大地震の二人
○地方都市の郊外/朝
住宅の隣に田畑がある田舎。
通学する子供たちの姿。
○池畑家の外/朝
池畑家の外の電柱に隠れるように、仁志定之(31歳)が立っている。
○池畑家の外/昼
仁志が立っている。
池畑家の玄関から池畑良美(31歳)が出てくる。
良美「いいかげんにして、警察呼ぶわよ」
仁志が良美を見つめている。
良美「弁護士の先生から話は言ってるでしょ、離婚は成立したの」
仁志が良美を見つめている。
カラスの鳴き声が聞こえ、地鳴りの音が響く。
震度6を超える大きな揺れ。
仁志が揺れる電柱から慌てて離れる。
良美が座り込む。
良美「きゃぁ」
揺れがおさまる。
良美が辺りを見回す。
仁志が良美の方へ手を差しだしながら歩いてくる。
仁志の表情は微笑んで見える。
良美「なに、その表情は?まさか、地震をきっかけに別れた夫婦が、よりを戻すみたいな、そんなこと考えてんじゃないでしょうね?」
仁志の歩みが止まる。
良美「それじゃ、100万年経っても売れないよ。隕石、竜巻、テロリスト、そういうんで仲が戻るって映画、山ほどあるじゃない、今だにそんな発想してる時点で才能ないわ」
仁志が表情が曇る。
良美「劇団で成功するって、そりゃ、最初に信じた私も悪かったけど、わかったの、あなたの書くシナリオじゃ、これからも売れない」
仁志がうつむく。
良美「どうせ、ここで、もう1回地震が起きて、今度は二人手を合わせて、みたいなこと考えてんじゃないでしょうね?最後のアドバイス、三流脚本家みたいな発想ヤメな。例えば、地震に巻き込まれたけど、二人の仲は変わらない、そういう話の方が斬新でしょ、売れたいんなら、そういうの書きなさいよ」
仁志「これが、そうなんだけど、俺、売れるかな?」
向き合う仁志と良美が、無言のまま顔をこちら(カメラの方)へ向ける。