ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

予言者

◯武井中学・3階男子トイレ/夕方

個室トイレの便器の脇に、頭を靴で踏みつけられている田村政志(14歳)の顔がある。

政志はトイレの床に這いつくばっている。

曽我部(14歳)と岡本(14歳)と藤田(14歳)は笑いながら、政志を蹴飛ばしたり、踏みつけている。

政志は学生鞄を頭の脇に置き、必死で耐えている。

曽我部「ドリンクバーおごってやるよ」

曽我部が政志の背中をひっぱり便器の中まで顔を近づける。

藤田が政志の頭を踏みつけ、政志の顔が便器の中に入る。

藤田「汚ったねぇ、コイツ」

岡本「そんなに喉乾いてんのか、田村」

曽我部、岡本、藤田が笑う。

曽我部「ほら、飲み放題だぞ」

曽我部が水洗レバーを押す。

流れる水が政志の鼻や口を直撃し、政志がむせぶ。

政志がむせび声をあげる度に、曽我部、岡本、藤田が大笑いする。

 

便器の中に顔を突っ込んでいる時、政志の頭で天の声が響く。

天の声「3月15日 全てが終わる」

 

◯田村家・政志の部屋/夜

政志がパソコンの画面を食い入るように見ている。

政志は「頭の中の声」、「心の声」などのキーワードを検索している。

 

◯住宅街の道路/夕方

政志が高橋(14歳)と一緒に下校している。

政志「信じてくれってわけじゃないけど、本当に体験した人間じゃないとわかんないね」

高橋「科学部の部員として言わしてもらうと全否定。でも、個人的には、そういう話、嫌いじゃないね」

政志「でしょ?予言、間違いない。大地震とか、大噴火、隕石、とにかく地球規模の大惨事、全てが終わる。ネットで調べたら、こういう虫の知らせが本当だったって話が山ほどある」

高橋「じゃ、どっかで発表しなきゃ、自分一人が知ってても意味ないじゃん」

政志「でも、恥ずかしくない?外れたりしたらさ」

高橋「逆に当たったときどうすんの?お前の予言で人の命が救えるんだよ。しかも後から予言で知ってたっつってもさ、誰も信じてくれないんだから」

政志「いや、ちょっと、なんともなぁ…」

高橋「あ」

高橋が向きを変え、脇道に入る。

政志「ん、どしたの?」

脇道に入った高橋が「こっちに来い」というジェスチャー。

道路の向こうから曽我部、岡本、藤田たちが歩いている。

曽我部たちが政志を見つける。

岡本「(大声)おーい、田村!」

曽我部「(大声)来い!逃げんな!」

高橋が残念そうな顔をする。

政志は困惑した表情。

藤田「(大声)走って来い!」

政志が学生鞄の中に手を入れながら、曽我部たちの方へ向かう。

 

政志が曽我部たちの前まで歩いて来る。

藤田「ちょうど良かった、さっき、どうしても欲しいパーカー見つけたんだけどさ、金がねぇんだよなぁ」

曽我部「フジが金が足りねぇって、どう思う?」

岡本「助けてあげたいよなぁ、友達なら」

政志は何も答えない。

曽我部「出せや、金、持ってんだろ」

岡本「さっき鞄の中、漁ってたじゃん、財布隠しただろ」

政志は応えない。

藤田「たったの8000円だよ」

政志「そんな大金持ってないから」

藤田「じゃ、親の金パクるとか、人から金借りるとか、いくらでもあるだろ、やり方は」

曽我部「金曜まで待ってやるよ、(岡本に)金曜、何日だっけ?」

岡本「16日」

藤田「週末、あのパーカー着て遊びに行きたいんだよなぁ、な、田村、頼むよ」

岡本「持ってこいよ」

曽我部「行こうぜ」

曽我部たちが去っていく。

 

