ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

余罪多数

○警察署・取調室内/昼

小田義隆(37歳)と香取武史(45歳)が机を挟んで座っている。

香取の手には手錠がはめられている。

机の上には数字の書かれたリストと新聞数紙が置かれている。

部屋の隅では若手の刑事が取調を記録している。

小田が新聞を指でたたく。

新聞には「中学校教諭が女子高生売春 余罪多数か?」「被害者は30人以上 援助交際教師を逮捕」等の援助交際の容疑者逮捕を報じる記事。容疑者として香取武史の名前が記載。

香取はうなだれたまま顔を上げない。

小田「今朝、新聞が出た後に、捜査員が家を訪ねたんだけど、誰もいなかったそうだ。奥さんと娘さん、あの町には住めないでしょ」

香取がゆっくりと顔を上げる。。

小田「黙秘を続ける限り、外には出れない、話してくれないかな?」

香取はうつろな表情。

小田がリストに目をやる。

リストは800件以上の通話記録(日時、番号、時間)が連なっている。その中で200件ほどの番号には黒い印がつけられ、20件ほどの番号には赤い印がされている。

小田が隅の刑事に声をかける。

小田「ちょっと席を外してくれないか?」

刑事「はい」

刑事が部屋を出ていく。

小田がリストを指さす。

小田「この840件の発信相手のうち、黒い印は電話帳に登録された身元のわかっている番号、赤い印は援助交際で補導された女の子と、その子が紹介した友達の番号。あなたが口を割らなくても、女の子の証言で20件の援助交際は立証される。問題は、残った600件の発信相手に、どれだけ余罪があるかですよ。自白をするのか、捜査で解明されるのかで、刑期は全然違ってくる、わかってるますよね?」

香取が目を伏せる。

小田「捜査報告は100%リアルである必要はないんですよ、リアリティがあればいい」

香取が顔を上げる。

小田「今20人がクロだとわかってる、残った600人はグレーだ。捜査報告にグレーのうち100人がクロだったと書けばリアリティがある。100人がクロなら、皆が納得する」

香取「え?」

小田「取引ですよ。援助交際をした全員の番号を教えて欲しい。ただし報告書に記載するのは100人位に止めておく。犯人の自供で取り調べが終了すれば警察も助かる、あなたも刑を軽くなって助かる」

香取「信用できますか?」

小田「断れば、600件を全部調べて立件することになる。その時、余罪が100人よりも少なくなる自信があるんですか?」

香取がリストを見る。

香取「思い出す時間を下さい」

 

 

○街角/昼

学校帰りの女の子たちの様子がフラッシュバックでインサートされる。

 

電話で会話する音声。

小田の声「貴子ちゃんの電話ですか?」

女の子の声「誰?」

小田の声「電話切らないで、切ると貴子ちゃんの家に警察が行くよ」

女の子の声「はぁ?」

小田の声「警察から「売り」やってる女の子の情報を集めるように依頼があって調べてるんだけど、貴子ちゃん、やってるよね、「売り」」

女の子の声「誰?」

小田の声「(声のトーンが変わって)誰じゃねぇよ、てめぇが捕まるかどうかは、俺の判断一つなんだよ、この電話切るんじゃねぇぞ、よく聞け、今日、この後、俺のところに来い」

女の子の声「今日は無理です」

小田の声「警察呼ぶぞ、川崎の吉住町だろ、自宅も分かってんだよ」

女の子が泣き出している。

小田の声「場所、今から言うぞ、渋谷のなぁ」

女の子の声「すみません、渋谷なら、いつも使ってる場所があるんで、そこでいいですか?」

小田の声「はぁ?」

女の子の声「私、そこしか使ったことなくて、他はわからないんです、お願いします」

小田が舌打ちする音。

 

○ホテル室内/夜

松本貴子(17歳)が椅子に座っている。

ドアを叩く音。

貴子がドアを開けると小田が入ってくる。

貴子「電話の?」

小田「ああ」

貴子「警察の話ですけど」

小田「その話は後だ、まずやらせろ」

貴子「心配なんです、聞かせてください。どうなるんですか?」

小田「警察に情報をあげるかどうかは、お前のサービス次第だよ、脱げよ」

貴子「あなた、誰ですか?どこの人?」

小田「うっせぇよ、さっさとやらせろ」

小田が貴子をベッドに押し倒し、乱暴を始める。

ドアをノックする音。

貴子が悲鳴を上げる。

ドアをノックする音が大きくなる。

小田の動きが止まる。

小田「お前、誰か呼んでんじゃねぇのか?」

小田がドアの方に近づく。

小田「(ドアの向こうに)誰だ?」

ドアを叩く音だけが続く。

小田がゆっくりとドアをあける。

ドアが開き、女の子たち15人程が入ってくる。

女の子たちは、室内の各所に隠されていた小型ビデオ、ボイスレコーダーなどを手にする。

小田は呆けにとられている。

リーダー格の女の子・良美が、グループの子たちに声をかける。

良美「あんたたちがやられたのも、こいつ?」

声をかけられた子たちは「こいつ」「まちがいない」と応える。

良美「(小田に)あんた何者かしらないけど、今のやりとり、全部撮ったから、もし次に私たちに脅しの電話をかけてきたら、これ持ってくからね、警察に」

小田「バカ野郎、警察がお前らを助けるかよ」

良美「なんで、わかるの?警察の人?」

小田の表情が一瞬こわばる。

小田「そんなわけねぇだろ」

良美「へぇ。(仲間の子に)今のやりとり撮ってる?」

仲間の子が「撮った」と応える。

良美「刑事さんさぁ、レイプするのと、乱暴だけだと罪は違うよね。私たちが売りやってること黙ってくれるなら、乱暴されたってことにしとくけど、どっち?」