ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

素晴らしき気球旅行

○エジプト市内/昼

ゾンビが人を捕まえ食べている。

走って追いかけて来るゾンビたちから逃げている前島佳枝(24歳)。

佳枝の反対方向から走ってくる北見康平(45歳)、北見里沙(38歳)、北見純一(14歳)。

北島たちの後ろにはゾンビたち。

康平が佳枝に向かって叫ぶ。

康平「あんたも無事か?」

佳枝「はい!」

佳枝と康平たちが合流し、通りの小道に逃げ込む。

街の外れに来たところで、里沙が声を出す。

里沙「あれ!」

丘の上に観光客向けの気球。

気球は飛び立てる状態のまま地面で停止している。

康平「あそこまで走ろう」

 

○丘のふもと/昼

ゾンビたちが歩いている。

康平たち4名がゾンビたちに見つからないように丘の上に向かっている。

純一のスマホから着信メロディが鳴る。

純一「(スマホに小声で)あの、バカ」

ゾンビたちが純一の方へ顔を向ける。

康平「走れ!」

追いかけてくるゾンビたち。

慌てた純一が、つまづいて転ぶ。

里沙が純一を助けに向かう。

里沙「(康平に)飛べるように用意しておいて!純一、連れてくから」

足をくじいた純一に肩を貸す里沙。

純一「いいよ、歩けるよ」

佳枝も純一のところへ戻ってくる。

里沙「あなた、この子をお願い」

里沙は佳枝に純一を託し、後ろを振り向き、近づくゾンビたちに大きなジェスチャーでアピールする。

里沙「(ゾンビたちに)こっち、こっちよ」

里沙は純一たちと反対方向に向かって走り出す。

ゾンビたちは里沙を追いかけ始める。

純一「(里沙に)何やってんだよ!やめろよ」

佳枝「いいから、早く気球まで行かなきゃ」

 

○気球ゴンドラ内/昼

康平が気球の操縦方法を確認している。

 

○気球近く/昼

気球の近くまでたどり着いた佳枝と純一。二人の後ろに1体のゾンビが純一たちの後をついてきている。

ゾンビが二人に追いつきそうになった時、里沙の絶叫が響く。

後ろから、里沙が全速力で走ってくる。

里沙は純一たちを追うゾンビに追いつき、後ろから羽交い締めにする。

純一が振り向く。

純一「母さん・・・」

組み付かれたゾンビはバランスを崩し里沙と共に丘を転げ落ちていく。

里沙たちが落ちていく先にはゾンビの群れ。

純一「母さん!」

里沙が叫ぶ。

里沙「逃げなさい!」

気球の方から康平が叫ぶ。

康平「純一、来い!乗れ!」

動かない純一を佳枝がグイと引っ張る。

佳枝「逃げなきゃ」

体を引っ張られながら、純一は後ろを見続けている。

 

○気球ゴンドラ内/昼

ゴンドラに乗り込む純一たち。

康平がゴンドラを繋いでいるストッパーを外す。

佳枝「飛べるの?」

康平「浮くはず。浮力が足りなければ、このバーナーを使う」

ゆっくりと気球が浮き始める。

佳枝「方向の操作は?」

康平「わからん。とにかく、ここを離れるしかない」

気球の近くまで来ていたゾンビを間一髪でかわし、気球が空に舞う。

 

○気球/昼

街の上空を飛んでいる。

 

○ゴンドラ内/昼

純一がブツブツと独り言をしている。

佳枝「どうなっちゃたの、あの人たち」

康平「風土病かも」

佳枝「あの街だけ?今、下の街に降りれば大丈夫なのかな?」

康平「どうだろう。ただ、どこまで持つかが」

佳枝「何が?」

康平「バーナーの燃料が、少ししか残ってない」

純一「バカが、あんなタイミングでメール送ってきやがって、チッ(舌打ち)」

佳枝と康平は無反応。

純一「そもそも旅行とか嫌だって言ったじゃん」

佳枝「(純一に)今さら、仕方ないでしょ」

純一「来たくもない旅行に来たっていうのに」

佳枝「いいから、どうやって生きのびるか考えないと」

純一「(康平に)あんたのせいだよ」

康平「父さんが悪いのか?」

純一「そうだよ、こっちは、ちっとも悪くないよ。だいたい学校に呼び出された程度で、大騒ぎして」

康平「だから家族の時間を持とうと思って」

純一「それがこれかよ」

佳枝「やめて!(純一に)さっきからさ、人のせいにしてばっかりじゃない、ねぇ。最後は、生んでくれって頼んだんじゃないって言うんでしょ、どうせ」

純一「(佳枝に)関係ないだろ、あんたには」

佳枝「あんたのお母さんは死にたくて死んだと思ってるわけ?」

純一が佳枝を睨む。

佳枝「あんたを救おうと思ったわけでしょ、自分のために命を投げ捨ててくれる人って、他にいるの?」

純一が佳枝に殴りかかろうとする。

康平が純一と佳枝の間に割って入り、純一を殴る。

純一がよろけて、尻餅をつく。

純一「痛ぇ」

康平は無言のまま、座り込む。

三人とも無言。

 

○気球ゴンドラ内/夕方

康平がバーナー機材を見ている。

康平「提案がある。まず自分が降りよう」

佳枝「どうして?」

康平「気球が安全な場所にたどり着けば、その地区の人に保護されるはずだ。ただし燃料は残り僅かしかない。少しでも遠くに行くには軽い方がいい」

佳枝「でも、一人で気球から降りるって」

康平「大丈夫、なんとかなる」

佳枝が純一に「ヤメさせなさい」という目配せをする。

純一は目線を逸らす。

康平「今、徐々に落下している。地面に近づいたら自分が降りるから、その後、ここを押して火をつけて、上まで上昇したら、火を止める、これを繰り返せば、燃料はしばらく持つだろう」

純一が康平を見る、康平がうなづき。外を見る。

康平「ほら、あそこに小さな集落がある」

山のふもとに数点の灯り。

康平「あそこを訪ねてみるから、心配しなくてもいい」

気球の高度が下がり、地面まで数メートル。

気球の下は草原。

康平「(純一に)良い父さんになれなくて悪かった・・・頑張れよ」

純一はチラチラと康平を見るが、何も応えない。

康平「(佳枝に)こいつを、よろしくお願いします」

康平がゴンドラから地面に降りる。

 

○草原/夕方

康平が地面に着地。

康平は祈るように顔を伏せている。

気球の方からバーナーのスイッチの音と共に佳枝の声。

佳枝(ゴンドラから)「あぁ」

ドサッという音と共に純一の声。

純一「痛ぇ」

純一が足を抱えて痛がっている。

康平「純一!」

佳枝(ゴンドラから大声で)「どうしたの?」

純一「(大声で)二人で逃げる」

佳枝(ゴンドラから大声で)「えぇ?」

純一「父さんと一緒に二人で逃げる!ありがとう!」

康平を抱きしめる。

康平「バカな・・・」

気球が高く上がっていく。

佳枝が手を振っている。

純一も手を振って応える。