政局激震スクープ連発、その理由
○マクドナルド店内/夜
深夜のマクドナルド。
学生、若いサラリーマンたちで賑わっている。
隅のテーブルにくたびれたジャケットを着た遠藤靖彦(39歳)とパリッとしたスーツ姿の外山繁彦(56歳)が向かい合って座っている。
遠藤「こないだのネタ、出し先を文春と新潮に分けたのは、これですか?」
遠藤が指で「お金」のサインを作る。
外山「君から、たくさん情報を買ったものの、一つの雑誌だけじゃ載りきれなくてね」
遠藤「まだ使ってないネタ、どこで使うんですか?子供買ってるネタなんて超爆弾でしょ」
外山「順番を考えないとね、まずは女子大生と海外売春、最後に児童売春」
遠藤「編集者の代わりみたいですね」
外山が鼻で笑う。
外山「それで、今回の依頼なんだが、新しいネタが欲しいんだ。自民でなくてもいい、民主、公明、みんな、維新、共産党、どこでも構わない、あれば全て買う」
遠藤「選挙前に買って、すぐにリークするんですか?」
外山「タイムリーなネタだろう?」
遠藤がドリンクを手にして飲み干す。
遠藤「世界的に反政府デモ、流行ってますよね」
外山「ん?」
遠藤「ブラジル、エジプト、中国、東欧」
外山「それが?」
遠藤「市民を炊きつけて政情を不安定にさせる。国力も下がる。軍隊で乗り込んで行くよりも、遥かに効率の良い攻撃方法」
外山がテーブルの上のコーヒーを手にして飲む。
遠藤「単なる情報屋ですけど、なぜかな?って疑問に思いましてね」
外山「なにを?」
遠藤「なぜ、俺から、あんなに高い金で情報を買ってマスコミに売るんだろうって」
外山「マスコミにリークするために買ったんだ」
遠藤「でも週刊誌に売ったところで、売値は買値の1/3位でしょ。普通、あれだけの値段で情報を買えば、代議士本人か政党にもっと高い値段で買い取らせるか、ライバルの代議士に高く売りつけるか、そういう裏の取引に使うはず。マスコミに売ったりはしない」
外山「買った情報をどう使おうが私の勝手だろう」
遠藤「しかも今度は別の政党の情報も欲しがってる。それもマスコミにリークするんでしょう?」
外山が腕組みをする。
遠藤「目的があるとしたら、選挙前のタイミングで全ての情報をリークして政局を混乱させること、それしか考えられない」
外山「そういう目的で動いている者がいてもおかしくないだろ」
遠藤「目的は日本の国力を低下させること。依頼は海外から?」
外山が遠藤を無言で見つめる。
遠藤「打合せをここにしたのは、怪しい尾行をまくためだから」
外山が周囲を見回す。
遠藤「安心しましたか。話した方が得ですよ」
外山「直接の依頼相手しか知らない、それは日本人だ。その先にどの国の工作員がいるのか私には分からない」
遠藤「大丈夫、だいたいの推測はついてる」
外山「あなた何者ですか?情報屋じゃないんですか?」
遠藤「詳しくは話せない。一つだけ言えるのは、日本政府もバカじゃないってことだ」