ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

気味が悪い話

○大型病院・外観(昼)

数棟の建物からなる病院。

 

○同・遺体安置所(昼)

ステンレス製の器具が並ぶ白く無機質な室内。

ストレッチャーの上に白布をかけられた遺体が横たわっている。

顔の部分の白布がめくられ、黒髪の初老男性の顔が露わになる。

石垣誠(34歳)が花沢健二(67歳)に声をかける。

石垣「お兄さんの一郎さんで間違いないでしょうか?」

花沢「違う、この人は兄貴じゃない」

丸田俊夫(48歳)が花沢に話しかける。

丸田「証明をするものをお持ちいただくようお願いしてましたg」

花沢がポケットから財布を取りだし、財布に挟んでいた写真を手にとって、丸田、石垣に見せる。

石垣「これは?」

花沢「前の年に親戚で集まった時の写真です」

丸田が写真を手に取る。

数枚の写真。

花沢の隣には禿頭の老人男性が写っている。

丸田「この中に一郎さんが?」

花沢「私の隣に写ってる男性が兄貴です。(遺体を見て)兄貴は、こんな男じゃない」

丸田と石垣が目を合わせて、軽くうなづく。

丸田「花沢さん、お時間いただいて、すみませんでした。何らかの確認ミスかもしれません」

花沢「でも兄貴の名前で保険証を持っとったんでしょう?この間まで別の場所で生きとったと聞いて、どういうことかと親戚も首をかしげとったのに、今度は別人やったって言われても」

石垣「あらためて、役所にも確認してみます。津波で記録ごと流された地区では、一郎さんと同姓同名の方を間違えて登録していることも考えられるますし」

花沢「気味悪い、そんな話ってありますかね?」

丸田「もし、そうだったら警察から訂正するよう役所には伝えておきますんで」

石垣が手にしていた写真を花沢に見せる。

石垣「こちらの写真、預かってもいいですか?」

花沢「お願いします、刑事さん」

 

○同・駐車場(昼)

駐車している車の運転席に石垣、助手席に丸田が乗り込む。

石垣「どうします、署に戻ります?それとも」

丸田「いや、役所へ行こう」

 

○双馬市市役所・外観(昼)

 

○双馬市市役所・事務室(昼)

テーブルを挟んで丸田、石垣と職員(46歳)が座っている。

職員が花沢の写真を見ている。

職員「本当に、この人が花沢さんですか?」

石垣「違いますか?」

職員「髪の毛がふさふさの、もっと若々しい感じの」

丸田「記憶に自信は?」

職員「もちろん、だって、4、5日前も手続きに来てますから」

丸田「何の手続きですか?」

職員「花沢さんのところ、農業の人手が欲しいっていって、中国から養子取ってるんですよ」

石垣「養子?」

職員「ええ、確か今まで花沢さんが3人くらいかな、息子さんも5人くらいは養子をもらってるはずです」

石垣「わざわざ養子にする必要があるのかな?」

職員「家族として迎え入れて、面倒を見るんだって、張り切って」

丸田「息子っていうのは」

職員「花沢さんところは、津波に流されて、花沢さんと息子夫婦が助かってるんですよ」

丸田「ここに来る前に親戚に聞いたら、生きてること知らなかったみたいだけど」

職員「えっ、そうですか?確か津波から2週間くらいしてからかなぁ、家族3人で生存確認に来てましたよ、私が担当したから覚えてます」

石垣「その時の本人確認は?」

職員「花沢さんと息子さんが保険証を持ってて、お互いが間違いありませんといってますから、なんか気味が悪い話ですね」

丸田と石垣が顔を合わせる。

丸田「後は察の方で調べてみますので、このことは内密にお願いします」

職員「ええ」

 

○車中(夕方)

走行中の車中。

石垣が車を運転し、助手席に丸田が座っている。

丸田「保険証を持ってる遺体を見つけて成りすましてんだな」

石垣「免許証と違って写真がありませんからね。どうします、これ?他の課に渡しますか、ウチでやりますか?」

丸田「わからん、ひとまず戻って整理しよう」

 

○目崎警察署・外観(夜)

 

○同・廊下(夜)

丸田と石垣が歩いている。

課長(46歳)が二人に声をかける。

課長「丸田、石垣、会議室で呼んでるぞ」

丸田「何ですか?」

 

○同・会議室内(夜)

丸田と石垣が席に座る。

二人の向かいには志村公彦(37歳)が座っている。

志村「警察庁の志村です」

丸田「目崎警察署、捜査4課の丸田です」

石垣「同じく石垣です」

志村「遺体確認に行ったのは二人?」

丸田「花沢一郎の?」

志村「どうだった?」

丸田「ヤマですか?」

志村「警察庁が仕切る」

丸田「色んな組織が複雑に絡んでそうなので、どこから手をつければいいものかと悩んでいたところですよ」

志村「地元の警察署でお願いしたいことがある」

丸田「なんですか?」

志村「花沢の親族に一人、身よりのない老人がいる。2週間、保護して欲しい」

丸田「保護?」

志村「このヤマは2週間で片づける」

石垣「片づける?」

志村「ああ」

 

○車内(夜)

走行中の車内。

石垣が運転し、助手席には丸田。

丸田「なりすましだな、家族ごと」石垣「そこを使って養子縁組のビジネスを」

丸田「要は国籍の売買だ」

石垣「身よりのない親族がいれば、そこも乗っ取ってなりすますわけですね」

丸田「にしても、気になるな」

石垣「犯人組織ですか?」

丸田「いや、さっきの志村って警察庁の担当、2週間で片づけるって、どういうことだろ?」

石垣「逮捕?」

丸田「いや、国内だけじゃなく海外にも組織がいるはず、捕まえようがない」

石垣「まさか・・・ねぇ」

丸田「気味の悪い話だな、まったく」