<ボイスドラマ>世界霊性革命(曳航-1)
◯郊外の町・路上
路上を歩く町村の後を米原が追いかける。
米原「なぁ、あんた」
町村が無視をする。
米原「天才科学者」
無視する町村の肩を米原が叩く。
米原「あんたに言ってんだよ」
町村は振り返らずに答える。
町村「なんだ?」
米原「なんだじゃねぇよ、聞こえてんだろ」
町村「どうした?」
米原「何者なの?」
町村「なにが」
米原「あんたみたいな光、初めて見たよ」
町村「そうか」
米原「なにモンだって聞いてんだよ」
町村「人間だ」
米原「でも普通じゃねぇよな」
町村「普通さ」
米原「俺、わかるんだって、あんただって、わかってるんだろ、俺のこと」
町村「それが」
米原「それがじゃなくてさ、もっとあるだろ、かける言葉が」
町村「元気だな」
米原「こんなとこをプラプラ歩いてていいのかよ。せっかくの力、世の中に向けて、なんかしないの」
町村が立ち止まる。
米原「お」
町村「君の言っていることは正しい」
米原「だろ、だったらさ、一緒に競馬行かない?あんたならJRAぶっ潰せるぜ」
町村「ギャンブルに使ってるのか、君は」
米原「ああ、カジノで」
町村「いつから?」
米原「もう4、5年になるね」
町村「力は衰えないのか?」
米原「いまんとこ大丈夫」
町村「それに罪悪感や虚しさは?」
米原「カジノなんて、どうせインチキなんだから。勝ちまくるってことは、世直しだよ、世直し」
町村「力があるうちに貯金でもしておくんだな」
米原「残念ながら、貯金はないね、全部使ってる」
町村「遊びで?」
米原「そう、暇つぶし、暇つぶしのお遊び」
町村「本当か?」
米原「街歩いてて、面白そうな奴に遊ぼうぜって声をかけてさ、ぷあーっと使ってんだよ」
町村「面白そうな奴」
米原「そう、分かるだろ、気になる奴、あんたも見えるはずだ」
町村「そういうことか。それは君にとって遊びなんだ」
米原「そう遊び、楽しいもんだ」
町村「いい心がけだ、だったら力は衰えない」
米原「ま、俺のことはいいから、あんたは、なにモンだって聞いてんだよ」
町村「研究者だ」
米原「神主に聞いたよ、科学者なんだろ。でも俺が聞きたいのは、頭で考える学問の話じゃない」
町村「それは、もう感じてるんだろ」
米原「そう、心で感じる方の話、ただ、あんた普通じゃねぇよな」
町村「普通ってなんだ」
米原「そう言われても、まぁ、今までそんな光り方をしてる奴を見たことないっていうかさ」
町村「光り方なんて、人それぞれだ。私だって、君と同じ光り方をしている人を見たことはないよ」
無言。
町村「行ってもいいかな」
米原「なぁ」
町村「なんだ」
米原「聞かせてくれないか、あんたみたいな人が何を感じて生きてきたか」
町村「聞いてどうする?」
米原「参考にしたい」
町村「なるかな」
米原「なるさ」
町村「あそこに公園がある、そこのベンチに腰掛けて話をしよう」
米原「なにか飲む?コンビニで買ってくるけど」
町村「水でいい」
米原「公園で待っててくれ」
(続く)