日本のインテリジェンス
○施設・室内(夜)
モニター、スピーカー、パソコンなどのハイテク機材が並ぶ施設の内部。
施設の中には白人、黒人、日系人ら10名ほどのスタッフが機材に向かい合って仕事をしている。
ドアが開く。
スーツ姿の白人男性・スミス(40歳)が中に入ってくる。
スミスが日系人スタッフ・アライ(35歳)に話しかける。(以下、英語の会話に日本語字幕)
スミス「アライ、来てくれ」
アライ「はい」
スミスとアライが部屋の外に出ていく。
○施設・廊下(夜)
廊下は広く、施設自体は大きな建物であることがわかる。
スミスとアライが立ち話をしている。
スミス「ワシントンから連絡があったよ、リーダーの君からスタッフに本国へ戻る準備をするよう伝えてもらえるかな」
アライ「どうしました?」
スミス「ここは閉鎖だ。傍受の必要がないと判断された」
アライ「TPP、憲法問題、要人の通信を傍受すべき案件は続くと思うのですが」
スミス「しかし、この国のトップたちが通信する内容がくだらなすぎる。傍受に値しないというのがワシントンの見解だ、現に昨日だって…」
アライ「TPPの部門会議が終わった後の電話が夫人へ晩ご飯の確認でしたからね」
スミス「全く、あのアベという男は大事な会議の途中でも、おかまいなしに夫人に電話をかけて、くだらない話をする、今日は何時に帰るとか、親戚がどうしたとか」
アライ「私の祖父が、日本の現状を知れば、さぞかし嘆き悲しむことでしょう」
○首相官邸・外観(朝)
外でSPたちが立っている。
○首相官邸・玄関(朝)
アベ首相(62歳)が靴を履いている。
夫人(57歳)が首相を見送る。
首相が背広のポケットからメモを取りだし、夫人に渡す。
首相「じゃ、行ってくるよ」
夫人「いってらっしゃい」
○首相官邸・リビング(朝)
夫人がメモを読んでいる。
メモには文字が書き込まれている。
アベ首相の声で、メモに書かれた文言が読まれていく。
アベ首相の声「TPPの米問題に関する検討会の後に電話を入れる。電話で晩ご飯の内容を聞いてきたら、検討会で可決の方向で話が決着した時だ。メニューを聞いた後、美味しそうだと返答したら完全自由化、帰宅が遅くなると返答したら制限付きの自由化。電話の後は、いつもの方法で関係各位に情報を伝えて欲しい」
メモに目を通した後、夫人はライターでメモに火をつけ、灰皿に入れる。
灰皿の中でメモが燃える。