ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

候補者の首(オープニング)

◯選挙活動の光景

街中で選挙演説をする候補者たち。

握手をして回る候補者たち。

選挙活動中の様々な光景。

 

<ナレーション>

公職選挙法では、こう規定されている。

選挙期間中に立候補者が死亡した場合、投票の3日前を期限として、代わりとなる新たな候補者を登録することができる、と。

つまり、投票まで3日を切ってしまえば、選挙は投票日までに生き残った候補者たちのものなのだということなのだ。

これは、そういう制度の不備が選挙のテクニックとして当たり前のように使われる、悲しい時代の物語。

 

○マンション外観/深夜

20階建てのマンション。

 

○マンション・室内/深夜

電灯の消えた室内。

ベランダ側の窓が開き、後藤敏(32歳)がベランダに座り、外を見ている。

外は郊外の住宅街である。

後藤が携帯で時間を確認する。

時間は0時3分。

後藤が手にした双眼鏡で街中を見る。

 

<双眼鏡で見える光景>

大通りの曲がり角から自転車に乗った警官が現れる。その後に続いて、警官の乗った自転車が3台現れる。

別の曲がり角から、別の警官の自転車が次々と現れ、20台ほどの集団になる。

 

後藤「来た、来た。来ましたよぉ」

室内から菱沼恭一(41歳)が出てくる。

菱沼「どの辺?」

後藤が双眼鏡から目を離さず返事をする。

後藤「商店街の端ですね」

 

<双眼鏡で見える光景>

警官が通行人に職務質問をしている。

 

後藤「片っ端から職質かけてますよぉ。到着まで10分くらいですかね」

菱沼「阿部だろ?」

 

<双眼鏡で見える光景>

警官の集団の後を黒い車がついてきている。

 

後藤「後ろの黒い車、覆面ですかね」

菱沼「だろうな、阿部の手先だよ」

後藤が携帯に電話をかける。

後藤が向きを変え、違う方向を見る。

 

<双眼鏡で見える光景>

住宅の隣の空き地に「川本順三選挙事務所」という看板プレハブ小屋が建てられている。

小屋の近くに3人の男が立っている。

男の一人が携帯を取る。

 

菱沼「(携帯に)阿部が警官たちを寄越したよ。そいつらが通り過ぎた後に刺客が来る、隠れてろ」

菱沼が電話を切る。

菱沼「動きがあったら携帯鳴らして」

後藤は双眼鏡から目を離さない。

後藤「はぁい」

菱沼が中に入る。

 

○車内/深夜

停車中の車内。運転席には笠原義人(31歳)、後部座席に西尾孝(27歳)が座っている。

助手席のドアが開き、菱沼が乗り込む。

西尾「動きありました?」

菱沼「警察動かした」

笠原「こっちは、どうする?」

菱沼「直接、阿部のところに行ってみよう」

笠原の口元が緩む。

笠原「面白くなってきた」

笠原が車を出す。

西尾「川本さんは大丈夫ですか?」

菱沼「向こうが感づくようなトコにはいないよ、隠れてる。事務所に近くで待機してる連中には、阿部の刺客が来たら、返り討ちにするよう伝えてる」

笠原「いきなり無所属の川本さんか・・・」

菱沼「民衆党の江古田についてるのは、どうせ金で集めた奴らだろ、川本さんを徹底的に殺れば、ビビって逃げてくと思ってんだよ」

西尾「市民党と光明党で、ここの影響力は、どれくらいに」

笠原「市民党は警察と地元の住良系のヤクザを押さえてる、光明党は団地に協会の信者多いだろうし」

菱沼「そんなアウェイで立候補した川本さんの心意気に応えてやんないとな」

西尾「中産党の候補はノーマークですか?」

笠原「さっき事務所の前を通ったけど、さすがイデオロギー、鉄壁の守備要員で守ってた」

菱沼「阿部は襲わないよ、生かしといても、投票に持ち込めば絶対に勝てるだろ」

西尾「無所属の川本さんと、市民・光明の阿部の一騎打ちか、実質」

笠原「あっちの兵隊は、どれくらい?」

菱沼「少なくとも500人は用意してるはず」

西尾「すげぇ!」

西尾が笑う。

笠原「ますます面白くなってきた」

 

○道路/深夜

郊外の道路を菱沼たちの乗った車が走っていく。

 

<ナレーション>

霞ヶ関の官僚利権と密接に結びついた与党・市民党は選挙法の盲点を巧みに利用するようになった。

警察官僚が対立候補への妨害を行い、市民党が懇意にする反社会的組織が暗殺行為を担当する。

さらに連立政権として手を組んだ光明党の母体である教団が送り込む無尽蔵の暴力装置が対立候補を潰しかかる。

しかし、そんな時代でも、日本のために立ち上がる候補者はいる。

そして勇気ある政治家の行動を意気に感じて、金も利権も関係なく自らの命をかけて候補者を守ろうとする男たちがいる。

これは、そんな名も無きサムライたちの物語である。