モメごとに火がつくと、ズッとヤな思いをするので、最初からモメない方が良い
○阿部宅・室内(夕方)
2Kアパートの一室。
阿部勝人(38歳)と白木理恵(32歳)が話をしている。
理恵「そんなこと言うなら、私があなたに乱暴されたって、外で叫んでやるから!」
阿部「だから謝ってるだろ」
理恵「誠意を見せてよ」
阿部「でも、あの時はお互い恋人同士だったんだし、ああいうのが普通だろ」
理恵「恋人とか関係ないでしょ。イヤだったの、あなたに抱かれてる時、私がどれだけ嫌だったのか、分かってないんでしょ?」
阿部「二人でいると嬉しいって言ってだろ」
理恵「言っただけ」
阿部「生活費だって、全部、俺が出してたし」
理恵「そういう問題じゃないのよ」
阿部「じゃ、どういうことだよ」
理恵が毅然とした表情をする。
理恵「誠意よ、反省の態度を示す誠意を見せて欲しいのよ」
阿部「だったら今の俺を見ろよ、心を入れ替えて頑張ってるじゃないか」
理恵「そういうことじゃない」
阿部「だったら、何だよ」
理恵は阿部を見たまま答えない。
阿部「慰謝料?払っただろ、済んだ話を蒸し返すんじゃないよ」
理恵「あの時は、あの時の条件。今は気持ちが変わったの」
阿部が呆れた表情をする。
阿部「はぁ?だったら俺も、あの頃の俺じゃねぇんだよ、心を入れ替えた別人になってんだよ。それで、お互い文句ないだろ?」
理恵「そんなの認めない」
阿部「てめぇが、俺から金をもらった話は無かったことにするんだったら、こっちだって、てめぇに金を払う話は無しだ、それくらい分かるだろ」
理恵がドアの方に向かいながら声を上げる。
理恵「町中に聞こえる声で、あんたにレイプされたって叫んでやる」
阿部が理恵の後を追う。
阿部「ざけんなよ、バカ野郎」
○町・遠景(夕方)
夕暮れ、下町の住宅街。
タイトル・テロップ「モメごとに火がつくと、ズッとヤな思いをするので、最初からモメない方が良い」