愛の彗星
○マンション・外観(夜)
○同・吉野宅内・寝室(夜)
吉野孝義(36歳)と吉野歩美(32歳)がセックスをしている。
孝義が果てる。
歩美「大丈夫?」
孝義「ああ、大丈夫、言われた通りにできたと思う」
○天文台・外観(昼)
自然に囲まれた山間部に建つ天文台。
○同・研究室内(昼)
研究員たちがテーブルの上に天文写真やデータを並べて話をしている。
研究員が所長・高平武(56歳)に話しかける。
研究員「NASAの予測を裏付ける資料ですね」
高平「ああ、NASAへ資料として送る準備を、あと記者発表の手配も」
研究員たち「はい!」
○記者会見場(昼)
取材陣が集まった場内。
会見席に高平らが並び説明をしている。
高平「映像を見ながら説明をしましょう」
スクリーンにCG映像が映し出される。
彗星群の映像。
高平「遙か2千光年の彼方で発見されたのが、この巨大彗星群です」
記者から質問が上がる。
記者「彗星の数は、いくらぐらいだと推定していますか?」
高平「約2億から3億と考えています」
映像が、彗星群から、徐々に彗星が減っていく様子を描く。
高平「このように彗星群から、徐々に彗星が脱落した結果、アリソン彗星という一つの彗星が我々の住む太陽系に近づいてきてる状態です」
映像が太陽系に一つの彗星が近づいてる様子を描く。
高平「軌道上では太陽へ衝突する可能性も考えられる」
○総合病院・外観(昼)
○同・診察室内(昼)
孝義と歩美が医者に頭を下げている。
孝義「ありがとうございました!」
医者「いやぁ、本当に良かったですね」
医者の後ろのモニターには精子を顕微鏡で観察した映像が流れている。
医者「精子の動きも、これだけ活発ですし、要はタイミングの問題だkでしたから」
歩美「ありがとうございます」
医者「ホッとしちゃいけませんよ。これからが親としてスタートなんですから」
看護婦がドアを開け、孝義と歩美に話しかける。
看護婦「吉野ご夫婦、産婦人科の準備できたようです、移動して下さい」
孝義「子供、諦めなくて良かったです」
孝義が医者と握手をする。
○スタジオ(昼)
テレビ番組を収録しているスタジオ。
アナウンサーと高平がカメラの前で話をしている。
二人の後ろのモニターには太陽にぶつかって消滅するアリソン彗星の様子が映されている。
アナウンサー「高平所長の推測では、今回の太陽の異常膨張は、アリソン彗星の衝突が影響しているのではないかということですか」
高平「そうです、太陽と彗星が交わることで何らかの作用が起きていると思います」
アナウンサー「その作用は最終的に?」
高平「太陽系が、今までとは全く異なる天体へと変化する可能性があります」
○顕微鏡映像
卵子に精子が到着する映像。
○郊外の町並み(昼)
孝義と歩美が嬉しそうに歩いている。
二人を照らす太陽。
○天体映像
太陽に彗星が到着する。
○顕微鏡映像
卵子が細胞分裂して成長する。
○天体映像
太陽系の映像。
太陽が分裂を始め、太陽系が全く別の形へと変貌する。
○天体映像
銀貨系の映像。
変貌する銀河系、画面全体に広がる光。
○光の中
光に覆われた画面。
赤ん坊の泣き声。
ゆっくりと周囲の状況が分かってくる。
○産婦人科・分娩室
光が落ち着くと、ここは産婦人科の分娩室。
赤ちゃんの泣き声が聞こえている。
分娩室でシーツをかけられている母親の姿を、足元からゆっくりとカメラが映していく。
最後に顔が映る。
母親は爬虫類型の人間の顔をした、人類とは違う生物であることが分かる。