ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

<ボイスドラマ>「世界霊性革命」(みこと-01)

○警視庁・会議室
中川と高橋が話をしている。
中川「もう一度、言っておくが、この任務の目的はあくまで情報収集だということを忘れないようにな」
高橋「了解しました」
中川「タバコ、いいかな」
高橋「ええ、どうぞ」
中川「君も構わんよ」
高橋「いえ、自分は大丈夫です」
中川がタバコに火をつけて一服する。
中川「ところで…、君は神の存在を信じてるかね」
高橋「はぁ」
中川「深い意味はない、単なる世間話だよ」
高橋「もし、いるんだったら、携帯の待ち受けにしたいもんです。話のネタになりそうですし」
中川「ふふ、そういうことなら、この任務は適任だな」
高橋「最初に着任した班にオウムに潜入した先輩がいましたので、カルト組織への心得も聞いています」
中川「誰かな?」
高橋「今、戸塚署で副署長をやっておられる尾藤さんです」
中川「尾藤くんか。優秀だった。…無事に戻ってきた」
中川が一服。
高橋「あのぅ、質問よろしいでしょうか?」
中川「なんだね」
高橋「「無事に戻った」というのは、戻れな、いや、戻らなかった…」
中川「聞いたことが?」
高橋「ええ、現場の噂ですが、宗教団体へ潜入して、そのまま信者になった捜査官が…」
中川「捜査した者の心の中までは管理できない」
高橋「では、実際に」
中川「ああ、珍しいことじゃない。カルトに取り込まれる捜査官は」
高橋「警察を辞めて、そのまま教団に」
中川「いや、辞めはしないよ、何食わぬ顔で今も刑事をやっている者もいるだろう。君も一緒に仕事をした中にいるかもしれない」
高橋「そんな」
中川「カルト側にとっても、警察の動きを知るための道具だ、辞めない方が使い勝手がいい」
高橋「でしたら、警察の方から彼らに辞めてもらうよう…」
中川「宗教、思想は憲法で認められた自由じゃないのかね」
高橋「ですが、そうなると…」
中川「潜入捜査の対象になるのを喜ぶ教団もあるそうだ、洗脳のスペシャリストが待ち構えてる」
高橋「洗脳して警察に送り返す?」
中川「そうだ」
高橋「自分も気をつけます」
中川「硬くなりすぎても怪しまれる。潜り込んだら、あまり意識しない方がいい」
高橋「あの、もし、自分が洗脳された場合、正気に戻す処置を取っていただけるのでしょうか」
中川「信者となってしまえば、事件性がない限り、難しいな。教団側も人権侵害だと厳しく言ってくるだろう」
高橋「カルト側に取り込まれたことは把握できるものでしょうか?」
中川「できるかもしれないし、できないかもしれない。心の中まで捜査できない」
高橋「すでに警察が宗教団体に蝕まれているということも…」
中川「対応のしようはあるよ。君は富士宮の捜査に関わったかな?」
高橋「学会ですか?」
中川「ああそうだ」
高橋「担当はしていませんが、捜査資料には目を通しました」
中川「当然、警察にも信者は多い、公安にいる熱心な信者の数だって10や20じゃきかないはずだ。君のセクションにはどうかね?」
高橋「1人、そう思われる方はいます」
中川「なら、仮に、君が信濃町を捜査する指揮官になったとしよう、どういう指示を出す?」
高橋「まずは…本命の指示を出す前に、軽い捜査情報を流して、情報の流れをみます」
中川「うん、セオリーだ。富士宮では、我々も本丸の捜査する前に、おとりとして別の指示を出した。動きをみたんだ。そして徐々に核心に近づいていった」
高橋「スパイは炙りだせましたか?」
中川「おとりの指示は、スパイを見つけるためじゃない」
高橋「では、なんのために」
中川「ダミーの情報を受けて相手は動く、そこでボロが出るのを待つ。向こうのスパイを、こちらも利用するんだ」
高橋「胃が痛くなるようなパズルですね」
中川「信者の数が百万を超えた教団のスパイを排除するなんて無理な話だよ、どこかに信者はいる、情報は絶対に漏れる。排除ではなく利用、発想の転換をしないとな」
高橋「勉強になります」
中川「もちろんスパイを見つけようという意見もあったが、自然なアイデアが見つからなかったんだ。君ならどうする」
高橋「昔なら踏み絵のような強引な方法もできたんでしょうが」
中川「いや、その時も成功祈願として神社にお参りしてはどうか?という案もあったよ」
高橋「鳥居」
中川「そう、鳥居をくぐらなかった奴は捜査から外せ、と、笑い話で終わったが」
中川が資料をまとめる音。
高橋「では捜査、頑張ってくれ。無事に戻ってきてくれよ」

中川「はい」

(続く)