トラブルシューター
○会議室内/昼
ビル内の会議室。
窓の外から銀座の町並みが見える。
須藤郁男(65最)、羽津孝(45歳)が並んで座り、テーブルを挟んで西尾健太(48歳)が座っている。
ドアが開き幸田信雄(37歳)が入ってくる。
幸田「すみません、遅れまして」
西尾が立ち上がり、須藤、羽津も立ち上がる。
幸田が須藤、羽津に名刺を差し出す。
西尾「うちのエキスパート、幸田です」
幸田「(西尾に)そんな。(須藤たちに)幸田と申します」
羽津「この度は、レーラのことで、ご迷惑をおかけし本当に申し訳ございません。マネージメントの羽津と申します」
羽津が深々と頭を下げ、幸田に名刺を差し出す。
須藤「須藤です、今回の件、責任を持って私が見届けますので」
幸田「わかりました」
四人が席に着く(幸田は西尾の隣)。
羽津が頭を下げる。
羽津「本当に申し訳ございません」
須藤「(羽津に)いくら謝っても起きたことは仕方ないんだから、顔を上げて。(西尾たちに)クライアントの反応は、いかがですか?」
西尾「一刻も早く切りたいと」
羽津が頭を下げる。
羽津「すみません」
須藤「まぁ、そうでしょう。そこで私の提案ですが、レーラの後任、うちのタレントを誰でもいいんで使ってもらえませんかね?」
西尾「須藤さんのワーニンググループのタレントを?」
須藤「ええ、クライアントの方が怒りをおさめてもらえるなら、うちのタレントを全てノーギャラで
」
西尾「ノーギャラ?」
須藤「レーラの代わりということですから。その代わり、今回の件で発生する違約金は免除していただきたい、それが条件です」
西尾「誰をキャスティングしても?」
須藤「グループのタレントなら梶原でも、郷田でも、誰でも。今回の件で、天通さんに与えたダメージには充分じゃないかもしれませんが」
西尾「いえ、そんな」
須藤「クライアントさんに納得してもらえるなら、あとは天通さんの力で、うまく世論を着地してれいただければ」
西尾「その点は、ご安心ください。な、幸田」
幸田「ええ」
須藤「良かった。キャスティングの件、後ほど現場担当から連絡させます、では、これで」
須藤と羽津が立ち上がる。
羽津が頭を下げる。
羽津「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございません」
須藤「よろしくお願いします」
須藤たちが会議室から出ていく。
西尾と幸田が後をついて見送りに行く。
西尾と幸田が会議室に戻ってくる。
幸田「羽津って社長の事務所、グループの仲間入りですかね」
西尾「トラブルおさめてもらう代わりに自分とこのタレントのCM窓口を譲るとか、その辺で手でも打ったんだろうな。で、どう今回の件、なんか聞いてる?」
幸田「レーラの親父ってパキスタンマフィアの元締めらしいじゃないですか」
西尾「詐欺程度でインターポールに訴えないだろうしな、ひとまず捕まえてドラッグとか人身売買の余罪を吐かせるんだろ」
幸田「それが漏れる前に一件落着にしとかないとヤバイですね。ドリー伊藤とかお笑い芸人とか使って早めに擁護のコメント出させますよ」
西尾「頼むよ、罪事態は、古本のアレ、なんだっけ?」
幸田「部長社長の川本?」
西尾「そう、それよか遥かに悪質だろ、こっちの方が。騒がれたら、クライアントに対して、ウチもマズいよ」
幸田「やっぱ川本の炎上を見たから、事務所もビビってんでしょうね」
西尾「古本も、ウチにトラブル処理頼めば、あんなことならなかったのに、なぁ?」
幸田「もっと炎上させろって、こっちに指示出したの西尾さんでしょ」
西尾「それが今回の件で遠回しに役立っただろ?」
幸田「さすがですよ」
西尾と幸田が微笑む。