○武井中学・校門/朝

登校時間、登校中の生徒たち。

歩いている政志の後ろから高橋が走ってくる。

高橋「朝の地震、ちょっと大きかったな。当たるんじゃないの?今日の予言」

政志「ああ」

高橋「次、デカいのが来たら、皆に教えろよ。それが特殊能力を持った者の使命なんだから」

政志「なんだよ、それ」

 

○武井中学・2年3組/昼

授業中、先生が黒板に字を書いている。

(黒板に書かれた日付は3月15日)

地震が起きる。小さく揺れた後、大きな揺れ。

女子生徒たちの「キャァ」という悲鳴。

揺れが止む。

教室がざわついている。

高橋が振り向き、数列後ろの政志に「ほら、言いなよ」と無言で合図を送る。

政志は「いやだ」と合図を返す。

余震が起きる。ざわつく教室。

政志の頭の中で「すべてが終わる」と天の声が強く鳴り響く。

余震が止む。

政志は真剣な表情をしている。

高橋が「早く」と合図を送っている。

政志が立ち上がる。

政志「先生、僕たちを帰らせてください」

先生「え」

政志「今日で、世界が終わるんです」

先生「はぁ?」

 

○武井中学・校門/朝

登校時間。

登校する政志に同学年の生徒たちが笑いながら声をかける。

生徒A「予言者!」

生徒B「今日は何の日?」

政志が苦笑いで応える。

 

高橋が政志の後ろから追いつく。

政志「まいったよ、言うんじゃなかった」

高橋「ま、いいじゃん、無事なんだから」

政志「ずっと言われ続けるんだろうな、この話」

高橋「武井中の伝説の人物」

政志「なんか、もう、やけくそな気分」

 

 

○武井中学・教室内/朝

黒板の日付は「3月16日」。

政志が教室に入ると、同級生の掛け声。

生徒C「ノストラ田村!」

政志が「はい、はい」と面倒くさそうな表情をしながら、手を挙げて応える。

クスクスと笑い声が起きる。

 

○武井中学・教室内/午後

掃除の時間。

女子生徒が机を運びながら、政志に話しかける。

女子生徒A「今日の田村君、面白いね、吹っ切れたみたいで」

政志「吹っ切れないとやってけないよ。あんなにバカにされて」

女子生徒Aが笑いながら、机を運んでいく。

 

廊下の方から曽我部の声がする。

曽我部「田村!」

教室の外に曽我部、藤田、岡本。

藤田が手招きしている。

政志が面倒くさそうに曽我部たちの方へ歩く。

政志「お金ないよ」

曽我部が耳元でささやく。

曽我部「ざけんなよ」

藤田「(小声で)終わったら3階の男子便所に来い」

曽我部「逃げたら、ぶっ殺すぞ」

政志は応えない。

曽我部たちが去っていく。

 

○武井中学・校門/午後

下校中の生徒たち。

政志が全速力で走り抜けていく。

 

○田村家前/午後

政志が走ってくる。

 

○田村家・政志の部屋/夕方

政志がパソコンのキーボードを叩いている。

政志は「YOUTUBE」に映像をアップロードしている。

アップロードされた映像は政志をいじめる曽我部、藤田、岡本を政志の視点で撮影した映像。

政志は映像に説明コメントを書き込んでいる。

説明コメント=政志の声「僕は、東京都武井中学2年3組・田村政志といいます。僕は、同じ中学の曽我部啓示、藤田義則、岡本努にいじめられていて、自殺をするつもりでした。いじめの証拠にするために、鞄の中にカメラを入れて、僕をいじめる様子を撮っていました。僕は、まだ死んでいません。もっと生きたいと思います。生きるために、映像を公開することにしました。これ以上、いじめられたくはないからです(以下、続く)」

 

○武井中学・校門前/昼

校門の外で取材に来たマスコミ関係者と学校関係者が揉めている。

 

○武井中学・校長室内/昼

政志は校門の外の悶着を見ている。

政志の声「予言は正しかったんだ、すべてが終わった」

校長先生以下、数名の先生たちが、政志の父、母、政志に頭を下げている。