ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

薬物汚染

○ワイドショー番組

朝のワイドショー番組。

キャスター、コメンテイターが並んで座っている。

キャスターが「呆れた」という表情をする。

キャスター「次の話題は、お伝えするの何度目になるんでしょうかね、歌手で俳優の毛水晋太郎容疑者の覚醒剤に関するニュースです」

覚醒剤で何度も逮捕されている毛水晋太郎のニュースを伝える番組。

キャスター、コメンテイターが苦言を呈している。

 

○警視庁・外観/昼

 

○警視庁内・会議室/昼

飯沢紀之(63歳)、吉田恵一(56歳)の2人が橋本順平(45歳)、土川祐(38歳)と挨拶をしている。

吉田が「グッド・プロモーション代表取締役 吉田恵一」と書いた名詞を橋本と土川に差し出す。

吉田「グッド・プロモーションの吉田と申します」

飯沢が橋本、土川に話しかける。

飯沢「グッドっていうのは、タレントのKYOKOを抱えている事務所でね、芸能事業組合に加盟しているプロダクションです」

吉田が橋本と土川にお辞儀をする。

橋本と土川も頭を下げる。

橋本「彼が、うちの四課で薬物関係の捜査をしている土川です。(土川に)初めてだっけ、飯沢さん」

土川「はい、初めてです」

橋本「子供の頃、テレビで見てただろ、トリオローズとか、花山美樹、生野隆二とか」

土川「もちろん」

橋本「全部、飯沢さんの手がけたタレントさん。今もプロダクションの会長をしながら、芸能事業組合の組合長も務めてる方だよ、まぁ芸能界のドンだね」

橋本が微笑む。

飯沢「いやいや、そんな、たいそうな」

橋本「じゃ、おかけになって」

飯沢、吉田が橋本、土川と向かい合って座る。

橋本「今日は吉田さんとご一緒に、どうされました」

飯沢「いや、さっきも言ったけれども、グッドのKYOKOっていうのは、デビューから5年、この間、武道館ライブを発表して、ようやく花が咲き始めた頃なんですけども、それが、どうも土川さんたちから疑いの目で見られているらしいと、吉田君から相談されましてね」

吉田「KYOKOは、今が一番大切な時期なんです。彼女の私生活も事務所の方で厳しく監督しますので、ぜひ」

橋本「その依頼のために、こちらに?」

土川が表情を変えずに飯沢を見ている。

飯沢「もちろん、土川さんたちのお仕事は、犯罪を取り締まるだけでなく、社会にアピールできる人物を捕まえて、薬物汚染の実体をニュースにする意味もあるというのは重々承知しています。そこで、あ、これから先は、私の独り言なんですが、もう何度もクスリで捕まってる毛水晋太郎、彼が、また薬物をやっているとしたら、どうだろう、薬物依存の恐ろしさが世間に伝わるんじゃないのかな、と。失礼しました、つい、大きな声で独り言を」

橋本が「ふっ」と笑う。

吉田「KYOKOの素行は私が責任を持って管理します」

吉田が頭を下げる。

土川が様子をじっと見ている。

橋本「吉田さん、顔を上げてください」

吉田は頭を下げたまま。

飯沢「どうか、一つ」

飯沢も頭を下げる。

橋本が土川を見る。

土川が橋本に軽くうなづく。

橋本「わかりました、お二人とも顔を上げてください」

飯沢と吉田が顔を上げる。

飯沢が橋本、土川に握手を求める。

飯沢「うちの芸事組合所属のタレントを一日警察署長に呼びたい時は、ぜひ。この恩は忘れませんから。(吉田に)だよな」

吉田「はい!」

 

***時間経過***

 

飯沢と吉田が帰り、橋本と土川が会議室に残っている。

土川「毛水って、なんなんですか?」

橋本「芸事組合のタレントでクスリの不祥事があった時に、ああいう取引に使われる道具として飼われてるんだよ」

土川「飼われてる?」

橋本「そう、業界を追放せずに復帰させてやる、そして怪しいチンピラを近づけとく。いつパクられてもおかしくないようにな。あのオッサンが言ってたように、芸能人をクスリでパクるのは社会的なアピールでしかないからさ、だったら、何度も何度も同じ奴が捕まれば薬物常習の怖さも伝わるし、茶の間に馴染みのないタレントを捕まえるより、効果的だろ」

土川「そのために飼う、ねぇ。毛水は自覚あるんですか、そういう役割をしてるって」

橋本「さぁ、わかんねぇな。ただな、一つ確実に言えるのは、飼う方も、飼われる方も、普通じゃねぇよ、あの業界は」