<ボイスドラマ>世界霊性革命(邂逅-6)
◯遠山の住むアパート・室内
ひかりと遠山がコーヒーを飲んでいる」
遠山「モーニングコーヒーなんて、久々だな」
ひかり「これからは、朝からビールなんて辞めて下さい、僕が食事を作りますから」
遠山「女房気取りかよ、そんなんで泊めたんじゃねぇからな、俺は」
ひかり「夕方、買い物に行きます、近くにスーパーありますか?」
遠山「ちっ(苦笑)…あ、そうだ、聞きたかったことがある」
ひかり「何ですか?」
遠山「ホントにここが見つからないと思うか?」
ひかり「今、国本さんの部署にいるのはピーケーの能力者です。リーディングに長けている人はいないはずです」
遠山「そこそこの力があれば、お前のアパートとか、橋の下に行けば、ここまでイメージ浮かぶと思うんだよな」
ひかり「そんなに見えるものなんですか?」
遠山「俺だったら、辿り着く自信はあるね」
ひかりが黙る。
遠山「どうした?」
ひかり「前に見つかった時」
遠山「昨日、言ってた話。それ正攻法の捜査なんだろ」
ひかり「はい。でも、1点、ひっかかる点があって」
遠山「何が?」
ひかり「監禁してた人に、誰が指示を出したのかを聞いたんです」
遠山「なんて?」
ひかり「女性だと」
遠山「女?」
ひかり「国本さんの部下で女性は僕だけです」
遠山「ふーん、その女が、お前の知らないリーディングの能力者ってことも…、おい、どうした」
ひかりが静かに泣いている。
遠山「泣くなよ」
ひかり「そこから…逃げようと…僕は」
遠山「思い出すな、それ以上」
ひかり「僕の力のせいで」
遠山「ほら、こっち来いよ」
遠山がひかりを抱きよせる。
遠山「起きたことは仕方がない、この後のことを考えろ」
ひかり「はい」
遠山「にしても、その女の話は、なんか嫌な予感がするな。(少しの間がある)ここから離れようか」
○食堂・店内
地方の大衆食堂。
ひかりと遠山が食事をしている(会話の途中に食事音)。
遠山「疲れた、案外、ピンと来る町はないもんだな」
ひかり「かなり、田舎の方まで来てますけどね」
遠山「どう思う、ここは」
遠山がみそ汁をすする。
ひかり「見て来た中では、一番良い気が流れている町だと思います」
遠山「この辺りで手をうつか」
ひかり「どこか物件、見つかりますかね」
遠山「探しゃ見つかるよ」
ひかり「都会と違って生活するのがたいへんそうです」
遠山「車、欲しいな」
ひかり「どうします?」
遠山「車は使うと足がつく。不便だけど、我慢しよう、何とかなる」
ひかり「楽天家ですよね、うらやましいです」
遠山「しばらくしたら、また引越すんだ、ちょっとの辛抱だ」
ひかり「お金の方は、大丈夫ですか?」
遠山「仕事あるかな、この辺りで」
ひかり「今、二人合わせて600万あります」
遠山「お前の金だろ、自分の為に取っとけよ、592万」
ひかり「いや、それじゃちょっと…」
遠山「エーティーエムに念力送って、なんとかなんないか?」
ひかり「そんなことに力は使いません」
遠山「そういうことに力使えば、遊んで暮らせるのに」
ひかり「ほんとに、もう」
遠山「ふふふ」
遠山がお茶を飲む。
遠山「うん、田舎はいいな、空気が澄んでて」
ひかり「人も少ないですし、雑念も漂ってませんね」
遠山「勘が冴える」
ひかり「はい」
遠山「お前、どう思う?」
ひかり「店員さんじゃありませんよね」
遠山「ああ、違う」
ひかり「お客さん?」
遠山「お前の後ろの席から感じてんだけど」
ひかり「僕もそうです、背中から感じてます。見えます?」
遠山「おっさんと若いのが一緒にメシ食ってる」
ひかり「どっちだと思います?」
遠山「若い方」
ひかり「胸騒ぎはしますか?」
遠山「しないね」
ひかり「良かった」
遠山「でも、気になる」
ひかり「どういう見た目ですか?」
遠山「堅気じゃないな」
ひかり「挙動は」
遠山「普通」
ひかり「自覚のない能力者かもしれません、コントロールできずに力が漏れてる」
遠山「そこそこ強力だよな?」
ひかり「ええ、かなり心の強い人でしょうね」
遠山「どうしてわかる?」
ひかり「自覚のないまま力を持つと、力に心が潰されることが多いんです。実際、精神病の2割が能力者だという説を唱える学者もいます」
遠山「あいつは耐えてるから、ハートが強い?」
ひかり「ええ」
少しの間が空く。
遠山「ってことは、俺も、そうなんだ?」
ひかり「そうです、正しい心、良心があったから、力に惑わされずに済んだんです」
遠山「そんなエラいもんじゃねぇけどな」
ひかり「どうします?僕の後ろの人」
遠山「何かの縁だ、店、出たら話しかけてみようぜ」
(続く)