東大教授もアソコをペロペロしたい!
○火星表面【火星探索機の乗組員が撮影する主観映像】
赤茶けた岩肌や砂の世界。
火星探索機。
探索機の側面にNASAの文字。
NASAコントロールセンターからの交信音(英語)。
交信音「こちらヒューストン、生中継、お疲れさま」
乗組員が答える。
乗組員の声「どうだった、俺のレポートは?」
交信音「バッチリさ。人類初の火星中継、100年後の教科書には君の名前が載ってるよ」
乗組員の声「だったら、もっとシャレた台詞を用意しとくんだったな、ふふ(笑い声)」
交信音「さて、そろそろ調査に取りかかろう」
乗組員の声「OK!岩石の採掘かな」
交信音「ああ、そうだ」
カメラの動きが止まり、カメラのアングルが地表へ向けられる。
乗組員の声「ん?」
交信音「どうした?」
カメラがゆっくりと前へ移動する。
乗組員の声「なんだ・・・」
交信音「こちらヒューストン、異常があれば報告せよ」
乗組員の声「いったい、これは」
交信音「なにがあった、応答せよ、応答せよ」
宇宙科学研究所・佐藤義彦所長(58歳)と中山和成教授(42歳)がモニターを見ている。
(モニターの映像は見えないが、音声から、先ほどの火星探索機の乗組員とNASAのやりとりだとわかる)
中山「しかし、そんなバカな・・・。信じられない」
佐藤「NASAに何度も確認しました、真実に間違いないそうです」
中山「宇宙の歴史が変わる大発見じゃないですか、一刻も早く公表すべきです」
佐藤「だめです!真実だからこそ知らせることはできないんです。公にするのは、全ての謎を解明してから、NASAは、この話を世界のごく一部の科学者だけに伝えて、外に漏らさないよう守秘義務を課しています。今、日本で、このことを知っているのは、私と中山教授の2人だけです」
佐藤が中山にリストを手渡し、中山がリストに目を通す。
中山「すごい、ノーベル賞クラスの研究者ばかりだ。でも、なぜ私が」
佐藤「NASAからの依頼があったんです、この火星で発見されたものを日本で調べて欲しい、と」
モニター画面が映る。
火星の地表に本が落ちている。本は「ハメチョメ・セーラー服」というタイトル。
セーラー服姿の女性が股を開いて睨んでいる表紙の写真集。
佐藤「1985年頃に出回ったビニ本です」
中山「エロ本・・・ですか」
佐藤「エロ本ではなくビニ本です」
中山「要するにエロ本ですよね?」
佐藤「調べたところ、一般に流通する猥褻な書物とビニ本は全く異なる種類の書籍だとわかりました、これはビニ本です」
中山「既に調査はしたんですね」
佐藤「ネットで調べて、NASAにレポートを送りました」
中山「ビニ本です、と?」
佐藤「はし。しかし、その後、NASAから、情報が足りない、当事者たちに話を聞いて欲しいと要求がありました。編集者、カメラマン、モデル」
中山「研究所は、ビニ本を調べる所じゃないと思いますけど」
佐藤「勝手なまねをして本当に申し訳ないんですが、私がNASAに中山教授の研究実績を送って、スタッフに加わってもらうよう許諾をもらいました。火星で発見されたビニ本について、ぜひ一緒に調べてもらいたい」
中山「え・・・」
佐藤「これは宇宙研究の未知なる領域です」
中山「は、はぁ」
○住宅街/昼
中山が一人で歩いている。
佐藤の声「ビニ本コレクションをネットで公開しているサイトがあります。そのサイトのオーナーなら情報を知っているはずです」
中山が紙を見ながら家を探している。吉野という表札のかかった家の前で足を止める。
佐藤の声「くれぐれも、火星の件はバレないよう気をつけてください」
○吉野家玄関内/昼
中山が扉を開け、中を覗き込む。
中は薄暗く、廊下には雑然と荷物が並べられている。
中山「吉野さんいらっしゃいますか?中山です」
奥からゆっくりと吉野(57歳)が現れる。
吉野は寝癖髪、無精髭、小太り、ジャージ姿の男性。
吉野「あんたが中山?」
中山「はい、そうです、メールをした中山です」
吉野「見せて」
中山「は?」
吉野「身分証、会社の名前の入ったの、見せて」
中山「どうかしましたか?」
吉野「前さ、マニアだっていうから色々教えてやったら、俺のこと変態だってネットで書き込んだ奴いてさ、それから、俺の話を聞きたいって奴の身分証チェックするようにしてんの」
中山「いや、あの」
吉野「なにグズってんの、あれ、あんたも俺のことバカにしに来たクチ?」
中山「いえ、違います!」
中山が鞄から名刺入れを取り出し、吉野に名詞を渡す。
吉野「へぇ、東大の教授、宇宙研究所、すごいじゃん、あんた」
中山「いえ、そんな」
吉野「東大の先生もビニ本が好き?」
中山「ええ、まぁ」
吉野「東大教授もオマンコが好き?」」
中山「はぁ、はい」
吉野「そうなんだよな、頭が良くても、結局、考えることは一緒なんだなぁ」
中山が苦笑いをする。
吉野「言ってみな」
中山「な、何をですか」
吉野「オマンコ好きって。東大教授もオマンコが好きって」
中山「どういうことですか、それ」
吉野「言えないんだ」
中山「いえ、言えます・・・。(小声で)東大教授もオマンコが好き」
吉野「そんな恥ずかしそうに言われたら、起つチンポも起たなくなっちゃうよ、照れずに、もっとでっかい声で!」
