ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>世界霊性革命(愛子-2)

 
○大学・教授室
ドアをノックする音。
橋爪「はい、どうぞ」
竹之内「先ほどはありがとうございました」
竹之内が入ってくる。
橋爪「あのぉ、いくら私が特殊な研究をしているといっても、ヒドくありませんか?」
竹之内「ヒドいというのは?」
橋爪「あ、お座りください」
竹之内「は、はい」
竹之内が橋爪の前の席に座る。
橋爪「確かに、私が専攻している分野は、世間からは非科学的だとか、オカルトだとか誹謗中傷を受けやすい特殊な学問です、でも、先ほどのような」
竹之内「ちょっと待ってください、教授、私どもはそんな」
橋爪「目的は何なのでしょうか、そこまでして私を貶めようとする意図は」
竹之内「教授、気を落ち着けて、私の説明を…」
橋爪「熱心な依頼でしたので、時間を作りましたが、もし、このような行為を他の研究者にも続けられるのであれば、あなた方の身元を詳しく調べて、心理学学会に注意を促すように、私から…」
竹之内「先ほどのやりとりは、全て真実なんです」
橋爪「どこが真実なんですか。ついたての向こうで、あなたが指示を出していたんでしょう」
竹之内「冷静になってください、依頼をお願いした際にも、何度もお伝えしております。何が起きても、冷静な判断をお願いしますと」
橋爪が荒い鼻息を止めて、大きく深呼吸する。
橋爪「では、もう一度、ことの経緯を確認させてください」
竹之内「お願いします」
橋爪「まず、この依頼はあなたからのモノですよね」
竹之内「はい、そうです、どうしても先生にカウンセリングしていただきたい方がいらっしゃいましたので」
橋爪「そのときの条件は、あなた方の素性を一切明らかにしないこと」
竹之内「はい、その通りです」
橋爪「たいへん熱心に依頼をされるので、私も引き受けることにしました」
竹之内「感謝しております」
橋爪「その結果が、先ほどのカウンセリングです」
竹之内「まだ信じていただけてないようですが、あの方にとって、ああいうことは、ごく普通の現象なのです」
橋爪「本当に、パーティションの向こうで特別なことはしていなかったんでしょうか」
竹之内「はい、誓います」
橋爪「事前に、私の情報も伝えていない」
竹之内「一切、伝えておりません」
橋爪が唸るような深呼吸をする。
竹之内「先生は、どうご判断されますか?」
少し間が空く。
橋爪「なにが目的です?」
竹之内「なにが、というのは、どういう?」
橋爪「私は研究者です、純粋に彼女が起こした現象だけを検証するのが役目だと思っています」
竹之内「私どもも、それを望んでおります。なにを心配なさってらっしゃるのです?」
橋爪「私の検証を営利目的に利用するつもりはありませんか?」
竹之内「どうして、そのような」
橋爪「疑ってしまって申し訳ないのですが、詐欺まがいの新興宗教が、公的機関の名前を利用するのは、よくあることです」
竹之内「私どもは、検証いただいた結果を公表する気はございません、むしろ秘匿したいのです」
橋爪「本当ですか?先日も、多額の研究費を提供する代わりに、教祖の力を検証して欲しいという依頼がありました」
竹之内「引き受けたのですか?」
橋爪「まさか。教団の広告塔にはなりたくありませんからね」
竹之内「そうだと思います」
橋爪「ただでさえ興味半分で見られている研究です、自ら信用を失うようなことはしたくありません」
竹之内「教授が、そういう方だと伺っています。だから私どもは教授に願いに来たのです」
橋爪「しかし、それにしても」
竹之内「決して騙したり、利用するつもりはございません」
橋爪が溜息をつく。
竹之内「私どもを信頼していただけないでしょうか?」
橋爪「もう一度、確認をしてもいいですか」
竹之内「はい」
橋爪「仮に、私が検証を続けるとしましょう」
竹之内「はい」
橋爪「その結果を、どうされるおつもりですか」
竹之内「あのお方がご自身の御心を自ら鎮めること、そのヒントになるお力添えができればと考えております」
橋爪「つまり、自分自身の能力をコントロールできるように、ということですね」
竹之内「はい、そういうことです」
橋爪が深く息を吐く。
橋爪「私は研究者です、警察ではないので、あなた方が何者なのかには興味はありません」
竹之内「ご理解いただいて光栄です」
橋爪「興味があるのは目の前で起きた現象を検証することです」
竹之内「そうしますと、先ほど起きた現象というのは…」
橋爪「もし、竹之内さんの仰ったことが全て事実であれば」
竹之内「はい」
橋爪「研究対象として充分、いや充分すぎる素質の持ち主だと思います」
竹之内「ということは」

橋爪「超能力者、霊能力者、そう呼ばれる特殊能力者である可能性が高いということです」

(続く)