ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>世界霊性革命(放逐-4)

○郊外アパート・室内
郊外の町のアパート。
引っ越して来た遠山とヒカリが住んでいる。
遠山が電話をしている。
ヒカリは遠山を見ている。
遠山「声をかけてもらったのに、すみません、藤田さん。ええ、そうなんです、しばらくコッチの案件につきっきりになりそうなんで、そのアパート引き払ったんですよ…、これが終われば、また戻りますから…いや…藤田さんから話をもらう前から、ずっと追ってた件で、ようやく浮気相手の尻尾が…でも辞めるわけには…離婚が成立すれば半年分のギャラがでるんですよ…そうです、結構な額の。絶対に約束します、こっちが片付いたら合流します、すみません、本当に…ええ、連絡します…無理しないで下さいよ、藤田さんも…はい、それじゃ」
遠山が電話を切る。
ヒカリ「藤田さん、まだ僕のこと?」
遠山「ああ、捜査継続中だって、本庁から刑事がハッパかけに来たってよ」
ヒカリ「本庁?国本さん?」
遠山「違う。植地って女の刑事、知ってる?」
ヒカリ「いえ…、知りません。僕らの部署のスタッフじゃありません」
遠山「お前の捜査の指示出したの、そいつらしいよ」
ヒカリ「どちらの所属か分かりますか?」
遠山「1課、事件か事故の両方で調べてる死体があって、お前、その参考人だってよ」
ヒカリ「そうですか」
遠山「前に言ってた、監禁されてた時のことだろ。他にある?心当たり」
ヒカリ「ありません」
少しの間、沈黙。
遠山「どう思う?植地っての」
ヒカリ「国本さんとの関係ですか?」
遠山「ああ」
ヒカリ「なんとも言えませんけど」
遠山「繋がってるとしたら、お前が監禁されたの、国本が指示して、そいつが動いってことだろ」
ヒカリ「もしそうなら、その人は能力者でしょうね」
遠山「お前の居場所を見つけたのは、そいつのリーディングか」
ヒカリ「藤田さんは、その植地という刑事に、どこまで話したんでしょうか?」
遠山「詳しい情報は渡してないと思うよ」
ヒカリ「どうして、そう思います?」
遠山「俺のこと話してたら、こっちに植地ってのから連絡あるだろ」
ヒカリ「そうすると、次、どうなると思います」
遠山「念力で起こした事件、科学的に実証できんの?」
ヒカリ「無理です」
遠山「なら、植地は調書を上げらんねぇから、正式な捜査に持ち込めない」
ヒカリ「国本さんと関係しているとすれば、非公式に捜査は続けるかもしれません」
遠山「能力者だとしてさ、どれくらい力あると思うの?」
ヒカリ「僕が川口近辺にいたことまでは見えてますから、大まかなイメージは掴めると思います」
遠山「でも、最後の詰めを地元に振ってるってことは、まだ細かくは見えてない」
ヒカリ「監禁した時も、最後は情報屋を使ったんだと思います」
遠山「俺の足元にも及ばんね」
ヒカリ「本当です、遠山さん程の能力は、そうそういません」
遠山「おだてたって、何もでねぇよ」
ヒカリ「もう、そんな」
遠山「なんだよ、その表情」
ヒカリ「はい」
遠山「でも、そんな奴なら、しばらくは見つかんねぇな」
ヒカリ「植地さんにキャッチされる前に、こちらから国本さんに…」
少し間が空く。
遠山「ん、ちょっと待った」
ヒカリ「どうしました?」
少し間が空く。
遠山「そいつ、使えねぇかな?」
ヒカリ「植地さん?」
遠山「国本にも繋がってるんだろ」
ヒカリ「確定ではありませんけど」
遠山「面白い使い道あるんじゃねぇの」
 
○アパート・棟内
築数十年は経っている木造アパート。
国本がギシギシと音を立てながら廊下を歩いている。
国本がドアをノックする。
ドアの向こうから町村の声がする。
町村「どうぞ」
国本がドアを開ける。
国本「久しぶりだな」
町村が部屋の奥に寝転んでいる。
町村「ああ」
国本「物騒だな、鍵くらいかけろよ」
町村「ああ」
国本が部屋に上がる。
国本「前の部屋も殺風景だったけど、今度の部屋はもっと何もない」
