ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

どんぐり戦争

都内(昼)

高層ビルの建ち並ぶ都市部。

上空に巨大なUFOが浮かんでいる。

人々の姿はない。

 

○大宮・市内(昼)

遙か遠くにUFOが見える。

自衛隊のスタッフが双眼鏡を手にUFOを見ている。

自衛隊の後ろにはテレビ・レポーターがカメラに向かって中継を行っている。

巨大UFOから小さな光の固まりが次々と飛び出てくるのが見える。

自衛隊員たちが双眼鏡を覗き込む。

隊員A「小型のUFOか?」

光の固まりは地表や建物の近くで停止している。

隊員B「街路樹を吸い込んだ」

隊員C「こっちの奴は車だ」

隊員A「吐き出してるのは煙か?」

隊員B「吸い込んだモノを中で粉砕してるんじゃないですか?」

隊員C「UFOたちがビルを囲んで壁を吸い込んでる、壊れるぞ」

倒壊するビル、その周りを飛ぶ小さな光の固まりたち。

隊員A「本部に連絡、相手方の目的は友好的接触にあらず、繰り返す、友好的接触にあらず」

 

○下水道・内部(夜)

暗闇の中、ところどころで懐中電灯の光がついている。

下水道の中に大勢の人間が隠れている。息を潜める人々、咳込む老人、泣いている子供。

山本洋子(31歳)が山本美由紀(4歳)の手を握っている。

洋子「大丈夫だからね、UFOさんが向こうに行ったら、外に出て、おじいちゃんのところに行こうね」

美由紀「ほんと?」

美由紀が上着のポケットからどんぐりを取り出す。

美由紀「どんぐり取りに行ける?」

洋子「どうしたの、それ?」

美由紀「おじいちゃんと一緒に取ったの」

洋子「うん、行けるよ」

マンホールの方から「ガタン」という音がする。

A「きゃー」

B「来たー」

騒然とする下水道内。

マンホールの上から光が差し込む。

マンホール付近の人々からマンホール上に向かって吸い上げられていく。

人々は壁や人にしがみつき、必死に抵抗するが力尽きた者から吸い上げられる。

パイプ管にしがみつく洋子と美由紀もマンホール下まで引き込まれていく。

宙に浮き始めた美由紀の体を洋子が必死に抱え込む。

洋子「美由紀!」

閉じていた美由紀の掌が開き、どんぐりがUFOに吸い込まれる。

差し込んでいた光が突然薄くなる。

宙に浮いていた美由紀の体が地上に落ちてくる。

洋子が美由紀を抱きしめる。

光が消え、真っ暗になった下水道にい洋子の声。

洋子「美由紀!」

 

○町(夜)

電灯の光のない真っ暗な町並み。

人々は建物の外に出て、空を見上げている。

小型UFOが上空に現れる。

UFOが町の上空に映像を投影する。

映像には吸い込まれまいと必死に耐える洋子と美由紀の姿、美由紀の手からこぼれ落ち、船内に吸い込まれたどんぐりがアップで静止画となる。

UFOから音声が流れる。

UFO「我々は、この物質を求めている。この時の物質と同じ成分構成の物質であること、それが命との交換条件だ。別の成分の物質であった場合、敵対行為とみなし、命の保証はない」

住民A「関西じゃ、尼崎の町が一瞬でなくなったらしいぜ」

UFO「時間は、明日の、この時間まで」

UFOが去っていく。

逃げ出す者たち、家に戻る者たち、山へ向かう者たち、町は騒然となる。

 

○栗里村(昼)

のどかな田園風景。

 

○同・小西家外観(昼)

古びた農家。

 

○同・居間(昼)

小西明代(42歳)が洋子と話をしている。

明代「そうなんだ。こっちは田舎だから、UFOなんて来やしないし、突然、電気も電話も止まって、戦争でも起きたんじゃないかって」

洋子「戦争でも起きてくれた方が、まだ良かったかもしれないよ」

明代「秋本さんトコの息子が3日間かけて自転車で逃げてきて、ようやく事情がわかって」

 

