ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>世界霊性革命(ひかり-3)

○橋のたもと
電話のバイブ音。
藤田「よし、三村の合図、準備完了、行こう」
藤田と遠山が橋に向かって走り、金網の足場に到着。足場をゆっくり歩き始める。
遠山「藤田さんと現場って久々ですね」
藤田「思い出すな、お前が新人の頃」
遠山「あ、奴、気づきましたよ」
藤田「逃げようとしねぇな」
遠山「こっちは2人、もし逃げるなら向こうでしょう」
藤田「三村はラグビー部の出身だ、突破できんよ」
三村「(大声で)動くんじゃない」
藤田「(大声で)警察だ」
遠山「(小声で)俺は無職ですけど」
ひかり、遠山、藤田、三村の距離が徐々に詰められる。
ひかり「さっきの警官、すみませんでした」
藤田「心配するな、ただのアクシデントだ」
ひかり「アクシデント?」
藤田「警官の怠慢だ」
ひかり「あの、ごめんなさい。止まってください、所属はどこですか?」
藤田「所属?」
ひかり「どこの部ですか?」
藤田「埼玉県警、川口署だ」
ひかり「埼玉県警?警察庁じゃないんですか」
藤田「本庁の依頼だが、あいにく俺たちは県警なんだよ」
藤田と三村がひかりに近づく。
ひかり「だったら、ごめんなさい、僕を逃がしてください」
藤田「本庁じゃなきゃ捕まりたくないってか?どんな理屈だよ」
ひかり「そういうことじゃないんです」
三村「じゃ、どういうことだ?」
ひかり「もう逃げられないと思ったので」
藤田「川口署だって逃がしゃしないよ」
ひかり「そういう意味じゃないんです。お願いです、警察官を傷つけたくありません、逃がしてください?」
三村「あきらめろ、署まで連行する」
藤田「う、う、む、う、む・・・」
藤田が胸を押さえて、ひざまづく。
遠山「どうしました?藤田さん」
ひかり「ごめんなさい」
遠山「おい、待て」
ひかりが三村の方に向かって走り出す。
三村「来い」
ひかりが三村を突き飛ばす。
三村「おうぁ」
ひかり「ごめんなさい」
三村は這いつくばったままで、立ち上がれない。
三村「イタ、タタタァー」
遠山「(大声で)どうしました、三村さん」
三村「(大声で)あたたた、足があたたた、ビシッて」
藤田「ぜぇ、すまん、胸が、動悸が」
遠山「追います」
遠山がひかりを追う。
 
○駐車場
人気のない河川敷の駐車場。走ってきた遠山が立ち止まる。
遠山が「はぁはぁ」と息を切らしながら、自動販売機にお金を入れ、ジュースを買う。
遠山がジュースをごくごく飲む。
遠山「ん、隠れてねぇで、出てこいよ」
暗い陰からひかりが出てくる。
ひかり「本庁の方ですよね?」
遠山「わ!ホントに出てきた、マジかよ」
ひかり「所属はどちらですか?」
遠山「俺?俺は、まぁ、その」
ひかり「国本さんは、僕ら以外にも別部隊をもっているんですね?」
遠山「誰?国本って」
ひかり「どういう指示が出てるんですか?」
遠山「いや、あのぉ、俺、もう警察じゃないんだよね」
ひかり「は?」
遠山「元刑事、今はフリーター、ただの無職」
ひかり「じっとしててください」
ひかりが目をつむり、深呼吸する。
遠山「おい、なんだ?」
ひかりが遠山を見つめる。
ひかり「ウソはついてないみたいですけど…」
遠山「刑事だったら、さっさと捕まえてる」
ひかり「なら、どうして僕を追ってるんですか」
遠山「世話になった先輩から人捜し頼まれてさ」
ひかり「一緒にいた人?」
遠山「刑事は辞めたけど、つきあいはあるから、世話にもなったし」
ひかり「なぜ、あなたに依頼をしたんです?」
港「暇そうだから?無職の後輩を不憫に思ったとか」
ひかり「信頼されてる」
遠山「わかる?」
