ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>『世界霊性革命』(みこと-2)

○「いのちのみち」教団施設・ホール内
ホールの壇上から、花形が激しい演説を繰り広げている。
花形「われらに降臨すイザナギ、イザナミのカムジャよ、タマけがれし者どもにイカヅチの炎を放たれり!」
数百名の信者たちの拍手。
花形「カミヨのイニシエより、世界を築きし我がミタマたち、この花形の元に集い史、信念の者たちに力を授けよ、今、そのミコトバを心の内に響かせるのだ」
(途中で)信者たちの拍手にかき消される。
高橋が信者たちの集団から、徐々にホールの外へ向かって、後ずさりしている。
信者「どうしました?」
高橋「気に当てられて、気分が」
信者「瞑想ルームで休んでくれば?」
高橋「すみません、少し横になってきます」
花形「藤原、平家、源氏、徳川、日本を治めしチカラのもの、彼らのマツリゴトに力を授けしは、我なり!今、我ら、ヤマトを守りしミタマは、次のマツリゴトの力を「いのちのみち」教団に授ける。ヤマトの国が進めべき道を、今、示すのだ!」
信者たちの歓声。
 
○「いのちのみち」協会施設内・瞑想ルーム近く
人の気配がない場所。
高橋が辺りを見渡して、ポケットのボイスレコーダーを操作し(ピッという音)、レコーダーに小声で話し始める。
高橋「11年6月22日、15時12分、四谷本部ホールにて説法会、教祖出席、信者約320名、男性30歳以下20%、女性30歳以下15%、男性60歳以下20%、女性60歳以下25%、男性60歳以上10%、女性60歳以上10%」
みこと「教祖のお仕事もたいへんよね」
高橋があわててボイスレコーダーの停止ボタンを押し(ピッという音)、振り向く。
みことが立っている。
高橋「びっくりしたぁ」
みこと「なにしてるの?」
高橋「いや、気分が悪くなってさ、休憩しようかと・・・」
みこと「ふ~ん」
高橋「君は何を」
みこと「あの中にいても、つまんないでしょ」
高橋「なに言ってんの、教祖のお言葉を」
みこと「ほんと?あなた、信じてる?」
高橋「当たり前だよ、信じてるに決まってる」
みこと「ふ~ん、でも、もう、あの人、何も見えてないよ」
高橋「え?」
みこと「2年くらい前かなぁ、ギリギリ力があったの。今は、もう全然。今日の予言も適当なこと言ってるだけ」
高橋「やめろよ、他の人に聞かれたら怒られるぞ」
みこと「本当だもん」
高橋「何を根拠に」
みこと「だって、わたし、見えるんだもん」
高橋「はぁ?」
みこと「見えるの」
高橋「何だって?」
みこと「手を握らせて」
高橋「手?」
みこと「そう、ほら」
みことが高橋の手を握り、小声で独り言を始める。
みこと「(小声で)ふ~ん、お母さん、事故、家族、写真、怪獣」
高橋「どうした?」
みこと「お母さん、毎朝、嬉しいってよ」
高橋「はぁ?」
みこと「あなたのお母さん」
高橋「おふくろ?」
みこと「うん」
高橋「おふくろ、もういないから」
みこと「言ってた、あなたが小学生?幼稚園かな?交通事故で死んじゃったんでしょ」
高橋「ん、まぁ…」
みこと「事故の少し前に家族旅行に行った、その写真、怪獣?怪物?と一緒に写ってる写真がある」
高橋「え…」
みこと「怪獣に恐がって泣いてるあなたと、それを見て笑ってるお母さんの写真」
高橋「ちょっと待てよ」
みこと「毎朝、家を出るときに、あなた、その写真に声をかけてるでしょ」
高橋「おい」
みこと「それが嬉しいんだって、あの旅行、あなたのお母さんの一番幸せな思い出なんだってよ」、