中山「東大教授もオマンコが好き!」
吉野「東大教授もアソコを(舌を下品に動かして)ペロペロしたい!」
中山が躊躇う。
吉野「ほら!」
中山「東大教授もオマンコを(舌を動かして)ペロペロしたい!」
吉野「いいじゃん、先生」
中山「は、はい」
○都内繁華街/昼
佐藤が一人で歩いている。
中山の声「吉野の話だと「ハメチョメ・セーラー服」の制作に関わった高橋は今も都内で仕事をしているそうです」
佐藤が紙を見ながら、5階建ての雑居ビルの前で立ち止まる。郵便ポストに「高橋プロダクション」の文字。
○雑居ビル階段/昼
佐藤が階段を上っている。
中山の声「ビニ本業界は編集者がカメラマンも兼任していたらしく、実質、写真集は高橋が一人で制作した本のようです」
○高橋プロダクション内/昼
佐藤がソファに座り、テーブルを挟んだ反対側に、高橋(61歳)が座っている。
高橋は中性的な雰囲気の男性である。
高橋「お電話じゃ、よく分からなかったんだけど、どういうご用なの?」
佐藤「あの、以前、高橋さんが出版された写真集で、お仕事をご一緒された方がですね、あの、私もファンでして、どうしても」
高橋「それ、よく分からなかったんだけど、なに?モデルの子について教えて欲しいってこと?」
佐藤「ええ、端的に言えば、そういうことです」
高橋「ホントに?」
高橋が佐藤を舐め回すように見ている。
高橋「それが聞きたいだけ?」
佐藤「そうです」
高橋「私のところに来る人って、最初は色んな理屈を離すんだけど、結局、自分を綺麗に撮って欲しいって人が多いわけ。あなたも、そうだと思ったんだけど」
高橋プロダクションの壁には中年男性のヌード写真が飾られている。
佐藤「私は「ハメチョメ・セーラー服」という写真集を」
高橋「いや!女の写真を撮ってた頃の記憶なんてスッポリ抜け落ちてるの」
佐藤「でも、お伺いしたいのは、その話なんです」
高橋が立ち上がり、佐藤の隣に座る。
高橋「その「ハメチョメ」って、どんな写真が載ってたの?」
佐藤「女性のヌード写真集です」
高橋「わかんない、そんな説明じゃ」
佐藤「そういわれましても」
高橋「ほら、やってみせてよ」
高橋が室内にある撮影機材に目を向ける。
佐藤「いや、それはちょっと」
高橋「じゃ、何も思い出せない。残念だけど」
佐藤「思い出していただかないことには」
高橋が立ち上がりカメラを手に取る。
高橋が佐藤の方にカメラを向ける。
高橋「ほら」
佐藤はカメラに視線を合わせない。
高橋「帰ってもらってもいいのよ」
佐藤がカメラの方を向く。
高橋「そうよ、こっちを見て」
佐藤がじっとカメラを見る。
高橋「表紙は、どんなポーズだった?「ハメチョメ」の」
佐藤が気持ち程度にポーズを作る。
高橋「そうそう、少しず〜つ思い出してきた、ああ、あの女の子ね」
佐藤「そうですか?」
高橋「喋っちゃダメ。世界に入らなきゃ、ほら、そのモデルの子の右手は、どこにあったの?」
○雑居ビル外観/夕方
高橋の声「どんな風におっぱいを揉んでた。それ、いい表情よ。ああ、いい、もっと大胆に(高橋の呼びかけが続く)」
○興信所・入口/昼
興信所の入口。「人探しなら、お任せください」と書かれたポスターが貼られている。
○興信所・応接室/昼
佐藤、中山がテーブルを挟んで、興信所の調査員(38歳)と話をしている。
調査員は手に持った紙資料に目を通す。
調査員「お二人とも、この女性とは面識がない」
佐藤「ええ」
調査員「全く?」
中山「はい」
調査員「それにしては、この資料、良く調べられてますよ。後は、地道な作業ですから、調査は難しくないでしょう」
佐藤「お願いします」
調査員「ここまで分かったんですから、このまま、お二人で調査しても辿りつけると思いますけどね」
佐藤と中山が顔を見合わせて、もう一度前を向く。
佐藤・中山「もう、こりごりです」
○新幹線車内/昼
佐藤と中山が新幹線に乗っている。
調査員の声「依頼のあったヨシコという女性、本名は田代良子、1961年生まれ、79年に故郷の新潟から上京、百貨店で販売員をしていた時に、売れない劇団の俳優と同棲を始める」
中山がビデオカメラを手にして車窓から外の風景を撮っている。
調査員の声「82年、同棲相手の影響で自分も役者の道へ。83年に男と別れてからの足取りは掴めませんが、86年故郷へ戻り、地元の公務員、吉永達夫と見合い結婚、今は自分たち夫婦と娘夫婦で一緒に生活をしています」
中山「わざわざビデオで撮影して欲しいって、NASAは我々の何の研究をしてると思ってるんでしょうね」
佐藤「当時の関係者に話を聞くのは、これで最後なんですから、いいじゃないですか」
中山が佐藤にカメラを向ける。
佐藤「やめたまえ、カメラは苦手でね」
中山「すみません。にしても、彼女には、良い思い出じゃないでしょうし、ちょっと心苦しいですよね」
佐藤「彼女の心を傷つけないよう、気をつけましょう」
中山「はい」
○住宅街/夕方【中山が撮影しているビデオカメラ映像】
夕暮れ時の郊外の住宅街の路上。
カメラの映像は、左右上下に大きくぶれている。
驚愕の表情を浮かべた佐藤がアップになる。
佐藤「こ、これ、いったい!」
中山の声「教授、何ですか、これは!」
カメラが地面に転がる。