ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>世界霊性革命(邂逅-4)

○大衆食堂・店内
テーブルに米原と浦辺が座り、食事をしている。
別のテーブルに座る客に料理を出している音がする。
米原「結局、食ってんじゃん」
浦辺が食べている。
米原「この店、昔のまんま?」
浦辺が食べている。
米原「家族で来た想い出とかは」
浦辺「いや」
米原「記憶なくしたか?」
米原と浦辺が食べる。
浦辺「必勝法は?」
米原「なんだよ、急に」
浦辺「いつも勝ってるのか?」
米原「バクチのこと?」
浦辺「ああ」
米原「お告げ」
浦辺「お告げ?」
米原「神様の」
浦辺「神?」
米原「耳元で囁いてくれるんだよ、バクチの神様が」
浦辺「バカか」
米原「そのバカに奢ってもらってんだろ」
浦辺「どうして?」
米原「ん?」
浦辺「どうして俺に金を?」
米原「理由?」
浦辺「ああ」
浦辺「それも、お告げ」
米原「バカ」
浦辺「家族は?」
米原「俺は独身」
浦辺「親は?」
米原「最後に会ったのいつだっけかなぁ、十年以上前か」
浦辺「飛び出したのか」
米原「高校の頃に」
浦辺「どうして」
米原「小さい頃から、気味の悪い奴だって毛嫌いされててさ。いづらくてさ」
浦辺「だろうな」
米原「なんだよ、「だろうな」って」
浦辺「マトモな奴なら、こんなことしないよ」
米原「誰の金で飲み食いしてると思ってんだ、おっさん」
浦辺「ふふふ」
米原「ふふ」
少しの間。
米原「生きるために色々やったよ」
浦辺「ヤクザ?」
米原「半分足を突っ込んでたこともある、今はカタギだ」
浦辺「仕事は?」
米原「年に何度か裏カジノに行って、後は遊んで暮らす」
浦辺「家は?」
米原「ねぇよ、ホテルを転々とな。金ならあるし、暇を潰そうと思えば、乞食のおっさんに遊んでもらってんの」
浦辺「ふふ、貯金は?」
米原「なくなりゃ、カジノに行けばいい」
浦辺「全部、勝つのか?」
米原「神様ついてるからな」
浦辺「お前みたいのに来られちゃ、カジノも災難だ」
米原「カジノだってイカサマやってんだぜ、たまには灸を据えないと」
浦辺「イカサマ?」
米原「バカ勝ちしたとき、賞金を減らしてくれって、支配人の泣きが入る。イカサマやってる証拠」
浦辺「へぇ」
米原「カジノ側が絶対に勝つと分かってるから金を用意してないんだよ」
浦辺「どうして、お前は、そこで勝てるんだ」
米原「だから何度言えばいいの、神様がついてんだよ」
浦辺「ふざけた奴だ」
米原「ふふ、食ったか?」
浦辺「ああ」
 
○■■駅・駅前
行き交う人もいない駅前。
米原と浦辺が歩いている。
浦辺「お、いちおう名所案内はあるんだな」
浦辺と米原が立ち止まって案内を見る。
米原「せっかくここまで来て、親に会う気はないのか」
浦辺が無言。
米原がジャケットの胸元から札束を取り出して、浦辺の胸元のポケットに入れる。
米原「ほら、約束した100万」
浦辺「どうした」
米原「ここでお別れだ、東京に戻るなら先に帰ってくれ」
浦辺「なぜ」
米原「二度と来ないような場所だからさ、ブラッと名所でも回って帰ろうかと思って」
浦辺が無言。
米原「オススメの名所とかある?つーか、どれもイマイチだな」
浦辺が黙っている。
米原「教えてくれよ、地元なんだろ」
少し間が空く。
浦辺「すみません」
米原「ん?」
浦辺「すみませんでした」
米原「なにが?」
浦辺「この町に親はいません」
米原「ああそう」
浦辺「ここは故郷ではありません、ウソをついていました」
米原「ホントの家に帰ったら」
浦辺「は?」
米原「家族は、もう許してるって、ていうか、すげぇ心配してるよ、ずっと」
浦辺「え…」
米原「そもそも、その子供、あんたの孫?ぜんぜん怒ってないぜ」
浦辺「孫がなにを」
米原「本当に悲しいのは、あんたじゃねぇよ、その子だよ。自分のせいで家族がバラバラになってよ」
浦辺が涙を流し始める。
米原「おっさん、孫に感謝しろ。昨日の夜、俺があんたを誘ったのは、その子が一生懸命頼んできたからだ」
浦辺「ゆうが…」
米原「あの公園を歩いてる時にな」
浦辺「ゆうが、わたしを」
米原「ああ。おじいちゃんを家に戻して欲しいって。それがあんたを選んだ理由だ」
浦辺が鼻水をすする。(以後、涙声)
浦辺「あんた、自分が死なせたと思ってるんだろ」
浦辺「あの時、目を離さなければ、池の方には…」
米原「そんなこと全然恨んでないぜ、孫は」
浦辺「でも、私が、ゆうを守ってれば」
浦辺の泣き方が強くなる。
米原「今でも魂は、あんたのそばにいるよ」
浦辺が泣く。
米原「心を込めて祈ってやれよ」
浦辺「いつも祈ってます」
米原「おっさん一人で祈ってどうすんの、残った家族が心を一つにして祈ってやんねぇと浮かばれねぇんだよ」
浦辺「でも、家族は、私を、私のことを」
米原「抱え込まなくてもいいんじゃねぇのかなぁ」
浦辺「やり直せるんですか、妻と、息子と、わたしは」
米原「それは知らねぇけど、あんた次第だろ。やる気になりゃ、誰だって、やり直せる」
浦辺「あの子は、どう言ってますか、それを望んでいるんですか」
米原「当たり前じゃねぇか、頼まれなきゃ、俺もこんなことしてねぇよ」
浦辺「ゆう、ゆう…」
浦辺がポケットから札束を取り出して、米原の胸元に戻そうとする。
浦辺「お金、お返します」
米原「いらねぇの?」
浦辺「ずっと残してきた金があります、家に帰るには、それで充分です」
米原「孫の墓に手合わそうと思って貯めてたんだろ」
浦辺が泣く。
米原「ホントは家に帰りたかったんじゃねぇか」
浦辺の涙が多くなる。
米原「その子は知ってた、あんたの気持ちを。いつか叶えてあげようと、ずっと待ってたんだ」
浦辺「それ、それを、あなたにお願いして」
米原がもう一度、札束を浦辺のポケットに入れる。
米原「取っとけよ、おっさん」
浦辺が泣いている。
米原「元々クソみたいな金だ、人の為に使わないとバチが当たる」
浦辺「(泣きながら)あ、あ、ありが・・・」
米原「俺に礼を言って、どうすんだよ」
浦辺が泣いている。
米原「家に帰って、孫に言うんだよ」
(続く)