ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>世界霊性革命(ひかり-2)

○アパートの室内
遠山の部屋。
遠山が万年床で寝ている。
ドアのチャイムが鳴る「ピンポン」
遠山が布団を押しのける。
遠山「ん~ん〜」
ドアのチャイムが鳴り、ノックする音。
遠山が寝床から起き、ドアへ向かう。
遠山「ふぁぁ~、はい、なんですか」
遠山がドアを開ける。
遠山「ふぁ、藤田さん」
藤田「まだ寝てたのかよ、まったく」
遠山「24時間、常にヒマですよ、無職ですから」
藤田「そう腐るなよ」
遠山「どうぞ、ちょっと散らかってますけど」
藤田が部屋に入ってくる。
藤田「ちょっとじゃねぇよ、ちっとは片付けろ」
遠山「独身男の部屋は、みんなこんなもんでしょ」
遠山が冷蔵庫の飲み物をとっている。
藤田「これじゃ女も連れ込めねぇな」
遠山「汚いのが好きだってのもいますから」
藤田「いるかよ」
遠山「世界に女は30億いるんですから、探せばいますよ」
藤田が座る。
遠山が缶ビールを藤田に差し出す。
遠山「どうぞ」
藤田「バカ、昼間からビールはないよ、こっちは刑事だぞ」
遠山「寝起きのビール、無職の醍醐味」
遠山が缶を開けてビールを飲む。
遠山「くぅ~、うまい!昔、藤田さんと夜勤あけで飲み始めて、タモリの頃にベロベロだったことありましたよねぇ」
藤田「大宮の頃か、昼メシ時のサラリーマンから白い目で見られて」
遠山「あの頃、面白かったなぁ、仕事も、遊びも。ほら、思い出して、一杯」
藤田「やめろって、もう時代が違うんだ。酒の臭いさせて署に戻ってみろ、査定だ、違反だでチクチク言われる」
遠山「つまんない時代になりましたねぇ、やだやだ、そんな警察は」
藤田「もう辞めたんだから、愚痴るなよ」
遠山「へへ、で、今日はなんです?」
藤田「仕事を持って来た、捜査協力だ。ゴッドハンドの腕を借してくれ」
遠山「高くつきますよ、シブチンの県警は払ってくれるんですか」
藤田「心配するな、捜査費用は充分ある」
遠山「浮気調査よりも?」
藤田「お前ほどの奴が浮気の調査で食いつないでるなんて、悲しくなるよ、まったく」
遠山「まぁまぁ。なら話聞きますよ、でかいヤマですか?」
藤田「人捜しだ」
遠山「人捜し?重要案件の参考人ですか?」
藤田「いや、単純に人捜しだ、前科もなければ、なんの容疑もかかってない」
遠山「また冗談を、そんなショボい案件に捜査費つかないでしょ」
藤田「それがついてるんだよ」
遠山「予算表のマルの数、間違えてません?」
藤田「俺も本庁からの捜査指示書を見て、確認した、本当にこの費用かと思って」
遠山「本庁?警察庁から生活安全課に人捜しの依頼?川口の?」
藤田「ああ」
遠山「藤田さん、防犯担当でしょ?」
遠山「普通、本庁案件とは関係ないよな」
遠山「どういうことだろ」
藤田「いわくつきの人捜しかもしれんな、どっかのお偉方の親族とか」
遠山「その辺の背景は?」
藤田「わからん。というか、回ってきた資料には、顔写真と身長と、あとなんだっけかな」
遠山「薄い情報ですね。そもそも所轄内にいるんですか?」
藤田「住民票があるとか、そういうのとは違う。ただ、この辺りに潜伏しているらしいから捜索を頼むと」
遠山「わかった」
藤田「何が?」
遠山「なめられてるんですよ」
藤田「なめられてる?」
遠山「本庁の会議で、背広組が鼻くそでもほじりながら「暇そうな奴らにふっちまえよ、この仕事」みたいな」
藤田「だとしても結構な予算のついてる仕事だ、お前にも金を回せるし、悪い話じゃないだろ」
遠山「まぁ悪い話じゃないですけど」
藤田「やり方はいつもの方法?」
遠山「頭の中でじっくり煮込んでみますよ」
藤田が資料を置く。
藤田「じゃ、これが食材一式」
遠山「こんな少ない材料で、美味しい料理ができますかね」
藤田「お前ならできるだろ、見えてきたら、連絡してくれ」
 
