ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

新・日本の黒幕

○テレビリサーチ社・オフィス内(朝)

オフィスのテーブルに社員が集まっている。

社員たちはテーブルの上に置かれた書類を見つめている。

社員A「こんなバカな・・・」

部長の広瀬充(44歳)が声を上げる。

広瀬「ダメだ、ダメ、発表できないよ。これ、まだ局には送ってないんだろ」

社員B「はい」

広瀬「止めろ、局には装置のメンテで遅れてるって。昨日の番組表もってきて!」

社員たちが慌ただしく動き始める。

 

○テレビリサーチ社・受付(昼)

会社の看板。

受付には2名の受付嬢。

高沢陽一(28歳)が入ってくる。

高沢「社長にお会いしたいんですが」

受付嬢1「失礼ですが、御社のお名前をいただけますでしょうか?」

高沢「高沢です」

受付嬢1「御社のお名前は?」

高沢「会社はありません、個人で高沢という者です」

受付嬢1がパソコンをチェックする。

受付嬢1が首を傾げる。

受付嬢1「あの、本日、佐藤とはアポイントを・・・」

高沢「いえ、してません」

受付嬢1が受付嬢2と小声で話をする。

高沢が様子をじっと見ている。

受付嬢1「申し訳ございません、本日は、どのようなご用件で、ご訪問を」

高沢「話がありまして」

受付嬢1「プライベートのご関係でのお話でしょうか?」

高沢「いえ、会ったことはありません」

受付嬢2が静かに席を立つ。

受付嬢1「申し訳ございません、社内では、原則としてビジネスパートナー様との打ち合わせ以外は・・・」

高沢「社長でなければ、同じくらいの権限を持っている人に会えませんか?」

奥から受付嬢2と共に屈強な体つきをした吉永剛(42歳)が出てくる。

吉永「どういうご用件ですか?」

高沢「あなた、権限を持ってる社員?」

吉永「総務部の吉永という者です。視聴率に関する質問ですか?」

高沢「社長にお会いしたんですが」

吉永「ご用件を伺わせてもらえませんか?こういう会社なんでね、あの番組の視聴率が低すぎだとか、高すぎるとか、そういうことでいらっしゃる方が多いんですけど。リサーチは公正に行っていますから」

高沢「ちょっと、そこでいいですか」

高沢が受付の隅の来客用ソファを見る。

 

***時間経過***

 

吉永が受付嬢1に話しかける。

吉永「社長室につないでもらえる?」

受付嬢1「はい」

来客用ソファに座る高沢の向かいに広瀬が座っている。

吉永が高沢を見ながら受話器を手にする。

 

○同・社長室ドア前(昼)

社長室のパネル。

時報の音声「只今より午後10時10分をお知らせします(時報の音声続く)

時報の音声の奥からアニメ・キャラクターの音声が聞こえる。

 

○同・社長室内(昼)

引き続き、時報とアニメの音声が響いている。

高杉が社長室のソファに座っている。

高杉の前には社長の佐藤俊充(54歳)と重役たちが並んでいる。

佐藤たちはテーブルの上に置かれたパソコンのモニターをのぞき込んでいる。

パソコン・モニタにはテレビを撮影した映像が映っている。

パソコン・モニタに映るテレビ画面で流れているのはアニメ番組。

番組映像の隅に「PM10:11」の時刻が表示されている。

パソコン・モニタに映る映像にはテレビと共に撮影者が手にしているスマートフォンの画面が映っている。

スマートフォンは「117」(時報)と通話しており、スマートフォンのスピーカーから時報の音声が聞こえている。

パソコン・モニタから撮影者の声が聞こえてくる。

撮影者の声「では坂崎さんにメールを送ります。メールの送受信の履歴を確認することで、この映像が1月20日午後10時11分に撮影されたことの証拠になります」

高杉が映像を早送りする。

高杉「念のため」

パソコン・モニターに映るテレビの画面には「PM10:31」の時刻。

テレビのチャンネルが次々と他局へと切り替わり、同時間帯のテレビ番組が映る

高杉「これで3人分を見てもらいましたけど、まだご覧になります?」

佐藤「本当に全員分あるのかね」

高杉「ええ、東京圏の視聴率サンプル対象300世帯分、全て揃ってます」

重役たちが、ざわつく。

高杉「テレビリサーチ社の視聴率集計データでは、1月20日、午後10時から30分間、東京NXテレビのアニメが視聴率100%だったはずです。しかし全く違う数字が発表されてますよね、どういうことですか?」

佐藤が重役たちの方を見回す。

佐藤「う〜、まぁ、作為的に操作されたデータを公表するわけにはいかないからね」

高杉「集められたデータには決して手を加えない公正な調査、視聴率の信頼性はソコですよね」

佐藤「ん・・・」

高杉「そのデータを元に広告枠の値段を決めてるワケでしょ。でも、テレビリサーチ的に納得できなければ、自ら数字を修正することもある、と。視聴率を信じて広告枠に何億円も払ってるクライアントさんは、どう思いますかね」

佐藤「なんだ、君は、なにが目的だ」

高杉「この事実が外に漏れないように口止めをする必要があるんじゃないというアドバイスですよ」

佐藤「脅迫?」

高杉「警察沙汰にする気ですか?そうなっても良いですけど、これは自分一人でやってることじゃないんで、私を消えると、いくつかのルートで一斉公開される体制になってます。その時、そちらの業界に、どういうインパクトがありますかね」

重役たちが小声で話をする。

佐藤「じゃ、その口止めっていうのは」

高杉「一人1億」

佐藤「何人で」

高杉「400人」

重役たちが、ざわつく。

佐藤「400億?」

高杉「協力してくれたサンプル世帯が300軒。その他に100人程、このことを知っている者がいます」

佐藤「バカを言うな!」

高杉「でもテレビの広告費なんて年間2兆円の売上げでしょ。その売上げが、ずっとキープできると思えば、400億くらい、なんてことなくないですか?この情報が漏れたら、業界としても年間1兆くらい売上げ減ると思いますよ、10年で10兆円の損失が400億で止められるんですから、業界に働きかければ、かき集められる額だと思いますけど」

佐藤の鼻息が荒くなる。

高杉「あと、私にポストを用意して下さい」

佐藤「ポスト?」

高杉「こちらの親会社に役職付けで採用してもらいたいんです」

佐藤「何の実績があるんだね、君に」

高杉「いいんですね、この話が公になっても」

佐藤が握り拳を作る。

佐藤「少し考えさせて欲しい」

高杉「今すぐ決めて下さい」

佐藤「無理だ」

高杉「この場で関係各所に電話をして、すぐに決めて下さい」

佐藤「無茶を言うな」

高杉が壁にかかっている時計を見る。

時計は15時30分。

高杉「16時までに仲間に連絡を入れなければ交渉決裂だということで、事実を公にする手筈が整っています。あなたの判断がもたらすメリット、デメリット、よく考えて下さい」

佐藤が高杉をにらむ。

高杉も佐藤から目を離さない。

佐藤「中島君、机の上の電話を取ってくれ」

重役の一人が社長机へ向かう。

高杉がニヤリと微笑む。