○同・縁側(昼)

西公平(75歳)と美由紀が座ってる。

公平は遠くを見ている。

美由紀「じいちゃん」

公平「んー」

 

○同・居間(昼)

洋子「父さんの具合は?」

明代「あれから、少しずつ進んじゃってね、たまに子供の頃に戻ってる時があるのよ」

洋子「トイレは?」

明代「オシメ履かせてる、介護の」

洋子「ありがとうね、アキ姉ちゃん」

明代「仕方ないしね」

洋子「じゃ、父さんに聞くだけ無駄かなぁ」

明代「なにが?」

ガラガラと玄関が開く音。

明代が玄関の方へ顔を向ける。

玄関の方から男性の声。

男性の声「明代いる?」

ふすまが開き、小西貴文(45歳)と妻の小西美佐(42歳)が入ってくる。

貴文「おお!洋子が来てる、助かったよ」

明代「どうしたの、兄さん急に」

貴文「あれ、洋子たちだろ?真奈美ちゃんと」

洋子「うちの娘は美由紀です」

美佐「真奈美は、私の妹の娘よ」

貴文「どこだ?裏山か?」

明代「なに、兄さん?何の話?」

貴文「話してないのか?」

洋子「だって」

明代「なにがあったの、洋子」

貴文「お前、誰にも話してないのか?政府にも?」

美佐「そうよ、だから静かなのよ、バレてたら、世界中の人が殺到してるわ」

明代「教えて、洋子、どうしたの」

 

○小西家・外観(夜)

 

○同・居間(夜)

