<ボイスドラマ>世界霊性革命(放逐-7)
○アパート室内
遠山とひかりがいる。
ひかりは台所で片付けをしている。
遠山「来いよ、藤田さんに電話する」
ひかりが遠山の近くに寄ってくる。
遠山が携帯の音量を上げる。
遠山「聞こえる?」
ひかり「はい、大丈夫です」
遠山「聞いてろ」
遠山が電話をかける。
着信音の後、藤田が出る。
遠山「もしもし、藤田さんですか」
藤田「遠山?」
遠山「今、大丈夫ですか」
藤田「ああ」
遠山「張込みの件、本庁に伝えてくれました?」
藤田「ああ、署に来たから直接伝えといた」
遠山「来た?」
藤田「ああ、本庁の担当、植地さんて女刑事が、わざわざウチに来てな」
遠山「電話で済む話なのに」
藤田「俺もそう言ったんだがな。直接、聞きたいって。あ、お前にも会いたいって言ってたぞ」
遠山「一緒に張込みすると?」
藤田「そうそう、その件、その日のうちに返事あってさ、準備つくって」
遠山「本庁で、そんなに早く、捜査申請、通りますかね」
藤田「それは良くわからんが、とにかく連絡あったよ」
遠山「いつですか?」
藤田「3日後、13日、メモいいか?」
遠山「はい、大丈夫です」
藤田「13日、15時、駅の南口バスターミナルの3番、グレーのスーツに黒縁メガネをかけて立ってるそうだ、身長は170、痩せ型、黒いショートヘア、キリッとした顔立ちのべっぴんさんだ、見りゃ分かるよ」
遠山「向こうの連絡先わかります?」
藤田「携帯は、ええと********」
遠山「了解です」
藤田「お前のこと興味津々だったぞ」
遠山「また余計なこと言ったんでしょ」
藤田「埼玉県警のゴッドハンドだって」
遠山「やめてくださいよ」
藤田「本庁の刑事に一発かましてやれ」
遠山「朝っぱらから元気っすねぇ、昨日の夜、ガサだったんでしょ」
藤田「ああ、そういや昨日のカジノの手入れで、面白い話聞いたぞ」
遠山「なんですか」
藤田「お前みたいな奴が裏カジノ荒らしてるって」
遠山「俺みたいな奴?」
藤田「カジノの連中が恐れてる死神って奴がいて、イカサマやろうが、なにをやろうが関係無しに勝ちまくってるそうだ」
遠山「捕まえたんですか?」
藤田「いや、踏み込んだカジノの売上げが少ないから、何故だって問い詰めたら、そいつが根こそぎ持ってった後だって」
遠山「へぇ、昨日、川口にいたんですか」
藤田「踏み込む直前まで、カジノにいたらしいんだが、取り逃がしたよ」
遠山「そりゃ、そうですよ、ガサが入る予感がしたんですよ」
藤田「そうかな。じゃ報告書まとめなきゃいかないから、いいか」
遠山「ええ、じゃ、また連絡します」
藤田「頼むよ」
電話が切れる。
遠山「最後の聞いた?」
ひかり「はい」
遠山「世界は狭いな」
ひかり「きっと駅で会った人ですよね」
遠山「どうする?川口まで行って足取り探れば、また会えるぜ」
ひかり「会って、どうするんです?」
遠山「ま、そういや、そうだな。縁がありゃ、ほっといても、また会えるか」
ひかり「そんなことよりも、張り込み、すぐじゃないですか」
遠山「怪しいなぁ、これ。正式な手続き踏んでねぇだろ」
ひかり「申請が通るの早過ぎますか?」
遠山「本当に、こんなに早く捜査申請が通るんなら、お前は重要参考人だぜ」
ひかり「そういうこと、ありえますかね」
遠山「念力で、そんな扱いになるわけねぇよ」
ひかり「だとしたら」
遠山「正式な捜査じゃないな」
ひかり「国本さん?」
遠山「絡んでくるよ。向こうが超能力使うなら、どういう手が考えられる?」
ひかり「国本さん自身に能力はありませんから、スタッフを使うでしょう」
遠山「調教してる奴ら?」
ひかり「おそらく」
遠山「どうなの、そいつら?」
ひかり「どうなのって?」
遠山「向こうが束でかかってきて、俺たちに勝ち目はあるのかよ」
ひかり「一つ一つの力は弱くとも、全員の心が一つになれば、力は全然変わってきますから」
遠山「油断すんなってこと」
ひかり「ええ」
遠山「そんな暗い顔すんなよ。逆に、こっちも心を一つにすれば、力が強くなるってことだろ」
ひかり「はい」
遠山「100パーセント信頼してるから」
ひかり「はい」
遠山「頼むぜ」
ひかり「はい」
(続く)