想いを伝える仕事
○荒廃した町並/昼
建物が崩壊し、漁船が乗り上げている町並み、地震や津波の被害跡。
瓦礫の片づけをする業者や、家財道具を持ち運ぶ家族たちの姿。
池山公平(31歳)、横尾拓海(30歳)が歩いている。
池山は手に紙束を持ち、ナップサックを背負っている。
横尾はスコップを背負っている。
横尾「次、どの辺?」
池山が紙束を広げる。
紙には地図が描かれており、地図には赤点が点在している。
地図欄外には「3月11日23時45分 宮城県××地区 端末GPS照合」の文字。
池山がスマートフォンで地図アプリを開き、紙の地図と現在地を確認する。
池山「この辺りで、探してみよっか」
横尾と池山が足下を探し始める。
横尾が地面から一部をのぞかせている金属性の物体を見つける。
横尾「発見」
横尾がスコップで金属性の物体の周辺を掘る。
地面に埋もれていた携帯電話が出てくる。
池山「よし」
池山が携帯電話を拾い上げ、背負っていたリュックに入れる。
リュックの中には数十台の携帯電話、スマートフォンが入っている。
横尾「マジで、どうすんの?」
池山「遺族に戻してやるんだよ」
横尾「即刻クビだぜ、端末のGPSデータ不正取得、不正持ち出し、及び、利用者端末の無断回収。懲戒解雇だ」
池山「中に写真とかメールとか、思い出が詰まってる。みんなの思いを伝えるのが俺たちの仕事だろ」
横尾「でも、会社は?」
池山「届けるのは、定年後の仕事」
横尾「老後の愉しみか。それよか、この端末売ってみようぜ?足のつかない携帯だっつって、中国人なら喜んで買ってくれるぞ」
池山「ば〜か」
池山と横尾が笑う。
池山「この辺に、あと4台位あるから、次、探そう」
横尾「はい、はい」
池山と横尾が足元を探し始める。