ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

真剣勝負

○プロレス団体・オフィス内(昼)

大会ポスターが貼られたオフィス内。

数名のスタッフが手を休めてジッとしている。

ドアが開き、外回りのスタッフAが戻ってくる。

スタッフA「後楽園、売れてますよ。追加の立ち見出しましょう!」

他のスタッフたちが無言のままスタッフAの方を顔を向ける。

スタッフA「え?」

他のスタッフたちが無言のまま社長室のドアの方に顔を向ける。

 

○同・社長室内(昼)

社長机の椅子に座った神崎誠一(43歳)が葉巻の煙を吐く。

社長机の前はテーブルを挟んでソファが対に置かれており、一方のソファに光山健二(25歳)が座っている。

神崎「そんなことをして、何の意味がある?」

光山「自分が、いや自分たちのプロレスが真剣勝負だと示すには、これしかないと思うんです」

神崎「真剣・・・」

光山「そうです真剣勝負、最強のスポーツを信じて、神崎さんの元で練習してきたんじゃないですか」

神崎は葉巻を消して立ち上がる。

神崎「お前のプロレスは真剣じゃないのか」

神崎が光山の向かいのソファに腰を下ろす。

光山「勝ち負けが決まった試合が真剣勝負なんですか?」

神崎が「ふっ」と鼻で笑う。

光山「応援してくれるファンを裏切ってもいいんですか、ファンの声援に応えたいんです、嘘をつきたくないんです」

神崎「プロレスは真剣勝負だ、俺は信じてる」

光山「なら、次のケリーとの試合はケツ決め無しの勝負をやってもいいんですね」

神崎「ファンを真剣に楽しませる勝負、それが俺たちのリングの真剣勝負だ。お前のいう真剣勝負で会場を沸かせることはできるのか?どんな技が出せる、試合は何分持つ?」

光山が頭を下げる。

光山「お願いします、やらせて下さい」

光山が顔を上げ、神崎の目を見る。

神崎「真剣勝負を仕掛けると、次の試合の相手がいなくなる、誰も怪我をしたくないからな。もし組まれたって、相手の腰がひけたショッパい試合にしかならない。ファンが望んでるのは、そんなお前か?」

光山「ファンなら、わかってくれると思います」

神崎「しかも、今度は逆に、腕に覚えのあるレスラーから真剣勝負を仕掛けられる側になる、怪我の連続だぞ」

光山「構いません、自分に真剣勝負を」

神崎が光山の言葉を遮る。

神崎「許さん」

光山「どうしてですか」

神崎「俺はリングで最高のプロレスを見せたいんだ、選手同士の信頼がなければ試合なんてできないだろ

。どうして社長の俺が、信頼を壊すようなことを許すと思う」

光山「社長、俺、いや自分」

神崎「出てけ!バカ野郎」

 

○同・オフィス内(昼)

社長室から、もの凄い剣幕の光山が出てくる。

光山の目には涙が浮かんでいる。

光山がオフィスを後にする。

呆気にとられるスタッフたち。

 

後楽園ホール・場内(夜)

満員の観客席、会場が沸いている。

 

○同・選手花道の脇(夜)

選手誘導の前座選手たちが場内を見ている。

リングアナのコールが聞こえる。

リングアナの声「オリンピック銅メダリスト、狂乱の喧嘩柔道・ケリー・ワトソーン」

会場の声援が聞こえる。

試合用のリングパンツとガウンを着た神崎が現れる。

前座レスラーたち「押忍!」

前座レスラーA「社長、試合まで、まだ2試合ありますけど」

神崎「いいんだよ」

リングアナの声「闘志継承、レインボー・シューター・光山健一」

会場の声援が聞こえる。

奥の方から、他のベテラン選手たちも現れる。

神崎は花道から顔を覗かせ、リングの様子を見ている。

ゴングの音「カーン」