ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>世界霊性革命(放逐-5)

○街中
高橋が歩いている。
高橋「あれ?」
みこと「来ると思った」
高橋「予感?」
みこと「うん」
高橋「上から指示が出てさ」
みこと「教祖が倒れたから?」
高橋「動きを見てくれって。昨日は施設にいた?」
みこと「ううん、学校。説法の途中で倒れたんだってね、花形さん」
高橋「目の前で神様が倒れて、信者は慌てただろうな。親は何か言ってた?」
みこと「なんか大変みたい。そういうの知りたいんだったら、連絡くれれば良かったのに」
高橋「仕事を持ち込むのは悪いかなと思ってさ」
みこと「今日だって、連絡くれないし」
高橋「学校だろ、ダメだよ、サボっちゃ」
みこと「いいの」
高橋「まさか、俺に会うために休んだんじゃないよね」
みこと「そうだとしたら」
高橋「頼む、学校行って」
みこと「違うの、お母さんが心配なの」
高橋「どうした?」
みこと「昨日から、お母さんが教団に泊まり込みなんだけど」
高橋「疲れが溜まってる?」
みこと「そういう心配じゃなくて」
高橋「なに?」
みこと「なんとなく胸騒ぎがする、お母さんのことで」
高橋「そういうこともあるんだ」
みこと「なにが?」
高橋「漠然とした予感」
みこと「だって人間だもん、全部分かったら神様じゃん」
高橋「案外、不便だよな」
みこと「どういうこと?」
高橋「嫌なことが起きるのは分かるのに、それが何だか分からない。気苦労だけが増えていきそうで…」
少しの間。
みこと「ありがとね、私の心配」
少しの間。
高橋「なにかあったら、心に話しかけて来いよ」
みこと「わたしの力、信じてる?」
高橋「ああ」
みこと「じゃ届くわね」
高橋「そっちは大丈夫?」
みこと「うん」
高橋「何があっても慌てるな、心が乱れると気持ちが飛ばない、だろ?」
みこと「大丈夫、信じる人がいれば、心は乱れない」
少しの間。
高橋「ならいいけど」
遠くから施設の係員が聞こえてくる。
係員「本日のお祈り会、たいへん混雑しております。信者の皆さんは、こちらにお並びください」
高橋「すごい人だな」
みこと「回復のお祈りするんでしょ」
高橋「祈りは届くの?」
みこと「ダメ、寝たきりね」
高橋「ふふ、そうなんだ」
みこと「ふふ」
雑踏の音が大きくなる。
みこと「先に入って、お母さんのところに行くね」
高橋「また電話するよ」
みこと「うん」
高橋「気をつけて」
みこと「じゃね」
 
○施設・ホール内
信者で埋め尽くされている。
壇上に立つ教祖代行が話しかけている。
代行「説法の途中で倒れてしまわれたことも、教祖様から私達に対するメッセージに違いありません。新たなる試練を与えてくださった教祖様に祈りの力で、こた、こ、こ」
代行が震える。
代行「う、う」
代行が倒れる。
教団スタッフが脇から代行に駆け寄る。
スタッフ「武田代行、武田さん」
ざわつく信者達。
スタッフ「誰か、どなたか、医者を、救急車」
スタッフがマイク越しに大声を出す。
スタッフ「会場に、お医者さまは。救急車の手配を。皆さん、慌てないでください、武田さんは大丈夫です、疲れが出ているだけです」
スタッフがマイクで呼びかけ続けている。
高橋の心にみことの声が届く。
みこと(声)「いる」
高橋(声)「え?」
みこと(声)「力を使ってる人がいる」
高橋(声)「何だって?」
みこと(声)「一人じゃない、二人?三人?」
高橋(声)「どうした?」
みこと(声)「教祖も、さっきの人も、この人たちの力でやられたんだ」
高橋(声)「おい、俺の声は分かるか?」
スタッフ「皆さん、安心してく、くだ」
スタッフが倒れる。
信者1「キャー」
信者2「なんだ、これは!」
信者3「呪いだ」
ざわめく信者たち。
みこと(声)「ダメ、行っちゃダメ」
高橋(声)「どうした」
みこと(声)「お母さん、やめて、止まって」
みことの母が脇から壇上に駆け寄る。
みことの母「みなさん、お静かに!神は私たちに試練を与えてくださっています」
高橋(声)「俺の声、届いてる?」
みこと(声)「助けなきゃ」
高橋(声)「どうした、おい」
みこと(声)「わたしを探しに来たんだ」
高橋(声)「誰が?」
みこと(声)「力を持ってる人たち」
高橋(声)「止まってろ、動くな」
みこと(声)「四、五、全部で五人」
高橋(声)「俺が、先にそいつらを探す」
みこと(声)「もう遅い、お母さんを助けなきゃ」
高橋(声)「どうするつもりだ」
みこと(声)「助けてね」
高橋(声)「やめろ!」
みこと(声)「信じてる」
高橋「おい!」
高橋の周囲の信者たちのざわめきが止まる。
高橋「すみません!道あけてもらえますか」
高橋が人込みを掻き分けて出口へ急ぐ。
信者たちの「おい」「もう」などの声。
(続く)