<ボイスドラマ>世界霊性革命(曳航-3)
○郊外の町・公園
郊外の町にある児童公園。
町村がベンチに座っている。
飲み物を手にした米原が町村の方へ歩いてくる。
米原「水でいいんだろ」
町村「ああ」
米原「ほら」
米原が水を町村に渡す。
町村「ありがとう」
米原「聞かせてもらおうか、天才科学者さん」
町村「なにをだ」
米原「そうだなぁ、じゃぁ」
米原がコーラのキャップを空ける。
米原「何を研究してんの?」
町村「理解できない」
米原「こう見えて、そこそこの学歴だぜ」
町村「実力じゃない」
米原「わかる?」
町村「答えが見える」
米原「そ、答えだけ分かるから、入試はなんとかなったんだけど、入った後つまんなくて中退した」
町村「ふふ」
米原「笑ってんじゃねぇの、教えてくれよ、何を研究してんだよ」
町村「物理学、量子に関する研究をしていた」
米原「量子?なにソレ、マグロの?」
町村「この世の仕組みを知るための科学だ、物理学」
米原「なに、それ?それで何がわかんの?」
町村「何がって?」
米原「俺たちの力のことを調べてたんだろ」
町村「ああ」
米原「分かったのかよ、この力が何なのか」
町村「ああ、分かったよ」
米原「説明してくれ、俺にもわかるように」
町村「今は分からない、それが分かった」
米原「はぁ?」
町村「だから、今の自分を受け止めるしかない」
米原「説教が聞きたいんじゃない、わかりやすい答えが聞きたいんだよ」
町村「それは君次第だ」
米原「なんだって?」
町村「君の世界を作るのは君の意識だ、量子理論ではそう定義される」
米原「それが天才が出した結論?」
町村「君が答えだと思えば、それが君の答えなんだ」
米原「そんな子供に説教するみたいなことはいいから、科学者らしい答えが聞きたいっての」
町村「もう話した、私の世界では、それが答えだ」
米原「全然わかんねぇよ」
町村「この世界の仕組みを科学的に分析した」
米原「だから、その結果は教えてくれって」
町村「世界のありとあらゆるもの、今までの科学では関連性がないと思われていたことですら、全ては一つなんだ」
米原「わかんねぇっつの、ホントに」
町村「君の名前は?」
米原「俺?米原だけど」
町村「今、私の世界には米原君が存在している」
米原「ああ」
町村「もし、君が話しかけても来ず、名前も名乗らない限り、私の世界には米原君は存在しない」
米原「そんなことないだろ、知らなくたって存在してるよ」
町村「人それぞれの意識が一つの世界だとしよう。もし、私が君のことを知らなければ、私の世界に君は存在はしない、そうじゃないのか」
米原「あぁ、まぁ、そうだけど」
町村「宇宙の果ては?物質の最小単位は?時間とは何か?それが不思議に思うから、疑問が生まれる、疑問が生まれるから、答えを求める。そもそも不思議に気づかなければ、答えも誤りも生まれない」
米原「そう言われりゃ、そうかもね」
町村「つまり世界の規則は、この世界を観察する者の意識が作っている」
米原「いや、でも、あんたに会う前から俺はいたぜ」
町村「君を含めて、君を知る人たちの世界では君は存在していた」
米原「いや、あんたの世界にだっていたはずだから」
町村「それを確かめるための理論を研究していた」
米原「確かめるもなにも、いたよ」
町村「今の科学では説明できない」
米原「まてよ、まて、あんたの言ってること、どっかに穴がある、考えてやる」
町村「過去へ行けると思うか?」
米原「なに、ヒント?」
町村「過去に行けなければ、過去を認識できない」
米原「そうだよ、そう、だったら過去は存在しないってことだな」
町村「存在しない世界の中に私たちは生まれてくるのか、ありえない話だと思わないか」
米原「そうだよ、ありえないよ。だから意識しなくても世界は存在してるんだよ」
町村「違う、発想を変えるんだ」
米原「は?」
町村「過去から未来まで永遠に存在する一つの意識がある」
米原「どういうこと?」
町村「我々は、その意識の一部だとしたら」
米原「我々?」
町村「そう、私の意識も、君の意識も、同じ意識の一部にしか過ぎない」
米原「でも、別々の人間じゃねぇか」
町村「肉体は別かもしれない、だが宿っている意識は違う」
米原「なんだかバカにされてるみたいだな」
町村「意識の秘密を解き明かすには、まだ我々の心の準備が足りない」
米原「どうもインチキくせぇ話だな」
町村「でも、君なら、今の説明でイメージできたはずだ」
米原「ん?」
町村「なぜ、君がギャンブルに勝てるのか」
米原が「チッ」と舌打ちをする。
町村「なぜ、未来が見えるのか」
(続く)