東京の街に雪が降るとき
○マンション・室内(昼)
ワンルームマンションの室内。
中央にコタツが置かれている。
コタツの上には1台のノートパソコンと共に食事後の弁当やカップ麺が並んでいる。
こたつに足を突っ込んでいる金山猛(31歳)、宮本泰介(32歳)が話をしている。
金山がパソコンを手元に引き寄せる。
金山「なんかネタねぇの?」
宮本「中国ネタは?」
金山「最近、そればっかだろ、そろそろ飽きられるよ」
宮本「地震、テロ、新型ウィルス、株の暴落、ローテーションだと、この辺?弘、どれがいい?」
向井弘(30歳)が、こたつに入ったまま寝ころんでいる。
向井はスマートフォンを操作している。
金山「弘、なんか考えろよ」
向井が起きあがる。
向井「地震にしよう」
金山「地震か」
宮本「どんな話にする?」
向井がスマートフォンの画面を金山と宮本に見せる。
向井「ほら」
スマートフォンは天気予報の画面。
向井「東京は雪だってよ、これネタに入れよう」
宮本「いいね、東京に雪が降る時、大地震がって」
金山「ちょっとヒネってさ、東京が白く染まるときって?」
向井「いいじゃん!それ行こう」
宮本「あと地震っていうのも、もうちょっとボンヤリさせといた方がいいしょ」
向井「血に染まる、とか?」
金山「いや、もっとボンヤリさせとこう」
宮本「悲しみの雨が人々の頬をぬらす・・・、難しいか」
金山「残念な出来事、くらいでいいんじゃない?」
向井「まぁ、そんなとこか、何が起きても通用するし」
宮本「コメント欄に「まさか地震ですか!」って書き込んどくわ」
向井「まさかテロですか!、まさかけ原発が?」
宮本「まさか雪に滑って転ぶんですか?」
三人が笑う。
金山「適当に、いっぱい書き込んどいて」
金山がパソコンを操作する。
金山「よし、完了」
パソコンの画面は「浅見正週・オーラの予言」というサイト。
サイトの本日の予言という欄に「とうきょふのまちが、しろくそまるとき、ひとびとはかなしみのなみだをながす」という言葉が表示されている。
欄の下に「ネット除霊・月300円」というボタン。
金山「今日の仕事、ここまで。パチスロ打ってこよ」
向井「何人ぐらい増えっかな」
宮本「あと、300人で1万越えだろ。1万人越えたら、キャバ行こうぜ、高級店」
立ち上がった金山が窓の外を見る。
金山「こりゃ、ホントに雪が降りそうな天気だわ」
○マンション・仰観(昼)
マンションを下から見上げた外観。
金山たちの部屋の窓から外を除く金山の姿が見える。
○車内(昼)
金山たちのマンション前に停車している車内。
鈴木誠一(32歳)と斉藤耕造(38歳)が話をしている。
鈴木「そろそろパチスロに行く時間帯ですね」
斉藤「つくづくバカだよな、こいつら」
鈴木「明日は50人体制でしょ、マスコミも呼んで、そんなに騒ぐ必要あるんですかね、このヤマ、額にして5000万位の脱税なのに」
斉藤「これ、警視庁から譲ってもらったネタじゃないのかな、そん時の条件がマスコミ使って騒いでくれっていうヤツで」
鈴木「なんでですか?」
斉藤「詐欺で立件するには弱すぎるじゃん」
鈴木「だから国税局が脱税で上げてくれって?」
斉藤「その時にマスコミを動かしてニュースにすれば、似たような悪さしてる奴らを牽制できるしな」
鈴木「こいつらビビるだろうな、いきなりマスコミ引き連れた捜査官に踏み込まれて」
斉藤「泣くよ、50人に踏み込まれて、完全に調べあげられてるって知ったら、涙流しながら許しを乞うね」
鈴木「もし俺だったら、自分のバカさ加減に涙流しますよ」
○パソコン画面
金山たちのサイト画面に表示される予言「とうきょふのまちが、しろくそまるとき、ひとびとはかなしみのなみだをながす」の文字。