ニュースを読んで適当にシナリオを書き散らかすブログ

ニュースにザッと目を通して、20分くらいでガッと書き飛ばします。

ラッキースター

○海上/昼

縄梯子が海に降ろされている。

海面から伸びた手が縄梯子を捕まえようとする瞬間、波に持っていかれ、捕まえることができない。

間一髪で、上から伸びてきた別の手が、流されそうになった手を捕まえる。

 

○岩礁/昼

新山義男(43歳)を先頭に「尖閣が中国にレイプされる」、「魚釣のシナ人を虐殺せよ」、「シナ人はアジアの病原菌」などのボードを掲げた一団が中国人を揶揄罵倒している。

張明哲(48歳)を先頭に日本人への誹謗中傷を書いたボードを掲げた一団が日本人を揶揄罵倒している。

彼らが衝突しないよう日本の海上保安庁のスタッフが間に分けるように警備をしている。

 

相互の抗議は激しさを増し、海上保安庁の制止も効かなくなったその時、空から大きな音がする。

 

青空に軌跡を残しながら、まぶしい光が走り、轟音が鳴り響く。

次第に大きくなる光。

爆発、そして爆音。

 

新山や張たちは、唖然として空を見ている。

 

その瞬間、とてつもない衝撃波が、人々を吹っ飛ばす。

 

○海上/夕方

新山が目を開く。

新山は救助用ブイに上半身を乗せていた。

男の声がする。

男「気づいたか」

男は海上保安庁の制服を着たままブイに捕まっている猿渡直樹(42歳)。

猿渡の顔色は白く血の気が引いている。

新山「なんだ」

猿渡「知らん」

新山「どこだ」

猿渡「わからん、海に浮かんでた、助けた」

新山「救助は?」

猿渡「あとは二人で生き延びろ、もう限界だ」

新山「なんだよ」

ブイをつかんでいた猿渡の手が離れる。

海面に浮かんだ新山の胴体には棒が刺さっている。

新山「おい!」

猿渡がゆっくりとブイから離れていく。

新山は我にかえり、辺りを見回す。

ブイは、もう一つのブイと短い縄で繋がっていた。

そのブイには気を失った張が乗せられていた。

苦い表情を浮かべる新山。

新山が、もう一度、辺りを見回す。

水平線の向こうに船を見た(のような気がした)新山が大きく手を振り、水しぶきを上げる。

張が目を覚ます。

張は辺りを見渡すが、状況が把握できない。

張は新山に中国語で話しかける。

新山は張の方を見る。

しばらく言葉のないまま向かい合い、お互い「わからない」という簡単なジェスチャーをする。

 

会話もなく海に漂う二人。

 

○海上/夜

漂う二人を月明かりが照らす。

張が鼻歌で中国の歌のメロディを歌い始める。

新山が張の方を見る。

張は新山を無視をして歌い続ける。

新山は空を仰ぎ見る。

 

張の鼻歌は歌詞のついた歌へと変わっていく。

 

○海上/朝

海上に漂う二人。

張がブイから体を外に出し、ブイに捕まる体勢でバタ足を始める。

新山が周囲を見回し、ブイに捕まりバタ足の体勢になる。

張の肩をトントンと叩き、進行方向を変える合図をする。

張が中国語「なぜだ?」と聞きながら、同じようなジェスチャーをする。

新山は太陽を指さす。

新山「日本、ジャパン、近い、こっち、太陽、サン・フロム・イースト」

納得がいかない張と説得しようとする新山。

 

***時間経過***

 

二人は同じ方角へバタ足をしている。

張がバタ足をしながら、昨夜と同じ鼻歌を歌い始める。

新山は張を「暢気な奴だ」とあきれ顔で見ている。

 

***時間経過***

 

新山は張と一緒に鼻歌を歌っている。

張は歌詞をつけて歌い始め、新山を見る。

新山は軽く微笑む。

 

○海上/昼

 

二人の前に小型のコンテナ船が停まっている。船に書かれた名前から中国籍の船とわかる。

船から縄ばしごが降ろされている。

新山が縄ばしごをつかみ登る。

張が縄ばしごに手を伸ばす。

張が、縄ばしごをつかもうとした瞬間、波に体を流されそうになる。

新山が張の手をつかみ、引っ張り上げる。

顔を見合わせて、頷く二人。

 

○船上甲板/昼

乗組員たちが新山を見ている。

緊張した表情の新山。

張が乗組員たちと新山の間を割って入り、新山の肩を抱き、中国語で「一緒に生き延びた仲間」だと説明をする。

ゆっくり近づいた乗組員たちが新山に手を差し出す。

新山も手を差しだし握手をする。

新山が鼻歌を歌い始める。

張が歌を歌い始める。

乗組員たちも一緒に歌い始める。