ひかり「優秀な刑事だったんでしょ」
遠山「そうなんだよ、俺、結構、事件解決しててさ」
ひかり「だと思います」
遠山「現場じゃゴッドハンドって呼ばれて、ま、上層部からは変人扱いだったけど」
ひかり「理解者は少ないと思います」
遠山「なに、分かった風なこと言って。そういう自分はどうなの?捜索対象になるって何やった人?」
ひかり「なにもやってません」
遠山「なにもやってない奴を警察庁は捜さねぇよ。優しそうな顔して、やってんだろ、ヤバイこと」
ひかり「ヤバイこと?」
遠山「先輩はただの人捜しと思ってたけど、俺は違うと思うんだよなぁ」
ひかり「感じましたか?」
港「ああ感じたね、刑事の勘、いや、元刑事の勘」
ひかり「僕、刑事なんです。元ではなく現役です」
遠山「内部の不祥事なら内務調査室だろ、本庁から所轄に依頼しない、それぐらいの規則は知ってるよ」
ひかり「特殊な部署ですから」
遠山「特殊?」
ひかり「部署の存在は一部の人しか知りません。刑事ではなく、一般人扱いになります」
遠山「変な小説の読み過ぎ」
ひかり「でも事実なんです」
遠山「年に何人かは、三億人事件の犯人が自首してくるけど、あんたもソレ系?」
ひかり「信じてください」
遠山「まぁ、いいや、つきあってやる、作り話、続けて」
ひかり「作り話じゃありません」
遠山「で、どんな悪事やったっての?」
ひかり「だから、なにもしていないんです」
遠山「何かないと追われはしねぇだろ、なにがあったんだよ」
ひかり「所属している部の問題です」
遠山「部?」
ひかり「そうです、部署そのものが不祥事なんです」
遠山「そんな展開にいく?その不祥事って」
ひかり「進むべき道を誤っています。だから僕は、それを正そうとした」
遠山「そしたら逆に警察内部から追われるようになった、自分は正義の主人公…って映画の見過ぎだな」
ひかり「ふざけてません、真剣なんです」
遠山「はいはい。内部告発者が逆に潰される話って、今どき、素人の小説コンクールでも入選しないと思うよ」
ひかり「本当なんです」
遠山「部の悪事って?裏金?もみ消し?」
ひかり「そういう不祥事なら、しかるべきスジに告発をすればいいでしょう」
遠山「ちょっと冷静になってみよっか、ここに来る前は、どこにいた?」
ひかり「だから警察の」
遠山「なにか施設的なトコじゃない?」
ひかり「施設といえば施設です」
遠山「だろ、朝晩、お薬が出て、騒ぐと電気ショックで」
ひかり「違います!なにを疑ってるんですか」
遠山「だからさ、お前、キチガイだろ、病院から抜け出して来たん、ナポレオンの生まれ変わりとかがいる病院」
ひかり「信じてください」
遠山「俺も暇だけどさ、そういう妄想につきあうほど暇じゃねぇんだよな」
ひかり「どうして僕が逃げきれたと思います?」
遠山「ん?」
ひかり「続けて2度も。見てましたよね」
遠山「悪運が強いんだな」
バチッという音ともに街頭が消える。
遠山「おっ街灯が消えた」
バチッ、バチッという音とともに連続して街頭が消える。
遠山「あら、向こうの方まで消えてくぜ、停電?」
ひかり「停電じゃありません」
遠山「自販機の電気はついてるな」
ひかり「僕がやってるんです」
遠山「へ?」
ひかり「回路をショートさせました」
遠山「あらかじめ仕掛けてた?どうやって?」
ひかり「仕掛けはありません。僕は超能力者なんです」
間が空く。
遠山「待て待て、警察告発モノに超能力ネタが加わんの?妄想盛りすぎだろ」
遠山「信じて下さい、妄想なんかじゃありません」
ひかり「可愛い顔してウソつくのは良くないよ」
ひかり「警察の中に超能力捜査を研究する部署があります」
遠山「重症だよ、警察と病院、連れてくのどっちがいい?」