○居酒屋
路地に面した居酒屋、屋外席。遠山と藤田と若手刑事・三村が酒を飲んでいる。遠山は酔っ払っている。
藤田「そうかなぁ?」
遠山「(藤田に)そうだと思うんだけどなぁ…、刑事の勘、感じませんか?(三村に)はい、三村さん、もう一杯、かんぱーい、ぐいっと、ほら」
藤田「三村、口つけるだけにしろ、こっちは仕事中だ」
三村「はぁ、はい」
遠山「大丈夫ですよ、この後の捕り物でひとっ走りすれば、署に帰る頃には抜けてますって」
藤田「(小声)他の客がいる、仕事のことは小声で話せ」
遠山「(声を抑えて)これは、これは失礼しました」
三村「藤田さん、あんまりギラギラしてると、張ってることバレますよ」
遠山「そう、そう、かんぱい、ほら、藤田さん」
藤田「いいよ」
三村「でも、噂どおりですね、遠山さん。ここまで辿り着けるって」
藤田「だろ、ほんとにコイツがやめたのは、県警にとって重大な損失だよ」
遠山「またまた、おだてたって、金は出ませんよ、無職なんですから」
三村「俺もゴッドハンドになれますかね?」
遠山「簡単、簡単、とにかく資料を読んで読んで読みまくればいいの」
藤田「昔っから、そうなんだよなぁ、コイツのやり方は。上から現場回れーってガミガミ言われても、ずーっと資料とにらめっこでさぁ」
遠山「だから出世できなかったんだろうなぁ」
藤田「出世する気もないくせに」
遠山「へへ」
三村「資料読むだけで、分かるんですか」
遠山「最後は運、追いかけてる相手の情報を片っ端から頭に詰め込んで、脳みそをグシャグシャに掻き回していくうちに、イメージが浮かんで来るんだよね」
三村「プロファイラーっていうんでしょ」
遠山「プロファイラーだかプロボーラーだかしらないけど、本人の性格、家族、育った場所、そういうのを頭に詰め込んで、こいつならどうする、どこにいるって煮詰めていけば、なぜか答えが浮かんでくる」
藤田「それが、ほんとにドンピシャなんだぜ、スゴいんだよ」
遠山「シャーロック・ホームズの時代に生まれてばなぁ」
藤田「今は、まず証拠、次に検証、コイツみたいに刑事の勘で捜査する奴が脇においやられて…、すまんな、力になれなくて」
三村「藤田さん、声大きくなってます」
遠山「まぁ、仕事離れて、冷静に考えたら、「この界隈に潜伏していると思われます」、「物的証拠はあるのかね」、「いえ、刑事の勘です」なんてのは、確かに無理ありますよ、非科学的」
藤田「卑屈になるなよ、お前のおかげで解決した捜査もたくさんあるんだから。俺はお前の才能を信じてる、お前がホームズなら、俺はワトソン」
三村「実際、今回も、ここまで来てるんですから、すごいですよ」
遠山「いやいやいや。あ、そう、それで、さっきの話に戻るんだけど」
藤田「なにか怪しいって?」
遠山「ええ」
三村「たまに、こういう捜査協力の依頼はありますけどね」
遠山「これは、本庁から、けっこうな捜査費出てるんですよね」
藤田「あぁ」
遠山「なんか胸騒ぎがするんだよなぁ」
三村「ゴッドハンドの勘ですか」
遠山「そう、勘。あ、来た、あれ、長崎」
藤田「三村、奴の部屋に電気が点いたら、駅前の派出所に応援頼んで」
 
○アパート・玄関
藤田がドアをノックする「コンコン」。
藤田「すみません、下の階の者ですけど」
ドアの向こうからは反応がない。
再びドアをノックする。
藤田「お荷物を預かってますよ」
ドアの向こうで窓が開き、ドサッと人が落ちる音。
藤田「裏に回れ!」
三村「警官が待機してます」
藤田がアパートの廊下を走る。
 
○アパート裏
藤田と三村が走ってくる。
警官1が座り込み、警官2がうずくまっている。
三村「どうした?」
警官1が足を引きずりながら立ち上がる。
警官1「すみません、追いかけようと思ったら、足が、イタタ、スジ違えたみたいで」
三村「そっちは、どうした?」
警官2「ぜぇ、ぜぇ」
警官1「胸が急に苦しくなったと」
藤田「お前ら、不甲斐ねぇなぁ、2人がかりで逃がすなよ」
警官1「すみません、準備はしてたんですが」
三村「どっちに行った?」
警官1「その道を右に」
藤田「行こう」
藤田と三村が走り出す。
 
○繁華街
人通りのある通り。
藤田に向かって三村が走ってくる。
藤田「どうだった?」
三村「さっぱりです」
藤田「駅の反対側もダメだ」
三村「逃げられましたか」
藤田「まさか逃げられるとはな」
三村「そういえば、遠山さんは」
藤田「ほったらかしだな」
藤田が携帯を取り出し、電話をかける。電話が繋がる。
藤田「遠山?」
電話口から遠山が小声で返答する声が漏れる。
遠山「小声でお願いします、今、どこですか?」
藤田が小声で答える。
藤田「駅前の商店街だ」
遠山「奴は、川の方にいます、グランドのある河川敷、橋のところに」
藤田「追いかけたのか?」
遠山「しっかりしてくださいよ、おまわりさん」
藤田「(電話)わかった、見張っててくれ、すぐ行く」
 
○河川敷
橋がかかる大きな川の河川敷。
体を潜めている遠山に、藤田、三村が近づく。
皆が小声で話し始める。
藤田「遠山」
遠山「待ってましたよ」
藤田「ありがとう、助かった」
遠山「派出所勤務、気が緩んでるんじゃないですか」
藤田「まさか2人に悪くなるって」
三村「でも、さすがですね、遠山さん」
遠山「15年も刑事やってりゃ、職業病」
三村「奴はあの橋の辺りですか?」
遠山「橋の下に作業用の足場があるの分かります?人が歩けるくらいの」
藤田「向こうまで繋がってる金網?」
遠山「そうです、ちょうど真ん中辺りで柱に隠れてるところありますよね」
三村「そこに?」
遠山「隠れてます」
藤田「素人だな」
三村「挟みうちすれば片付く」
藤田「よし、三村、向こう岸に回ってくれ」
三村「はい」
遠山「俺は藤田さんの介護」
藤田「もう刑事じゃないんだ、あんまりでしゃばってくれるな、後でガタガタ言われるかもしれん」
遠山「スクープ映像撮っときますよ、携帯のカメラで」
藤田「やめろって」
(続く)