ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

この戦いに意味はない

○市街地/昼
スパナを持った高市啓介(25歳)が路上駐車をしている車の運転席を覗き込みながら歩いている。
高市がイモビライザーを搭載していない旧型車を見つけ、窓ガラスを割り、車に乗り込む。
高市がキーの部分を壊し、配線をいじる。
エンジンがかかり、高市の乗った車が走り去る。
 
高市が車を盗んだ場所は、駅前の大通り。
大通りには高市以外に通行人も、動いている車もいない。
 
○車中/昼
高市がスナック菓子とビールを飲みながら盗んだ車を運転している。
 
○道路/昼
高市が運転する車以外に、道を走る車も通行人もいない。
 
○富合村全景/夕方
日暮れ。
国道1号線沿いの山間にある100世帯程の集落。
村で灯りがついている家は一軒のみ。
 
○富合村路上/夕方
高市が乗ってきた車が止まる。
スパナをポケットに入れた高市が車を降りてくる。
高市は灯りのついている家の方へ歩く。
 
○柏家玄関/夕方
高市が中の様子を伺い、玄関ドアを開ける。
高市「すみません、どなたか残られてますか?」
奥から柏洋平(16歳)が出てきて、高市を見ている。
奥の方から女性の大きな声が聞こえる。
女性の声「何度もすみませんねぇ。うちの人が用意ができたら、いつでも行くって言ってますけん、かまわんといて下さい」
洋平が奥の方へ大声で話しかける。
洋平「違うみたい」
女性の声「はぁ?」
奥から柏仁美(44歳)が出てくる。
仁美「(洋平に)警察の方やろ(高市を見て)あら、どこの方?」
高市「あの実家へ帰る途中で、そろそろ休もうかと思ったら灯りがついてたもんですから」
仁美「はぁ、そうなんですか。この辺じゃ、もうウチしか人はおらんですけん。よかったら泊まってきますか」
高市「大丈夫ですか?」
仁美「ええですよ。洋平、父さん呼んできて」
 
○柏家居間/夜
柏武彦(46歳)、仁美、洋平、高市が食事をしている。
高市「静岡を越えてから、まともな食事は始めてですよ」
武彦「何食べとんの?」
高市「店に置きっぱなしのお菓子とか缶詰とかですかね」
洋平「お金は?パクっとる?」
高市「払う気はあるんだけどね」
武彦「この辺は、まだ政府が電気、水道、ガスも止めてないから、米と野菜の料理なら、なんとかなるんよ」
仁美「この後は、どうされるんですか?」
武彦「九州行くなら海を渡らないかんやろ?」
高市「仕事がエンジニアなんで、機械はそこそこいじれるんですよ。どこかで船を見つけたら、なんとかなると思います」
洋平「今、どこまで来とるか知っとる?」
高市「(武彦に)情報は聞いてますか?」
武彦「昨日、回って来た警察の話やと長崎、佐賀、熊本と福岡の辺まで占領されとるらしいね」
仁美「(高市に)どこまで戻るの?」
高市「実家は福岡なんですけど、大分の近くなんで、まだ戦闘状態じゃないと思うんですよ」
洋平「なんで、あの国は急に攻めてきたんやろ」
武彦「何考えとるかわからんけど、とにかく、これ以上、こっちに来んようにしてもらいたいわ」
高市「逃げないんですか?」
武彦「(二階を指さして)親父がね、わしゃ逃げんって動かんもんやから。置いて逃げるわけにもいかんし」
高市「親孝行ですね」
仁美「あなたも、また、わざわざ戻らんでもいいでしょうに」
高市「まぁ・・・、似たようなもんです。実家に親も残ってますし」
武彦「洋平、聞いたか?一人だけ逃げるとか言うなよ」
洋平「(小声で)死んだら意味ないじゃん」
高市「(洋平に)一緒に連れてってやろうか?」
洋平が首を振る。
高市が微笑む。
 
○富合村全景/朝
 
○柏家前/朝
高市、柏寿三郎(80歳)、武彦、洋平、仁美が玄関から出てくる。
武彦「洋平、近藤さんの軽トラ見て来て」
洋平が50m程離れた近藤宅まで走り、軽トラの運転席を覗く。
洋平「(大声で)いける!」
武彦「(洋平に)ガソリンは?半分くらい残っとるか?」
洋平「(大声で)ある!」
武彦「じゃ、あっちの車に乗り換えた方がいい。半分あれば市内まで辿りつける」
高市「ありがとうございます」
 
○富合村路上/朝
高市、寿三郎、武彦、仁美が歩いている。
寿三郎「見上げた若者やな。親御さんから、さそかし立派な教育を受けたんやろう」
高市「いやぁ、そんな」
仁美「両親以外にも助けたい人がおるんですよ、ねぇ?」
高市「いや、まぁ、そんなトコです」
寿三郎「立派」
 
○近藤家前/朝
軽トラの窓ガラスをスパナで割る。
キー部分を壊し、エンジンをかける。
武彦「手慣れたもんやね」
高市がアクセルを軽く拭かす。
高市「ありがとうございました」
仁美「これ持ってって」
仁美が弁当を渡す。
高市「すみません」
寿三郎「無事にな」
高市「ありがとうございます」
武彦「まっすぐいけば標識あるから、それに沿って。気をつけて」
高市「はい。(洋平に)わざわざ危ない所に戻る理由がわからんやろ?」
洋平がうなづく。
高市「それがわかれば、男になった証拠や」
武彦「そう」

高市「助かりました」

 
高市の乗った軽トラが走り出す。