高橋「なんだ君は」
みこと「なにが?」
高橋「どうやって調べた」
みこと「だから見えるの」
高橋「どこまで調べてる?」
みこと「話してくれたの、今、あなたのお母さんが」
高橋「からかうんじゃない」
みこと「今の話、ハズれてる?」
高橋「誰から聞いたんだ?」
みこと「だから、あなたのお母さん、あなたとずっと一緒にいるの、わたしには見えてるから。ね、今の話、当たってるでしょ?」
高橋「バカげてる」
みこと「怒らせちゃった?」
高橋「資料をどこで見た?他に何が書いてあった?」
みこと「わたしを信じなさいって。お母さんも怒ってるよ、ぷんすか、ぷんすかって」
高橋「え…」
みこと「どうしたの?」
高橋「『ぷんすか』って」
みこと「お母さんが言ってたよ」
高橋「頼む、本当のことを話してくれ、どんな資料なんだ?」
みこと「だ、か、ら、見、え、る、の」
高橋「『ぷんすか』って、おふくろのおまじない…」
みこと「だってお母さんが言ってるんだもん、あ、ぷんすか飛んでけー、だって今」
高橋は、自分に言い聞かせるように独り言をする。
高橋「どうやったら調べられる?俺とおふくろしか知らないはずなのに」
みこと「全部アタってるでしょ」
少しの間があく。
高橋「ああ」
みこと「わたしの力、わかってくれた?」
少しの間があく。
みこと「どうしたの?」
高橋が小声で独り言。
高橋「次は、どういう接触をしてくる…」
みこと「あーあ、ホールの人たちと違って見えたから話かけたのに」
高橋「違って見える?」
みこと「よくわかんないけど、なんか他の人と違うなぁって」
高橋「どこが違うんだ?」
みこと「わたしと同じだって」
高橋「なにが同じなんだ?」
間が空く。
みこと「あのさ、信じてないよね」
高橋「は?」
みこと「教祖のこと」
高橋「バカいうな、花形教祖を信じてる、だから、ここに来てる」
みこと「ねぇ落ち着いてよ、わたしだって信じてないもん、仲間、仲間」
高橋「俺は信じてる」
みこと「頑張っちゃって、大丈夫、信じてないことは、秘密にしとくから」
高橋「とにかく、俺の話、他にも教えてもらえないかな?どこで知ったのかとか」
みこと「どこって言われても、とにかく見えるんだもん、仕方ないよね」
間が空く。
高橋「なら、他にも見えてる?俺のこと」
間が空く。
みこと「う~ん、わたしを助けてくれる人、かな?」
高橋「助ける?」
みこと「助けるとは違う?でも、二人で何かを起こす、起きる、やっぱ助けてくれんのかなぁ、そんな感じ」
高橋「からかうんじゃないよ」
みこと「ここまで話しても、信じてもらえないだ。(少しの間)じゃ、ちょっとやってみよっかな」
みことが目をつぶり、深呼吸を始める。
高橋「どうした?」
みことが深呼吸を続ける。
高橋「ん?」
みことが深呼吸を続ける。
高橋「え?」
みこと「ね、今、頭の中に浮かんだでしょ」
高橋が咳払いをする。
みこと「数字が浮かんだでしょ」
高橋が強く息を吐く。
みこと「そこに、かけてみてよ、携帯」
高橋「は?」
みこと「その数字、わたしの携帯の番号、ウソじゃないから、かけてみて」
高橋「もういいよ、ホールに戻る」
みこと「かけないと、消えないんだからね、頭の中から」
高橋「遊びは、そこまでだ」
みこと「強がっちゃって」
高橋「君は戻んないの?」
みこと「わたしは戻んなくてもいいの」
高橋「いいかげんな信者」
ホールの方から歓声。
高橋「あ、終わる」
高橋がみことに背を向けて走り始める。

みこと「まーたねー」

(続く)