。
チョウ「面白いハッタリですね。無理でしょ、どうやって世界に?我が国はインターネットを規制しているんですよ」
チョウが慶子を見て、「大丈夫」と合図する。
チョウ「海外の動画サイトにはアクセスできない」
山崎「ここからはアクセスはしていない、無線で飛ばしてるだけだよ。そして、近くに待機したスタッフが、その電波をキャッチしている」
チョウ「同じことでしょう、電波を受けてもアクセスできなければ」
山崎「どうして、私がこの会議に来たと思います?港町で開催される会議に?」
チョウが慶子を掴んでいた手をゆっくりと離す。
チョウ「・・・船?」
山崎「さすがチョウさんだ。衛星回線を積んだ船まで無線を中継すれば、あとは検閲とは関係なくアクセスできる」
慶子がチョウの肩を叩く。
慶子「ウソかもしれない、本部に戻って、確かめましょう」
チョウは答えない。
山崎「チョウさん、あそこの新聞社の記者は、その程度のレベルだよ」
慶子「なに!」
山崎「身元のバレた工作員が生きて戻れると思ってんのか?日本に戻ってベラベラ喋られたら困るだろ」
慶子がチョウに話しかける。
慶子「チョウさん、ホント?どういうこと?」
チョウが山崎に話しかける。
チョウ「私の身の安全を保証してくれますか?」
山崎「できるだけ努力はする」
慶子「私は?私はどうなるの?」
山崎「中国で行方不明になるか、日本で逮捕されるか、好きな方を選ぶんだな」
山崎が立ち上がって、急いで着替え始める。
山崎「作戦通りなら廊下にスタッフがいる、急げ」