何本かの蝋燭の火で照らされた室内。

貴文、美佐、洋子が座っている。

貴文が貧乏揺すりをしている。

ふすまが開き、明代が入ってくる。

貴文「どうだ?」

明代「無理よ、話しかけても、ウーとかアーとかしか言わない」

貴文「明日、裏山に連れていけよ。何でもいいから思い出させろ」

明代「兄ちゃんがやれば?何なの、普段は顔も出さないくせに」

美佐「ちょっと」

明代「長男でしょ。なんで私が最後まで家の世話をしなきゃいけないの」

貴文「だってお前が独り身で」

美佐「あなたも余計なこと言わないで」

貴文「(洋子に)まさみ、いや、みさ・・・」

洋子「美由紀」

貴文「そう、美由紀ちゃんは思い出せないのか?」

洋子「ダメ、場所までは覚えてないわ」

貴文「まったく」

窓の外に車のライトの光。

外で車が止まる音。

美佐「車よ」

貴文「UFO?」

美佐「車のエンジンの音」

貴文「バカな、ガソリンがないだろ、スタンドが開いてもの」

玄関のドアが開き、廊下を駆ける音。

ふすまが開くと、懐中電灯をもった小西智之(37歳)が立っている。

智之が貴文たちの顔を照らす。

貴文たちが智之の顔をじっと見る。

洋子「トモ兄ちゃん?」

明代「トモ?」

貴文「智之か?」

智之「久しぶりだねぇ」

明代「あんた、どうしてたの?」

智之「タカ兄、アキ姉、洋子」

智之が美佐を見る。

貴文「(美佐に)初めて?」

美佐「ええ」

貴文「弟の智之、(智之に)嫁の美佐」

智之「そうですか、初めまして」

美佐「ええ、こちらこそ」

貴文「(美佐に)高校卒業してから家を飛び出して、消息不明になった弟」

明代「あんた何年ぶり?」

智之「この家?戻ってきたのは20年ぶりぐらいかな、変わってないね」

洋子「兄ちゃん、何してたのよ?みんな、心配してたんだよ」

智之「たまには電話入れてたぞ」

明代「たまにって?」

智之「母さんが知ってるよ」

洋子「母さん10年前に死んだんだよ」

智之「マジで?」

智之の後ろから、もう一つの懐中電灯の光。

男の声「どうかね、様子は?」

智之の後ろから、上村雅治(55歳)とガードマンが現れる。

智之「すみません、ちょうど家族が集まってたところなんで、話を詰めてたところです」

智之が洋子の顔を照らす。

智之「UFOが空に映した映像の母親です、間違いないでしょう?」

上村「おう」

智之「(上村に)絶対、戻ってきてると思ったんですよ、狙い通りです。(洋子に)洋子、あのどんぐりは、どこで取った、この辺か?」

明代「わからないのよ」

智之「は?」

貴文「父さんが洋子の娘のまな・・・」

美佐「美由紀」

貴文「洋子の子供に取ってあげたらしいんだけど」

智之「父さんは?」

洋子「呆けちゃってるの」

智之「叩き起こしてでも思い出させようぜ」

明代「はぁ?」

智之「アメリカのコールマンラックスって知ってる?」

洋子「アメリカの巨大ファンド、上村さん、そこにパス持ってんの。デカいよ、このヤマ当てると」

上村「この案件なら数億ドルの資金を集められます」

美佐「数億ドルって」

貴文「1億ドルで100億円」

智之「どうよ、兄さん」

貴文「(上村に)家族の時間をもらえませんか?」

上村「わかりました」

智之「すみません、ちょっと車の中で待って下さい」

上村が玄関から出ていく音。

貴文「(智之に)本物なのか?」

智之「今、車で移動できる人って、日本に何人いると思う?」

貴之「これはスゴいぞ」

明代「でも、父さんが思い出さないと話にならないでしょ」

貴文「まず、起きてもらおう」

智之「叩き起こせばショックで思い出すかもしれないし」

洋子「もう止めてよ、こんな世界でお金をいくら持ってても仕方ないじゃない」

智之「なに言ってんだよ、洋子」

貴文「兄弟で分けよう」

明代「父さんの世話をしてきたのは私なんだから」

智之「山分けにしよ、山分け」

寝室の方のふすまが開く。

公平が立っている。公平の後ろに美由紀の姿。

公平「はーぴはーでーうーふー、はーびばーでーうーふー・・・」

公平がハッピーバスデイのメロディで歌詞にならない歌を歌い始める。

貴文「父さん?」

明代「私たちが子供の頃を思い出したのよ」

洋子「誕生日のパーティ?蝋燭の火もついてるしね」

公平は歌を歌いながら、近くの蝋燭を手に持ち踊り始める。

智之「完全にボケたな、こりゃ」

洋子が立ち上がり、公平と美由紀を掴まえる。

洋子「ごめんね、うるさくて。ちょっとの間、奥の部屋でじっとしてて」

洋子が二人を居間から出して、ふすまを閉める。

奥から公平の歌声が聞こえる。

智之「なんか良い手はないの?」

 

○小西家・外観(深夜)

月明かりに照らされた小西家。

玄関前に高級外車が停まっている。

 

○同・居間(深夜)

智之が窓から外を見ている。

智之「上村さん、車の中で寝てる、早く見つけないとヤバいよ」

洋子は横になっている。

洋子「もう疲れちゃった、命があれば、それでいいじゃない」

貴文「バカ言うな」

明代「そうよ、あんたは娘もいるんだから」

美佐が匂いを嗅ぐ。

美佐「匂わない?」

貴文「ん?」

明代「たき火・・・、父さん」

皆が一斉に家の奥へ向かう。

 

○小西家・裏(深夜)

裏山の草木が燃えている。

公平はハッピーバースデイの歌を歌いながら炎の前で踊っている。

美由紀も公平と一緒に踊っている。

洋子が駆け寄り美由紀を抱きしめる。

洋子「美由紀」

明代が公平を掴まえて、炎から離す。

貴文「消防署!」

智之「電話、繋がんねぇよ」

美佐「水、水」

次々と炎が燃え広がる。

貴文「バケツ、智之、バケツに水」

貴文と智之が慌てて家に戻る。

燃え広がる炎を見ながら公平が嬉しそうに歌い踊る。