町村「ああ」
国本「泥棒が来ても取るものがないって」
町村「まぁな」
国本「何年ぶりかな?」
町村「さぁ」
国本「探したよ。研究室の近くの部屋、いつ引っ越した」
町村「さぁ」
国本「大宮の実家には戻らないのか」
町村「さぁ」
国本「電話したよ、心配してたぞ、おやじさん」
町村「そうか」
国本「座ってもいいか?」
町村「座布団もない、すまんな」
国本「体起こせよ、寝転がったままって」
町村「そうか?」
国本「まぁいい、そのままで、お前らしい」
町村「そうか」
国本が辺りを見回す。
国本「本はどうした?物理学の。処分したのか?」
町村「ああ」
国本「論文は?前の時に、かなり書き溜めてた」
町村「必要ない」
国本「バカ、お前から研究を取ったら何が残る」
町村「さぁ」
国本「戻れよ、研究に、寝っ転がってる場合じゃないぞ、町村」
町村「ん?」
国本「歴史が変わる研究だろ」
町村「それが?」
国本「もっと本気で自分の価値を考えろ、才能を無駄にするな」
町村「考えてる」
国本「それが、これか!」
町村「そうだ」
間が空く。
国本「情けない…。今、仕事は?」
町村「ん?」
国本「どうやってメシ食ってる?」
町村「ああ」
国本「働いてんだろ?」
町村「ビルの管理」
国本「ふざけるな」
町村「なにがだ」
国本「お前の実績なら、教授だって、研究所だって、いくらでも声はかかるはずだ」
町村「いいんだ」
国本「俺は、まだ頑張ってるぞ」
町村「ああ」
国本「警察庁で能力者を開発してる」
町村「ああ」
国本「ピーケーの能力者が育ってきてる」
町村「そうか」
国本「おい、生きる気力はあるのか?」
町村「ああ」
国本「どこへ行った、昔のお前は」
町村「ここにいる」
国本「どうした、あの時の情熱は?量子力学で、超自然現象、超心理学、全ての事象が証明できるって」
町村「ああ」
国本「量子力学の統一理論が完成しそうだって」
町村「ああ」
国本「俺の知ってる天才科学者は、どこに行った?」
町村「ここにいる」
国本「情けなくないのか?」
町村「ん?」
国本「いいのか?それで」
町村「ああ」
少しの間が空く。
国本「仕事をしてると、たまに、お前のことを思いだす」
町村「そうか」
国本「お前なら、もっとうまくできるだろうなって」
町村「そうか」
国本「最後に会ったときの話、覚えてるか」
町村「ああ」
国本「可能か、不可能か、で朝まで盛り上がったよな」
町村「ああ」
国本「俺は、自分の手で確かめたいと思う」
町村「そうか」
国本「能力者による世界革命」
町村「ふ」
国本「あの後、俺は考え続けてた」
町村「そうか」
国本「お前はどうだ」
町村「ああ」
国本「答えは出たか?」
町村「ああ」
国本「実現できると思うか、それともできないと思う、どっちだ」
町村「ああ」
国本「お前の考えを聞きたい、教えて欲しい」
町村「お前は、どう思う?」
国本「俺は信じてる、能力者が世界を変えるべきだと」
町村「じゃ、それだな」
国本「ふふふ(苦笑い)、抜け殻か」
町村「そうか」
国本「実はな、俺も同じだ、抜け殻だ」
町村「そうだな」
国本「能力を失った能力者だ」
町村「ああ」
国本「でも、情熱は失ってない」
町村「そうか」
少しの間。
国本「地獄だろ」
町村「ん?」
国本「神に一番近い男だと信じてた奴が、こんなところでボンヤリと死を待っている」
町村「ふふ」
国本「地獄だよ」
町村「ふふふ」
国本「科学者じゃなけりゃ、せめて能力者として力を発揮してくれれば」
町村「ふ」
国本「お前の図抜けた力を、公の場で披露しさえすれば、世界は変わってたかもしれない」
町村「そうか」
国本「お前に追いつこうとして足掻いてた自分が情けなくなるよ」
町村「ふふ」
国本が立ち上がる。
国本「また来る」
町村「ああ」
国本「その時には、世界は変わってるかもしれん、俺のやり方で」
町村「そうか」
国本がドアの方に向かう。
国本「鍵、かけとけよ」
町村「ああ」
(続く)