ひかり「僕は逃げ出したんです、超能力を研究する部署から」
遠山「まず病院かな」
ひかり「そこの自販機を見ててくれますか?」
遠山「これ?」
ひかり「はい、そうです」
遠山が自販機の前に向かう。
ひかり「細工はしてませんよね」
遠山が自販機のボタンを押したり、叩いたりする。
遠山「ただのコーラの自販機だな」
ひかり「いきます」
ひかりが深く息をする。
自販機からドン、ドン、ドンドンドンとドリンクが出てくる。
遠山がひかりに近づく。
遠山「おい、どういうトリック?すげぇじゃん」
ひかり「僕には手を触れずに力を加える能力があります」
遠山「なら、もっと凄いことやってくれよ、自販機ごとブッ壊すとか、コカコーラの自販機からペプシ出すとかさ」
ひかり「そんなことはできません、とても小さな力しかありません」
遠山「じゃ、なんでジャンジャン出てきたわけ」
ひかり「中に入ってるコンピューターの基盤に念を入れました。基盤は数ミクロンの回線の集まりです。それを刺激するくらいなら、僕の力でも充分です」
遠山「今、警察に出頭したら、お前、自販機荒らしの罪が追加されるぞ」
ひかり「あとでお金は置いていきますから」
遠山「礼儀正しいキチガイだね」
ひかり「まだ信じてもらえないんですか、さっきの警官も、僕が筋肉や血管を」
遠山「はいはい、いいからいいから、行こうよ、警察」
ひかり「まいったなぁ」
遠山「そんなこと言うなら、あそこのタワー見える?あの照明、あれを消してくれ。いや、消すだけだと面白くないな、消して、点けてを3回、なら信じてやるよ」
ひかり「本当ですね?」
ひかりが深呼吸をし始める。
遠山「ん?」
ひかりが深呼吸をする。
遠山「お?おお!」
ひかりが深呼吸をする。
遠山「マジで!おい、お前!えぇ!」
遠山がひかりの肩を叩く。
遠山「すげぇな!どうやんの!それ!」
ひかり「科学的な説明はわかりません、イメージすれば実現する、それだけです。信じてもらえますか」
遠山「うーん、なんだろう、腑に落ちねぇな、手を使わずに力が出る念力」
ひかり「ええ」
遠山「でもよ、モノが動かせても、照明も自販機も、どこをいじればいいのか分かんないだろ、コンピューターの回路なんて」
ひかり「イメージすれば、ポイントに作用するんです、理由はわかりません」
遠山「理屈がわかれば、納得してやってもいいけど、使ってる本人も理屈が分かんないんだって…、う〜ん」
ひかり「でも、あなたなら信じてもらえるはずです」
遠山「どうかなぁ、ちょっと…、いや、この目で見たけどさ」
ひかり「あなたも僕みたいな経験をしてきたはずです」
遠山「バカな、念力で電気消したことねぇよ」
ひかり「いえ、そうじゃなくて、自分の力を信じてもらえないかったことです」
遠山「あん?」
ひかり「さっき、いくら捜査に貢献しても変人扱いだったと言ってましたよね」
遠山「ああ、そっちの話」
ひかり「イメージが浮かぶ、それを理屈で説明できなくて歯がゆい思いをしたことは?」
遠山「なにが言いたいの?」
ひかり「あなたも不思議な力を持っています」
遠山「ひょっとして、俺、お前の妄想物語の登場人物になってる?」
ひかり「さっき警察庁の人か何度も確かめましたよね」
遠山「ああ」
ひかり「僕は、あなたを開発チームのスタッフだと勘違いしてました、能力者は空気で分かるんです」
遠山「能力なんてねぇよ、スプーンも曲げたことないのに」
ひかり「さっき、この捜索はなにか感じるって言ってましたよね」
遠山「刑事の勘だよ」
ひかり「違います、特別な力です」
遠山「だったら一緒に警察行こうぜ、勘の持ち主なんてゴロゴロしてる」
ひかり「だから、僕は本当に刑事なんですよ!追われてるんです」
(続く)