革命後夜
○国会議事堂・外観(昼)
ノボリや旗を持った群衆が取り囲んでいる。
群集たちのシュプレヒコールが大きく響いている。
ノボリには「命は限りあるモノ」、「人間は神ではない」などのフレーズ。
シュプレヒコール「肉体を土へ還せ!権力を放棄せよ!」
○同・入口前(昼)
議事堂から出てきた内山晃司(29歳)たち一団が階段の上で立ち止まる。
ジーンズ姿の内山たちの体には所々血がついている。
内山はスーツ姿の岸田富雄(69歳)の首元を掴み、引きずるように岸田を連れてくる。
内山は岸田を前に突き出し、大声で演説を始める。
内山「諸君、我々は革命に勝利した!」
群集たちが雄叫びを上げる。
内山「100年以上続いた岸田政権は、今日、終了する」
内山が岸田の首を高く上げる。
岸田が苦しそうに声を出す。
岸田「首相を退陣します」
群集達の叫び声。
内山「諸君、これは革命の序章である。革命の最終目標は遺伝子医療の破棄にある!不老不死の技術を独占し、永遠の肉体と知識と富を謳歌する特権階級、我々を搾取し続ける権力者たちに、限りある命を大切さを知らせることが真の目標なのだ!」
群集の「そうだ!」の声。
内山「時代変革の象徴として、今、ここで岸田富雄の命を総括する。一世紀以上、首相の座にしがみつづけてきた怪物の最後を見届けるのだ!人民の力で岸田富雄の命を粛正する!」
群集が最高に盛り上がる。
内山がナイフを手にして、岸田の首に斬りつける。
岸田が手足をバタつかせる。
岸田の首から血が溢れる。
内山が階段下にいる群集へ向かって岸田を蹴り飛ばす。
群集たちに揉みくちゃにされながら、岸田が引き回される。
岸田が無残な姿へと変わっていく。
○同・入口隅(夕方)
群集たちが去り、周囲には誰もいない。
雑然と散らばるゴミと共に岸田の遺体らしき肉片が捨てられている。
○同・外観(昼)
人々が議事堂に入っていく。
○同・入口(昼)
手描きの立て看板が立てかけられている。
看板には「第一回 人民議会」の文字。
入りきれない人々が奥をのぞき込んでいる。
奥から「異議なーし!」などの声が聞こえてくる。
○議事堂前・道路脇(昼)
大型バスが停車する。
その後ろにも数台のバスが続く。
バスの窓はスモークガラスで中の様子が見えない。
○バス・社内(昼)
社内には重装備の兵士たち。
隊長が後部座席へ移動する。
隊長「総理、入口に警備の者はいないようです」
後部座席には岸田が座っている。
岸田「所詮、70年程度しか生きられない愚民だな、脇が甘い」
隊長「30分あれば制圧できると思われます」
岸田「終わったら連絡をくれ。凱旋の準備をしておく」
隊長「はい!」
岸田「できれば内山たちは生け捕りにして欲しい。再生医療の素晴らしさを見せつけて後に処刑したい。下層階級のバカ共らしく絶望を味わいながら死ぬんだ」
岸田が微笑む。
岸田「兵士諸君、我々の命は永遠だ、死ぬ気で頑張りなさい」
バスのドアが開き、兵士たちが移動を始める。
岸田が隣の席の者に話しかける。
岸田「不思議なものでね、死ぬ直前のことまでは、きちんと覚えてるんです、嫌なもんですよ、あれは」