<ボイスドラマ>世界霊性革命(邂逅-1)
朝、沸騰を知らせるケトルの音「ピー」。
あわてて火を消す、ドタバタする音。
遠山「ん、ん~?」
ひかり「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
遠山が万年床から、ゆっくり起き上がる。
遠山「なんだよ」
ひかり「遠山さんが起きたら、コーヒー飲んでもらおうと思って」
遠山「コーヒー?」
ひかり「冷蔵庫は、缶ビールしか入ってませんし、お茶葉もなくて。でもインスタントコーヒーがあったので」
遠山「俺は目覚めのビールだよ」
ひかり「体に良くないですよ」
遠山「いいから、ビール、取って」
ひかり「コーヒーにしましょう」
遠山「いらねぇよ」
ひかり「そうですか…」
遠山「あ、待て、コーヒー飲めばいいんだな」
ひかり「そうですか」
遠山「念力使うんじゃねぇぞ」
ひかり「使いませんよ、いいんですか、コーヒーで」
遠山「歯向かうと痛い目あいそうだもんな」
ひかりがコーヒーカップを遠山に手渡す。
ひかり「熱いですよ」
遠山「ってかさ、寝る前、言ったよな」
ひかり「はぃ」
遠山「朝起きたら、警察に連れてくって」
ひかり「はい」
遠山「俺が起きる前に姿消してるだろ、普通」
ひかり「でも」
遠山「なんで、逃げねぇんだよ」
ひかり「すみません」
遠山「気使ってやったのに」
ひかり「ありがとうございます」
遠山「警察にマークされてんだぞ」
ひかり「でも、あの」
遠山「待て、悪かった、言い過ぎた」
ひかり「そんな」
遠山「念力は出すなよ、お嬢ちゃん」
ひかり「一緒にいちゃダメですか」
遠山「え、ダメですかって…」
ひかり「掃除もしますし、食事も作ります」
遠山「まいったね」
沈黙。
ひかり「あの、昨日から、ずっと感じてるんですけど」
遠山「んん」
ひかり「遠山さんなら、僕のことを」
遠山「それ以上は言うな、聞きたくない」
ひかり「遠山さんも感じてるんですよね」
遠山「やめろ」
沈黙。
遠山「あ〜あ、そういうこと?」
ひかり「遠山さんは、僕のことを」
遠山「助けてくれるって?」
ひかり「はい」
沈黙。
遠山「お前の資料を見て感じた胸騒ぎって、これか」
ひかり「そうだと思います」
遠山「神様も変な仕掛けをするもんだね」
沈黙。
ひかり「一緒に逃げてもらえますか?」
沈黙。
遠山「嫌だね」
ひかり「そんな」
遠山「逃げるのは、嫌だ?」
ひかり「でも、それじゃ」
遠山「向こうに一泡吹かせてやる」
ひかり「それは…僕が嫌です」
遠山「どうして」
ひかり「能力者同士が傷つけ合う、そんなことはしたくありません」
遠山「傷つけるんじゃない、正しい力の使い方を教えてやるんだ」
ひかり「ん~ん、まぁ、それだったら」
遠山「お互い潰し合いすると思った?」
ひかり「ええ」
遠山「女はケンカのやり方、知らねぇな」
ひかり「なら、どうすれば」
遠山「直接、アタマを叩くんだよ」
ひかり「国本さんですか?」
遠山「面白いだろ、その方が」
ひかり「でも、そんなこと」
遠山「勘違いすんなよ、痛い目に合わせるんじゃない」
ひかり「は、はい」
遠山「少年ジャンプのマンガじゃないんだからさ」
ひかり「じゃ、どうすれば」
遠山「暴走止めさしゃいいんだろ、心を入れ替えてもらうんだ、国本とかいう奴に」
ひかり「そんなこと」
遠山「やれるよ。できると思えば」
沈黙。
ひかり「は、はい」
遠山「ワクワクしてきた。俺も、訓練すれば、もっと力が強くなんの?」
ひかり「方法はありますけど、あの、その、僕は」
遠山「ん?」
ひかり「ここにいても、いいんですか?」
遠山「いないと始まんないだろ」
ひかり「はい」
(続く)